第11話 空飛ぶ少女
俺の新しい持ち主様である、ひょろひょろおじさん。
彼は俺を連れて、大きな建物の中に入っていった。
その建物は…たぶん学校だ。
しかも小学校。
小さな男の子や女の子が、たくさんいるのだ。
教室のような部屋に入っていっては勉強でもしているのだろう。
校庭では休み時間に遊ぶ子供達の姿が見える。
そして俺は…学校の箒として働いていた。
箒ですよ!奥さん!
ちょっと何で箒にしちゃうかな~。
木の棒の先に、あのチクチクとした枝のようなものを巻かれて…おじさんの掃除道具として使われているんですよ!
俺は主に学校前通路の落ち葉などを掃くのに使われている。
…2m級のオークにだって負けない俺がこんな扱いを受けるなんて!!!
おじさんとすれ違う子供達はみんな元気な声でおじさんに挨拶をしている。
このおじさんは教師では無い。
掃除しかしてないのだ。
しかも朝ちょっと掃除したらすぐに帰っていく。
俺は倉庫のような物置に置かれて、それで一日が終わり。
時々、子供達が俺を持ってチャンバラごっこをしては、教師に怒られている。
ゴブルンと共に狩りに明け暮れた日々が懐かしい…。
掃除道具としての日常を過ごし退屈な日々を送っていた俺であったが…イベントはまたすぐにやってきた。
その日の朝も、俺はおじさんと一緒に学校前の通路を掃除していた。
平和な日常…かと思いきや、どこからか悲鳴が聞こえる。
視線を向けると…怪しげな男が逃げていく。
なんだ?…泥棒か?
男は女性物っぽいバックを持って逃げていたからな。
悲鳴をあげている女性がバックを盗まれたのか?
教師達は登校する子供達をすぐに保護していく。
まぁ泥棒は学校とは反対の方角に逃げていったから、子供達は大丈夫だろうけど…。
その時だ。
一人の少女が、ひょろひょろおじさんに声をかけてきた。
この学校の生徒じゃない。
小学生とは言えない少女…中学か、幼く見えるなら高校生かもしれない。
黒いワンピースを着た少女はおじさんに声をかけると、手に持っていた箒を取る。
つまり俺を取ると…俺に…跨った?
え?なんで跨るの?
っと思った次の瞬間…い…いてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!
ゴブルンが俺を使って初めて鹿を叩いた時以上の激痛が俺を襲う!!
な、なんだ?!
なんでこんな激痛が…と思った次の瞬間…俺の目の前に見えた光景は…俺に跨って空を飛んでいる少女の姿だった。
少女は俺を使って飛んでいるのか?
箒に跨って空飛ぶ少女なんて…元の世界の某有名アニメ映画を思い出しちゃうぞ!!
貴方の名前って二文字だったりします?
同じ発音が続いたりします?
そ…それにしても痛い!
なんだこの痛みは?
別に叩かれているわけじゃないのに…。
こ…これはまさか魔力か?!
この少女から俺に…箒に魔力が流れているのか?
俺は自分のステータスを見た。
ステータス
木の棒
状態:ひょろひょろおじさんの木の棒
レベル:1
SP:1
スキル:無し
持ち主は変わって無い。
おじさんは俺を貸しただけってことか?
とりあえずスキルだ…魔力のスキルを取らないと。
闘気、魔力、属性、掃除、盆栽
…ん?
なんか増えてないか?
掃除と盆栽って何だ?
と…とりあえず今は考えるの無しだ…魔力のスキルを取る!
ステータス
ちょっと魔力通な木の棒
状態:ひょろひょろおじさんのちょっと魔力通な木の棒
レベル:1
SP:0
スキル
魔力:レベル1
スキルを取った瞬間、激痛は消え去った。
そして俺を使っていた少女から流れてくる魔力を感じることが出来る。
闘気の時もそうだったけど、スキルを取れば自然とそれが何なのか分かるんだよな。
少女が魔力を俺に流して空を飛んでいることが分かる。
俺は少女の魔力に応えるように、空を飛んでいく。
少女が俺を見て何やら驚きの表情を見せている。
魔力スキルを取ったから、急に魔力の流れが良くなったとかか?
程なくして少女は泥棒に追いつく。
泥棒は空を飛んで追いかけてきた少女を見て驚き、バックを少女に投げつけて逃げていく。
バックを受け止めて止まる少女。
その先では警官…というより騎士のような格好をした男に捕まっている泥棒がいた。
少女はバックを騎士に渡すと、何やら事情を説明している。
騎士の方も少女に対して好意的な態度だ。
さきほど悲鳴を上げていた女性が追いついてきた。
バックを受け取ると、少女にお礼を言っているようだ。
少女は騎士と女性に何かを言うと、再び俺に跨って空を飛ぶ。
…どこかに黒い猫が隠れていたりしません?
少女が向かった先は、小学校だった。
そこで待っていたおじさんの前に降りると、おじさんに頭を下げてお礼を言っている。
俺を貸してくれたことにお礼を言っているのだろうか?
おじさんも嬉しそうな顔で少女の話を聞いている。
お礼を言い終えた少女は…何やら俺をじっと見ている。
そしておじさんに何やら話し始める。
身振り手振り…おじさんはちょっと困ったような顔をしていたけど最後は笑顔で…俺を…少女に渡した?
少女は満面の笑顔でおじさんにお礼を言うと…袋からコインを1枚だしておじさんに渡す。
おじさんは最初拒否していたようだけど、最後はコインを1枚もらった。
こうして、少女はコイン1枚で俺を手に入れたのであった…。
「持ち主が変更されました。ステータスがリセットされます」
ステータス
木の棒
状態:空飛ぶ少女の木の棒
レベル:1
SP:1
スキル:無し
俺は激痛を恐れてすぐに魔力スキルを取ろうとした。
が、さきほどの出来事を思い出す。
そう…俺が取得出来るスキルが増えていたのだ。
しかも掃除と盆栽という意味不明なスキルだ。
俺は取得出来るスキルと念じてみる。
闘気、魔力、属性、水魔法、氷魔法、薬調合、料理
……いやいやいや。
ちょっと待ってくれ。
また変わっているぞ?
しかもだ…水魔法と氷魔法って…なんか魔法が取得可能になってるんだけど?
薬調合と料理?
いったいどうなってるんだ…????
俺が考える暇もなく、少女は俺に跨って飛ぼうとした。
俺はその瞬間…何の迷いもなく魔力スキルを取った。
ステータス
ちょっと魔力通な木の棒
状態:空飛ぶ少女のちょっと魔力通な木の棒
レベル:1
SP:0
スキル
魔力:レベル1
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