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伝説の木の棒 前編 作者:木の棒

第1章 ゴブリン

第2話 持ち主はゴブリン

 はい、どうも、ゴブリンに拾われた木の棒です。
 異世界に転生?して初のイベントは「ゴブリンに拾われる」でした。
 王女様は?!素敵なボインボインな王女様はどこ?!
 そんな儚い希望を見事に打ち砕いてくれた、現在の私の主のゴブリンは、綺麗な緑色の肌をした、人間をちょっと不細工にした顔立ちのお方です。

 ちなみに、ゴブリンが喋ってる言葉は理解出来ない。
 「ゴブ!ゴブッ!ゴゴブッ!!」
 みたいな感じ。
 あれ~?こういうのって異世界共通言語的な素敵チート能力があって分かるんじゃないのか…。
 あ~でもそれって人間に対してで、ゴブリンの言葉まで分かるのはおかしいか。
 なんて異世界転生のラノベ知識から考察している俺です。

 ゴブリン語をよく聞いていると、
 「ゴブッ!」は肯定の意味を持っている。
 「ゴブブッ!」は否定の意味を持っている。
 「ゴゴブッ!」は、どちらかというと肯定的な使われ方をしている…というどうでもよいことが分かってきた。


 さて、俺の主となったゴブリンですが…勝手に「ゴブルン」と名付けました。
 ゴブルンは俺を拾って何しているのかというと…森の中を歩くための杖に使ったり、茂みをよけるために使ったり、木の実を枝から落とすのに使ったりと、大変有効活用して下さっています。
 ………ゴブリンにこんな扱いを受けるなんて!!!!!
 まぁでも、木の棒だしな…俺。

 しばらく森の中を散策していたゴブルンは、木の実をいくつか確保したら何処かへ向かって行っているようだ。
 たぶん自分の巣?に戻るのだろうと思っていたら案の定、ゴブリンの集落に到着した。
 ゴブリンいっぱいだよ!
 右を見ても左を見ても、緑色の肌の人達いっぱいだよ!
 ゴブルンは木の棒で木の実を取ってきたことを自慢しているのか、寄ってきたゴブリン達が手を叩いて喜んでいる。

 そしてゴブルンの家らしきテントに入ってみると…なんと奥様と子供がお出迎え!
 ゴブルン既婚者かよ!
 しかも子持ちかよ!
 ゴブルンの取ってきた木の実を見て喜ぶ家族達。
 とても暖かい光景だけど…木の棒の俺はその輪に入ることは出来ず、テントに入って早々に、隅っこに放り投げられましたとさ…俺涙目。


 次の日の朝、俺はゴブルンに乱暴に持ち上げられると、今日のお勤めの木の実取りへと出かけていくのでした…と思ったら。
 何やら今日は他のゴブリン達2匹と一緒に出掛けるようだ。
 他のゴブリン達は、ちょっと尖った石や、先の尖った木の枝を持っている。
 …一応これって武装しているのか?
 嫌な予感がする。

 他のゴブリン達は、あきらかに自然の中にあった石や枝を武器にしている。
 ゴブルンだけが、俺…人為的に加工されているであろう木の棒を持っている。
 なぜか、俺はちょっとした優越感を感じてしまった。
 俺はお前達(石や枝)と違って磨いてもらったんだぜ?!みたいな。
 でも川に捨てられたんだけどね!

 いや待てよ…本当に俺は捨てられたのか?
 運搬中にたまたま荷車から落ちてしまったという可能性だってあるはずだ。
 やんちゃな村の少年達のチャンバラごっこに使われて、手がすべって川に落ちてしまったという可能性だってあるはずだ!
 そうだ…俺は捨てられたわけじゃない!

 そんなどうでもよいことを考えていると、ゴブルン達の足が止まる。
 雰囲気もピリッとした緊張感が漂っている。
 ゴブルン達の視線の先には…1匹の…鹿…か?
 いや、あれは鹿なのか?
 鹿のような生き物だけど…その…頭に信じられないような巨大な角が生えてるんだけど。
 え?!あれを襲う気なのか?!
 ゴブルン待て!相手の方が強そうだぞ!

 「ゴブッ…ゴゴゴブ…ゴブゴブゴブブ」
 「ゴブッ…ゴッゴッゴッゴッブ」
 「ゴブブブ~」

 何やら作戦を話しているのか?
 そうか…ちゃんとあの鹿のような獲物を仕留める作戦があるんだな!
 ゴブルン達だって命は惜しいはず。
 1匹に対してこっちは3匹。
 数の優位性だって考えている。
 それに罠を仕掛けるかもしれない。
 あれだけの獲物だ、今日1日掛りで仕留めるのだろう。
 あの獲物を仕留めて集落に凱旋!
 みんな大きな獲物を見て喜んで俺達を祝福してくれる!
 奥さんは喜び、子供は偉大なる父に尊敬の眼差し!
 そんな素敵な未来を描いてゴブルン達は…。

 「ゴブッ!!!!」

 何の策も無しに、鹿の目の前に飛び出すのであった…。


ステータス
木の棒
状態:ゴブリンの木の棒
レベル:1
SP:1
スキル:無し
+注意+
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