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伝説の木の棒 前編 作者:木の棒

第1章 ゴブリン

第1話 出会い

 状況を整理しよう。

 俺の名前は木野樹聖きのいっせい
 30歳独身の中堅企業の経理マン。
 ネトゲ好き、ラノベ好きのごくごく普通の人間だった。
 人間…だった…。

 が、しかし…いまは木の棒。
 木の棒なんだよ!!
 コンビニで弁当買って、公園の水飲み場の蛇口に近づいた途端…水に飲み込まれたと思ったら木の棒ですよ!!!
 好きで読んでいたラノベで異世界転生とか異世界召喚とか良く読んでいたから、水に飲み込まれて気付いた先が異世界でチート能力あってとかなら分かるよ。
 何で木の棒なの?

 しかも、あきらかに人為的に加工された木の棒だ。
 つまり、俺を加工した誰かがいた訳だ。
 森の中で木を倒して、木の棒を作る。
 それはいい。
 その木の棒に、俺の魂が転生した。
 それもいい。

 でもどうして俺は…川に流されている?
 わざわざ作った木の棒を川に捨てたのか?


 俺は川に流されていた。
 意識が戻った時に水の中にいると思ったのは、川に流されていたからだ。
そしていま、川の流れに身を任せ、流れに流れて、川の浅瀬に引っ掛かり止まっている。
 ……え?ここから何か物語始まるの?
 木の棒になった俺に何か物語があるのか?!
 ずっとこのまま、誰もこないまま、そのうち朽ちていくのか?!

 こんな状態では、せっかくラノベ読んで得た異世界で生き延びていく知識も役に立たない。
 ま~さっきここが異世界だって判明したのよ。
 いやね…見えたのよ…その…上空を飛んでいた超巨大な生き物が。
 日本や地球には絶対に存在しない、例えて言うなら超巨大なジンベイザメに翼と尻尾が生えたような生き物が空を飛んでいるのよ。
 それに森の中から聞こえてくる呻き声。
 魔獣でもいるのか…恐ろしい呻き声がいくつも聞こえてくるし。

 はぁ…まぁ俺は木の棒だから、何があったってどうしようもないのよね。
 自分では動くことすら出来ないのだよ。
 本当にこのまま何もないまま終わるのかな。


 この世界も太陽と月があって1日を数えることは出来た。
 1週間は正確に数えられたと思う。
 2週間目はちょっとあやふやだった。
 3週間目はもう適当だった。
 それ以降は数えることをやめていた。

 ちなみに、飢えるという感覚は起こらなかった。
 木の棒だもんね…食欲なんて無いのだろう。

 そして寝ることも不要だ。
 眠たくならないのだ。

 そして本当に何も起こらないまま、俺が木の棒になって1ヶ月は経過したと思う。
 俺は悟りを開いて身も心も木の棒に…なっていなかった。

 退屈だよ!
 何か起ろうよ!
 何でもいいからさ!!
 何かイベントプリーズ!!!

 そんな俺を神は見捨てなかった。
 そう…ついにイベントが起きたのですよ!。
 イベント!それは異世界転生でのテンプレ!
 きっと、最初に出会う少女が実は王女様で、ツンデレでちょっとにこっと笑顔を向けたらすぐに照れて、優しく撫でてあげたらポッと俺に惚れる・・・。
 イベントって素晴らしいですよね!


 足音が聞こえる。
 キタ!キタ!
 誰かが近づいてキタ!
 視線を向ければ…太陽を背にした誰かが俺に近づいてきている。
 誰かは綺麗な緑色の手を伸ばして、そっと俺を優しく掴んでくれた。

 ……ん?緑色?

 俺を掴んで持ち上げた…眩しい太陽の逆光から見えていなかった姿。
 今はっきりと見えたその姿。
 それは…ゴブリンだった。



ステータス
木の棒
状態:ゴブリンの木の棒
レベル:1
SP:1
スキル:無し
+注意+
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