第0話 始まり
その日も、普段と同じ日常…のはずだった。
普段通りに朝起きて、電車に乗って会社に行って、適当に仕事して、定時に会社を出て電車に揺られて帰る。
家に着いたら好きなネトゲとラノベ読んで寝る。
そんな普段と同じ日常を過ごして終わりのはずだった。
コンビニで弁当を買って、マンションまでの近道の小さな公園を通っていた時だ。
公園にあるごく普通の水飲み場の蛇口に、ふと目が止まる。
何故視線がそこに向かった…理由は分からない。
蛇口を見ると水が出ていた。
誰か水を出しっ放しにしたのか。
俺は蛇口を閉めようと近づいた…手を伸ばした瞬間、蛇口から大量の水が俺を飲み込んだ。
理解する時間なんて無かった。
俺を飲み込んだ水はそのまま蛇口の中へ…俺ごと引きずり込んだ。
俺は一瞬で意識を失った。
意識が戻る。
身体が冷たい…水の中にいるようだ。
俺を飲み込んだ水の中なのか?
目を開けて…状況を確認しないと…目を…開けて…あれ?
何かおかしくないか?
手と…足の感覚が無い?
いや…そもそも頭はどこだ?
自分を認識出来ないってどういうことだ?
思考することは出来ている、脳は大丈夫ってことだろう。
手足の感覚はやっぱり無い。
頭を動かそうとしても…何て言えばいいのか…何かが動いている気はする、これは頭なのか?
いったい俺はどうなってしまったのだ?
意識が戻ってどのくらい経ったか分からないが、俺は自分を認識するという作業をしていた。
よく自分のことを知っているようで知らない…なんて言葉を聞くことあるけど、本当に自分のことを知らなかった。
ようやく目が開いて、目に映った…自分の身体と思える物体が視界に入った。
目の位置は自由に変えられた。
頭があるようで無いように思えたのも、俺という存在が変わっていたからだ。
俺は自分の身体のどこにでも、頭を持っていくことが出来て目を宿すことが出来る。
どこからでも視界を確保すること出来る。
そして、身体のあらゆる場所から、角度から、自分の身体を見た。
何度も見たよ。
何度も…何度も…何度も…。
そして理解した。
俺は…木の棒になっていた。
ステータス
木の棒
状態:川に流れる木の棒
レベル:1
SP:1
スキル:無し
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。