半村良:盟友・小松左京宛ての手紙 日本SF展で初公開

毎日新聞 2014年07月18日 19時55分(最終更新 07月18日 20時26分)

作家の半村良=1991年撮影
作家の半村良=1991年撮影

 「もう小説を書くのをよそうと思いました」−−。「戦国自衛隊」などで知られる作家半村良(1933〜2002年)が、盟友の小松左京(1931〜2011年)作「日本沈没」(73年刊)を読んだ際の衝撃をつづった小松宛ての手紙が見つかった。19日開幕する「日本SF展・SFの国」(東京・世田谷文学館)で初公開される。

 小松の遺族が神戸市の自宅で見つけた。「昭和48年3月25日」の消印で、刊行直後に書かれたことが分かる。

 便箋4枚の冒頭、上下巻を「一夜で読了しました」とショックを受けた感想を吐露した上で、「日本沈没」を無視して「厚顔」に過ごすのは嫌だと率直に胸中を記した。さらに「嫌さから逃げるためには、何とかそれを打ち消せる作品をモノにしなければなりません。もし、そういう作品が得られたらそれは沈没のおかげ」とつづり、小松作品を凌駕(りょうが)する創作への意欲を示した。

小松左京=1995年、三村政司撮影
小松左京=1995年、三村政司撮影

 2人は、1963年に日本SF作家クラブを創設したメンバーの一員として日本SFの創成期を担った。

 世田谷文学館の中垣理子学芸員は「SF第1世代がいかに日本文学に根付かせたかを明らかにしようと展示した。同志として感動し、奮起した半村の気持ちや当時の機運を伝える」と話している。同展は9月28日まで。【内藤麻里子】

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