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歴史に学ぶ!続く仕事、なくなる仕事。

マーケティング

001パクリのデザインでヒットを狙えてしまった江戸時代の着物ビジネス

 
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堀江先生はじめまして、歴史エッセイスト・作家の堀江宏樹です。
普段は、いわゆる「女子世代」の女性を中心とする読者の方に、歴史や文化についてエッセイを書いている私ですが、今回から「歴史に学ぶ!続く仕事、なくなる仕事。」と題して、古今東西の歴史の中からさまざまなビジネスの在り方を、探る連載をはじめさせていただきます。
じつは作家業も、マーケットリサーチとは無縁ではありません。私も日々、どんなニーズがあるかを考え、仕事をしているのです。その時、私の場合、具体的なチカラになってくれるのは歴史の知識なのですね。
「歴史から学ぶ」。そう聞くと、まだるっこしく思えるかもしれません。しかし、マーケットリサーチとは、「現代」を深く知るために行われているものですよね。「現代」をより深く知るには、「過去」との違いを見極めるしかないのです。それに必要なのは「過去」......つまり、歴史の知識なのです。この連載を、何かのヒントにしていただければ、それ以上に嬉しいことはありません。
ファッション業界ではヒット商品が生まれると、そのデザインを他ブランドに真似されてしまうという現象がおきがちです。
あるデザイナーズブランドのショーが行われると、ウリ二つに摸倣された商品が、カジュアルな価格帯のブランドによって発売されてしまう。いわゆる夜店で売っているようなコピー品ではなく、摸倣されている「だけ」なので、デザイナーズブランドとしては、文句もまともに言えない。価格競争では敗れるから、本家がついには日本撤退せざるをえなくなる......なんて現象も起きています。
実はこういう事態は、江戸時代の日本でもすでにあったのですね。その一例が、現代でも特にゴージャスな着物として有名な「友禅染」だったというと、みなさんは驚くかもしれません。

友禅染が流行した背景

江戸時代も進むにつれ、武士や公家といった身分の高いひとたちだけでなく、大店(ハイクラスな商人)のお嬢様やおかみさんなど、プチセレブな女性も派手な着こなしを楽しめるようになりました。本当の庶民の女性は生涯に数度、真新しい着物に袖を通すことができれば上等といわれていた中で、プチセレブな町人の女性たちは、季節毎に着物を作らせていたわけです。

そんなプチセレブな町人女性から人気だったのが、江戸時代中期に開発された「友禅染」です。「友禅染」では独自の彩色技術を用いて、花鳥風月といったモチーフを華麗に表現していました。しかも、それ以前の着物(正式には「装束」)にくらべると、格段にリーズナブルなのが魅力でした。

十二単をお召しの辛酸先生『十二単をお召しの辛酸先生』/堀江宏樹・辛酸なめ子『天皇愛』(実業之日本社)より

宮中での貴族女性の正装は通称「十二単」といいます。複雑な紋などがモチーフとして用いられていますが、これは機織りの技術だけで付けたものです。つまり、とてつもない労力の末に完成された贅沢品なんですね。しかも「十二単」は、相当の身分をもたない限り、たとえばプチセレブがいくらお金を積んでも身に纏うことは出来ない類の衣服だったのです。ゴージャスな服をわたしも着てみたいけれど、着られない......というプチセレブのニーズをうけて、開発されていったのが友禅染の新技術だったのです。

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© 堀江宏樹

 
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著者情報

ホリエヒロキ

堀江宏樹

歴史エッセイスト・作家。1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。
大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。『仰天! 歴史のウラ雑学 後宮の世界』(竹書房)で作家デビュー。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。著書多数。
近著に『藩擬人化漫画 葵学園』(漫画・森ゆきえ、集英社)、『学校では習わない 愛と夜の日本史スキャンダル』(実業之日本社)、原案・監修に百人一首漫画『うたもゑ』(漫画・こうづきれお、芳文社)、共著に滝乃みわことの『乙女の日本史』(東京書籍)、辛酸なめ子との『天皇愛』(実業之日本社)などがある。

角川文庫版「乙女の日本史」が7月25日に発売。
新刊『女子のためのお江戸案内 恋とおしゃれと生き方と』 が、廣済堂出版から8月12日発売(予定)。
マイナビ・ウーマンでの歴史コラム『歴史にまなぶ 女子の事情』も好評連載中(毎週更新)。

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