広島の本塁打数が話題になっている。7月22日のヤクルト戦では二冠王エルドレッドの2打席連発を含む5本塁打が飛び出し、今季通算101本。12球団で100本塁打一番乗りとした。86試合消化の7月26日終了時点では105本。全球団中でもそれに続くのは巨人とヤクルトの81本だから、断トツと形容してよいだろう。さすがに球団記録の1978年の205本(44本で本塁打王の山本浩二を始め4人が30本以上)の更新は難しそうだが、現在のところシーズン176本のペースだ。昨年が110本なので、その伸長ぶりは目を見張るものがある。

しかし、一方で不思議な現象もある。得点を挙げるのにもっとも手っとり早い本塁打数が「断トツ」なのに、得点数は385でリーグ4位と「それほどでもない」のだ。特に当面のライバルの阪神との比較において、この現象は顕著だ。阪神は広島とは逆に本塁打数は65でリーグ5位ながら、得点は387と若干ながら広島を上回っている。

ならば、広島打線は確実性に欠けるのかというとそうでもない。攻撃力を評価する際に最も一般的なチーム打率.268でリーグ2位タイ。阪神は4位で.266だ。したがって、一発はあるが穴だらけという訳ではない。

ある意味では打率よりも大事な出塁率では、広島は.332でリーグ4位と同2位の阪神の.337にやや水を空けられているが、出塁率+長打率で導き出すOPSは.760でリーグ1位タイと.721で同4位の阪神を大きくリードしているのだ。

OPSで表現される打力に盗塁や盗塁死、犠打や犠飛などの試合巧者ぶりも加えた総合的な攻撃力を示すRuns Created(RC)では409.54でリーグ2位と、390.12で同3位の阪神に明確に差をつけている。基本的に、本来挙げているべき得点を示すRCは、現実の得点に等しくなるべきだ。実際阪神はそれがほぼ同一(得点385、RC390.12)だが、広島はそれに少なからぬ乖離(得点387、RC409.54)がある。

以上のことから言えるのは、広島の得点がその長打力に比し伸びていないのは作戦や試合運びの拙さではなく、単に「運の悪さ」である可能性が高いということだ。統計学的には長いスパンで見ると異常値は矯正される方向に作用する。広島がペナントレースの残り2ケ月において従来通りの打撃を続ければ、1試合当たりの得点はここまでよりかなり増加すると考えるべきだろう。7月26日の阪神戦の8回での2ランスクイズが示す通り、お家芸の「スモールボール」は健在なのだし。

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豊浦 彰太郎
1963年福岡県生まれ。会社員兼MLBライター。物心ついたときからの野球ファンで、初めて生で観戦したのは小 学校1年生の時。巨人対西鉄のオープン戦で憧れの王貞治さんのホームランを観てゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。有料メルマガ『Smoke’m Inside(内角球でケムに巻いてやれ!)』も配信中。Facebook:shotaro.toyora@facebook.com

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