起業家必見!知らないとヤバイ「労働保険」「社会保険」入門

社労士Hの「人を雇うと発生するお金」の話

電卓

ベンチャー事業を行うにあたっては、創業当初から社員を雇う場合もあれば、起業してから事業がある程度軌道に乗り、いよいよスタッフを雇おう、という場合もあるだろう。

人を雇うにあたって発生するお金としては、まずは「給与」が思い浮かぶが、会社が負担すべきお金は給与だけではない。会社が負担すべき給与以外の「お金」、特に労働保険(労災保険、雇用保険)と社会保険(厚生年金保険と健康保険)がある。

今回は、人を雇うと必要になる「労働保険」と「社会保険」のについてまとめた。創業直後の社長(高校生の頃の夢はロッカー)と社会保険労務士(社労士H)による対話を通じて、「労働保険」と「社会保険」について基本的なことを学んでいこう。

1. 労働保険、社会保険に入らなきゃいけないの?

社長)夫婦2人で商売を始めたんだけど、起業してからトントン拍子で上手くいっちゃってさー。今度社員を雇おうと思うんだ。給与以外にどんなお金がかかるのか教えてよ?

社労士H)人を雇うと、原則として会社は、労働保険(労災保険、雇用保険)に加入する義務が発生します。また御社の場合は法人ですので、厚生年金保険や健康保険にも入らなければなりません。これらそれぞれについて保険料の会社負担分が発生します。

社長)うちなんて創業したての小さなベンチャーだし、入りたくないんだけど。。。俺、そういうの入って枠にとらわれたくないから。高校生の頃はロッカー目指してたくらい枠にとらわれないロケンローな男だから。うちはロケンロー経営だから!

社労士H)ゴホン!

社長)入らなきゃだめなの?

社労士H)ロケンロー経営だろうが、ナニ経営だろうが、労災保険や雇用保険は、人を雇う以上原則として加入しなければなりません。また、起業直後で小さくても「法人」である以上、たとえ社長と奥様だけの会社でも本当は厚生年金と健康保険に加入しないといけないんです。日本年金機構も未加入事業所の削減に力を入れていて、最近は年金事務所からの調査に関する相談も増えてきています。

社長、もしかして厚生年金と健康保険の手続きをまだしておらず、今も国民年金と国民健康保険に入っている、なんてことないですよね!?

社長)手続きしてないのが、露見ロー!なんつって。ロケンローだけに。。。すみません。ちゃんと手続きやります。

社労士H)ゴホン!・・・ブラック企業と呼ばれないためにも、法律に沿ってちゃんと加入しましょう!

2. どんな雇用形態だと労働保険・社会保険に入れないといけないのか

社長)会社が加入しなければいけないのはわかったよ・・・保険関係ってちゃんとなきゃ!ってのはマウンテンマウンテン、じゃねぇや 山々なんだけど、実はサラリーマンしてたころから、労働保険とか社会保険のあたりは詳しくはよくわからないんだよね。言葉は聞いたことあるんだけど。会社に勤めてても、雇用保険、健康保険や厚生年金に入っていない人もいるよね?

社労士H)そうなんです。会社が各制度に入っているということと、個別の社員が入るか入らないかは別問題なのです。労災保険については全ての社員が原則適用ですが、パート社員や契約社員等、非正規の形態で働いている方は、他の各制度に入らなくてもよいケースがあるのです。入らなくてもよい雇用形態とは以下のような場合です。

例外的に被保険者と”ならない”社員
  • 労災保険
  • ・原則として同居の親族を除く全ての社員が適用(個別の加入手続きは無い)

  • 雇用保険
  • ・65歳に達した日以後新たに雇用される社員
    ・1週間の所定労働時間が20時間未満である社員
    ・継続して雇用される期間が31日未満である社員

  • 厚生年金保険
  • ・70歳以上の社員
    ・2箇月以内の期間を定めて雇用される社員
    ・通常の社員の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3未満の社員

  • 健康保険
  • ・後期高齢者医療の被保険者(75歳以上の社員等)
    ・2箇月以内の期間を定めて雇用される社員
    ・通常の社員の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3未満の社員

社長)ということは、上記の表に該当しない正社員などの場合は基本的に加入させないとダメなのね?

社労士H)そういうことになります。逆に言えば、各制度に加入しなくてよいパートタイマーをうまく活用して、法定福利費を抑えるのも一つの方法ですね。特に起業直後の創業期のスタートアップベンチャーの場合は、コストを抑えるために意識して活用していきたいところですね。