JPX日経400採用候補に大塚H、ソニー除外も-入れ替え迫る
7月29日(ブルームバーグ):ことしから算出を開始したJPX日経インデックス400 の初の銘柄入れ替えが迫り、専門家らの予想では新規採用組で大塚ホールディングス 、セイコーエプソン が有力視されている。一方、最終赤字にあえぐソニー は除外組に名を連ねる。
120兆円を超す世界最大の運用資産規模を持つ日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がJPX日経400をベンチマークの1つに採用、関連する指数連動型上場投資信託(ETF)も立ち上がり、今回の入れ替えは採用、除外銘柄の需給に影響が及ぶことは確実だ。加えて、同指数は企業の株主資本利益率(ROE)を重視しており、経営者が株主の資金を有効活用しているかどうかの証しにもなる。
パインブリッジ・インベストメンツの前野達志運用本部長は、銘柄入れ替えは「機関投資家にとってはどの会社に投資家するかという通常の運用の判断に影響を与える」と指摘。特に今回は、「企業経営者には採用されることが1つのステータスシンボルになるため、経営者が敏感にならざるを得ない」と見ている。
日本取引所グループ と日本経済新聞社が算出するJPX日経400は、毎年6月最終日のデータを基に、8月最終営業日に定期入れ替えを行う。ことしは8月7日(第5営業日)に追加・除外リストを公表、実際の入れ替えは29日だ。
30銘柄程度か、エプソンや大和証Gも候補みずほ、SMBC日興、野村、大和、ゴールドマン・サックス、シティグループ、UBSの国内外証券7社の入れ替え予想をブルームバーグ・ニュースが集計したところ、新規採用では大塚HLDやエプソンのほか、アイフル 、大和証券グループ本社 、OKI 、カルビー、松井証券、三井造船、岡三証券グループ、東海東京フィナンシャル・ホールディングス、レオパレス21、名村造船所、テンプホールディングス、マツダ、アコム、ミネベアは全ての証券会社が候補に挙げている。
一方、除外ではワタミ 、スカイマーク 、ミライト・ホールディングス 、アダストリアホールディングス、日本コークス工業、日立造船、リンテック、コーナン商事、レンゴー、長瀬産業を証券7社全てがリストアップ。ソニーやTOKAIホールディングス、トモニホールディングス、サイゼリヤについては過半数が除外の可能性があるとした。
みずほ証券では今回31銘柄、SMBC日興証券では30銘柄の入れ替えを予想。みずほ証では、4本のETFを含む計23本のJPX日経400連動型・公募投資信託、GPIFの運用分を合計し、約3000億円がJPX日経400に連動していると試算する。
永吉勇人チーフクオンツアナリストは、連動資金の規模が少なく、話題先行だとしながらも、「指数が若く、足元で残高が増えつつあり、入れ替え実施までの間に需要が増える可能性がある」との見方だ。
社外取締役などで加点も少数派だが、カシオ計算機 、パナソニック を採用候補として注目する向きもある。みずほ証では、「独立した社外取締役の選任(2人以上)」など定性項目の加点評価から候補に加えた。除外候補では、東京エレクトロン 。将来の上場廃止が見込まれる銘柄について6月に東証が算出要領を改定したため、SMBC日興証などは削除を見込む。
今回の銘柄入れ替えが単なる株価指数のイベントにとどまらず、株主を意識した企業かどうかを見分ける重要機会になる、との声も市場関係者の間から出ている。BNPパリバインベストメント・パートナーズの清川鉉徳運用本部長は、「ROEや株価に関心がなく、マーケットと対峙していない日本企業が大半を占める中、入らなかった企業や除外された企業の経営者がその後どう考えて行動するかが注目点」と言う。
損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントの中尾剛也シニアインベストメントマネジャーは、「JPX日経400はROE改善を動機付ける上で、採用される銘柄だけでなく、採用されない企業の経営にもインセンティブを与える」との見方だ。
アマダが生んだ副次的効果金属加工機械メーカーのアマダ の場合、採用されなかったことが経営スタンスを変え、株価が上昇した。「アマダはJPX日経400の指数自体には貢献しないが、TOPIXや日本株全体を見たとき、副次的効果が大きい」と、中尾氏は話している。
アマダは5月15日、発行済み株式総数の3.5%を上限にした自社株買いや同2.5%の自社株消却、2014年3月期の年間配当を1株20円(前の期12円)、15年3月期は26円とする計画を発表。16年3月期までの資本政策として、純利益の50%程度を配当、残る50%程度を自社株買いに充てる総還元性向100%の方針を示した。
同社の磯部任・取締役専務執行役員は6月のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、JPX日経400の算出開始時に自社が漏れたことについて、「社長はちょっとショックだったような感じがある」点を明らかにしている。
JPX日経400は東証1部、2部、マザーズ、ジャスダックの各市場から市場流動性などによるスクリーニングでまず1000銘柄に絞り、3年平均のROEと3年累積営業利益に各40%、選定基準日時点の時価総額に20%のウエートを加味し、定量的な総合スコアを算出する。さらに「独立した社外取締役の選任(2人以上)」や「IFRSの採用・採用予定」、「決算情報の英文開示」といった定性的な要素も踏まえ、スコアの高い順に400銘柄を選定する。
定期入れ替えでは既存の採用銘柄に優先ルールが設けられており、指数採用銘柄のうち、最終スコアの順位が440位以内の銘柄をまず採用、不足する場合には最終スコアの上位から選定する仕組みだ。
29日のJPX日経400は、前日比0.2%高の11733.59で午前を終了。TOPIXの0.1%より上昇率がやや大きかった。採用候補の値動きは、大塚HLDが1%高、東海東FHが1.3%高、岡三証券Gが1.1%高など。除外候補のソニーは0.1%安、ワタミが0.7%安、スカイマークが6.6%安、ミライトHは0.8%安だった。
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更新日時: 2014/07/29 12:28 JST