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 ●知事選に絡み県・地元に思惑のずれも

 来年1月の稼働を目指して中間貯蔵施設計画の決着を急ぐ政府。「特別な迷惑施設」(佐藤雄平知事)と指摘し、政府から最大限の譲歩を引き出したい地元。両者の久しぶりの対面も決着には遠く及ばなかった。10月の知事選も絡み、県と双葉、大熊2町の思惑に、かすかなずれも見え隠れする。

 石原伸晃環境相と佐藤知事。中間貯蔵施設の建設をめぐる「キーマン」の2人が公に向き合うのは、「最後は金目でしょ」発言で、石原環境相が福島を訪れて謝罪した6月23日以来だ。

 会合の冒頭、石原環境相は「現時点でとりまとめられる最大限のものを提示させていただいた」と切り出した。しかし、佐藤知事は「土地の買い上げ以外の選択肢など、地元の意向も踏まえ検討していただいたものもあるが、生活再建策と地域振興策については具体的な内容が示されていない」と切り捨てた。「ボールはまだ国にある」とさらなる検討を促した。

 佐藤知事は、いまだ知事選に立候補するかどうかを明らかにしていない。ただ、県幹部の一人は「知事選に出るにしろ出ないにしろ、知事は政府との交渉で弱腰とはいわれたくないと思っている」と指摘する。

 佐藤知事は1カ月前、謝罪に訪れた石原環境相を県庁で5分以上待たせたうえ、何を言われても相づちも会釈も一切しなかった。

 今回の政府提案では、これまで中間貯蔵施設の候補地への支援に限っていた、自由度の高い交付金の使い道を一部広げることを政府が容認することを含む。

 政府が富岡町に整備を目指す、中間貯蔵施設に入れるものよりも放射線量の低い汚染物を運び入れる管理型処分場に関係する地域振興策についても政府は、「状況に応じて併せて対応する」と初めて認め、2町だけでなく「県やその他市町村分を一体的に措置する」との文言を入れた。

 これらは、政府との水面下の交渉で「中間貯蔵だけでなく、(管理型処分場も)一緒になって考える」(内堀雅雄副知事)と県側が強く求めていたものだ。

 一方で、県の政府に対する強硬な姿勢に、2町の関係者からは「正直、県がどういうことを政府に求めているか分からないところもある」との声も漏れる。

 中間貯蔵が知事選と関係しているとみるのは、県内の政党関係者も同じだ。佐藤知事の出馬いかんに関わらず、独自候補の擁立を模索する自民党県連関係者は「交付金を多くしては現職に手柄を与えることになる」と党本部の幹部に伝えたと打ち明ける。「中間貯蔵の問題を知事選に絡ませたくない」。4月末、交渉に関わる政府の幹部が口にした懸念は現実となりつつある。

【県が求めた4つの要望に対する政府の回答】

●30年以内に県外で最終処分することの法制化

→汚染土の搬入は法律の施行後に始める。県や町と協定を結び、施設監視に住民が参加できるようにする

●施設用地の借り上げなど

→これまで示していた買い取りのほか、所有権を残したまま政府が借りることも選択できるようにする

●生活再建策

→具体的な金額の提示なし

●地域振興策

→具体的な金額の提示なし