福島との隔たり大きい 政府、交付金示さず
福島第1原発事故で発生した除染廃棄物などを保管する中間貯蔵施設をめぐり、石原伸晃環境相と根本匠復興相は28日、東京都内で佐藤雄平福島県知事、候補地の大熊、双葉両町長と会談し、建設用地について、希望者には地上権を設定することで賃貸借を認める方針を伝えた。地元の要望を受け、買収による全面国有化を断念した。
福島県側が受け入れ判断の条件としていた自由度の高い交付金の金額提示は、地元との隔たりが大きいことから先送りした。5〜6月の住民説明会で提示を求められた具体的な用地補償額、施設周辺住民らへの詳しい支援策も示さなかった。
福島県側は賃貸借を認めたことを評価する一方、他の回答が先送りされたことに「課題への対応ができていない」(佐藤知事)「大きな溝がある」(渡辺利綱大熊町長、伊沢史朗双葉町長)と反発。受け入れの是非の判断には入らない考えを示した。調整は難航が必至で、来年1月の搬入開始は厳しい状況になった。
石原環境相は、賃貸借を認めた理由を「先祖伝来の土地を手放したくないとの思い、最終処分場になるとの懸念を考慮した」と説明。自由度の高い交付金の規模に関しては「引き続き具体化を進めたい」と述べ、施設受け入れの是非の判断までに金額を提示するとした。
国は新たな方針として、中間貯蔵施設の整備・稼働について県・町と協定を結ぶことや、土地売却後も避難生活中は住民票を残せることなどを伝えた。用地の具体的な補償額では「補償額は一律の取り扱いが困難」「受け入れ判断後、個別の用地交渉に入る前に地権者向けの説明会を開き、イメージを示す」と踏み込まなかった。
佐藤知事は会談の席上「地上権の設定以外は具体的な内容が示されていない。中間貯蔵施設は特別な迷惑施設で、影響は県全体に及ぶ。誠意ある対応を強く望む」と注文を付けた。
[中間貯蔵施設]福島第1原発事故に伴う除染で出た福島県内の汚染土壌や廃棄物を最長30年間保管する。約3000万トンの貯蔵が可能。候補地は双葉、大熊両町の第1原発に隣接する16平方キロ。放射性セシウム濃度に応じ1キログラム当たり10万ベクレル超の焼却灰や廃棄物は専用容器に入れて建屋で保管、10万ベクレル以下は防水処理などをして地下に埋める。
[地上権]民法で定められた借地権の一つ。他人の土地を借りて建物などの工作物や木々を所有するため、その土地を使用する権利。民法上、土地の貸借権は20年が上限だが、地上権には上限がない。地下や空間にも設定が可能。地主の承諾がなくても登記や譲渡、転貸ができるため、借り主には貸借権よりも一段強い権利がある。
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2014年07月29日火曜日