ティーンに人気の日本語入力アプリ、iPhoneにも-百度
7月29日(ブルームバーグ):中国最大の検索エンジンを運営する百度 (バイドゥ)の日本法人で働く矢野りん氏。第2子の出産を前に、スマートフォン向け日本語入力アプリ「Simeji(シメジ)」のiPhone(アイフォーン)への投入に向け開発の追い込みに入っている。
矢野氏は、ティーンエイジャーに人気のSimejiの生みの親。これまで米グーグルのアンドロイド搭載端末向けに提供していたが、米アップル が今秋にリリースするモバイル端末用の基本ソフト(OS)「iOS8」で、外部者が開発した入力アプリが初めて利用可能になるのを機に、アイフォーン向けにも開発を進めている。
百度の日本法人でモバイルプロダクト事業部マネジャーを務める矢野氏がブルームバーグ・ニュースのインタビューで話した。同アプリはこれまでに約1000万件がダウンロードされており、アイフォーン利用者の浸透でユーザーの倍増を目指すという。
Simejiは、ツイッターなどのソーシャル・ネットワーク・サービスを利用するユーザーや高校生や大学生を主なターゲットに置いて開発。言葉を入力すると、テレビドラマで使用されたフレーズなどの流行語、絵文字、記号などへ変換でき、コミュニケーションの幅を広げられる特徴がある。
美術大学でコンピューターグラフィックスを学んだ矢野氏は、フリーランスのデザイナーだった2010年に、ビジネスパートナーが進めていたアンドロイド携帯向けのSimejiの開発に加わった。ダウンロード数が100万の大台に乗った11年、百度から同アプリの買収と同社へのスカウトの提案を受けた。国際弁護士や会計士の友人に相談しながら、約半年の交渉を経てアプリの売却と百度への入社を決めた。
Simejiは子供同然六本木ヒルズの上層階。百度との最終交渉は同社のオフィスで、夜10時から明け方の4時まで行われた。オフィスから見えていたはずの都心の夜景を眺める余裕はなかった、と矢野氏は話す。百度の張成焕氏(現百度駐日首席代表)は電卓をたたきながら交渉に臨んだという。売却額は公表していない。
「Simejiは、あなたの子供同然だが、これからはバイドゥが育てていきたい、と説得された」と矢野氏は振り返る。
アップルはiOS8の詳しいリリース日程を明らかにしていない。同社ホームページのiOS8のプレビューによると、デベロッパーは、インストールするとシステム全体で使える新しいキーボードを開発できるとしている。
9月中旬の出産予定を前に、矢野氏は新アプリの最終調整に入った。2児の母になると現在の仕事のペースを維持できるか懸念もあるとした上で、同氏は「今後も挑戦し続けていきたい」と話した。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 佐藤茂 ssato10@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Philip Lagerkranser lagerkranser@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net中川寛之, 谷合謙三
更新日時: 2014/07/29 09:39 JST