滅茶苦茶オススメなので布教エントリ書きます。
SF映画で学ぶインタフェースデザイン アイデアと想像力を鍛え上げるための141のレッスン
- 作者: Nathan Shedroff,Christopher Noessel,安藤幸央
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2014/07/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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どんな本か
インタフェースはこの100年程の間に色々進化してて、その歴史を知る本みたいなのは、いっぱいあります。
そこから演繹的に未来のインタフェースを考えたりするのは凄く楽しいものです。
この本は、それぞれのインタフェースが「SF映画で」どの様に表現されて「現実に」実現したか、みたいな差分も一緒にインプット出来ます。 そうすると、上記のように現実の歴史から演繹するより、ズルが出来ます。つまり「未来を描いたSFのインタフェースを実現する方が、歴史から未来を想像するより簡単」です。
また、SF映画のインタフェースをそのまま実現すると問題になりそうな点や、実現する時にこうした方が良いのではないか、といった議論も注意深く書かれており、単なる紹介とtips集ではなく、読み物としても素晴らしいです。
以下、読んだ後の僕のtweetを埋め込んでおきます。
読みました。かなり(滅茶苦茶)有益。VRやインタフェース系研究室に置いてあったら「この研究室は信用できる」と判断できます。
SF映画で学ぶインタフェースデザイン アイデアと想像力を鍛え上げるための141のレッスン http://t.co/fnAlKC2e5n
— izm (@izm) 2014, 7月 27
網羅的なのかどうかは僕には判断できませんが、各分野の操作方法の歴史(それが、実用化される前のSFにおいて、どの様に描かれてきたかを含めて)があって、普通はSF映画を山程見ないと得られない知識が一冊でドバっと吸収できます。SFの段階と実現した段階との差異が面白い。
— izm (@izm) 2014, 7月 27
別に専門家じゃなくても、シドニアの騎士とか見て「モニターグラフィックス萌へ〜〜〜〜〜〜!!!!」
みたいな人も読むと楽しいと思います。
— izm (@izm) 2014, 7月 27
ジェスチャーインタフェースや音声認識なんて、もうSFでの原点を引けば何年前だ!!!みたいな手垢が着いたインタフェースであって、それがようやく家庭レベルに入ってきてる。このタイミングで読まなきゃ損みたいな感じです。
日本語版を出してもらえたことに感謝です。
— izm (@izm) 2014, 7月 27
それぞれの人へ
原著を買った人へ
翻訳は品質が高いと思います。日本語の方が布教には便利ですので、是非コレクションに加えてください。
Kinect,LeapMotion,音声認識等に興味を持っている人へ
以下に軽く紹介していますが、全方位的に各種インタフェースを網羅しており、小手先の技術ではなく、「一般の人がどういう期待をしているか」「参考になる映画は何が有るか」「どういう点に注意を払うべきか」みたいな索引として非常に有益です。
インタフェース系の研究をしている人へ
SF映画を例に取ったサーベイ集として、類似の包括的な書籍は無いと思います。
デモを作る際に、どうすると一般の人にウケるか等も記載があり、おそらく確実に「元が取れます」。
インタフェースの論文を書くときの参考文献に、SF映画を引けたらカッコイイみたいな人にもオススメです(?)
その他の人へ
インタフェースに着目して映画を見るきっかけになるかもしれません。
また、それぞれの項における議論は、非常に注意深く進められています。
したがってこういった未来的なインタフェースについて、見たことの有る映画を元に話されているので、取っ付き易い本だと思います。
以下、もう少し詳しい本の紹介
セクション1
これは、個別のインタフェースごとの分類を行い、それぞれの定義と、代表的な映画での扱われ方、現実への参照と各種tipsや議論が行われています。
- 機械式コントローラ
- ビジュアルインタフェース
- 立体投影
- ジェスチャー(1951.地球の静止する日から遡ってます。素晴らしい!)
- 音のインタフェース
- 脳インタフェース
- 拡張現実
- 擬人化
セクション2
これは、特定のタスクごとの(SF映画での)実例です。セクション1での扱いがボトムアップであるなら、ここからはトップダウン的なアプローチです。
- 通信
- 学び
- 医療
- 性的行為
まとめ
- SFの先へ
以下良い記述(後で僕が見返す用)
未来の技術について議論するためには、未来の技術を演繹的に定義しようとするより映画を参照するほうがより簡単です。 「Kinectは単なるゲーム向けインタフェースではなく、そう、ある種の『マイノリティ・リポート』のインタフェースなのです。」 というように。(P8)
機械式コントローラ
物理ボタンのつまみは、回すものだと自明に分かって素晴らしい。タッチパネル上に描画されたつまみは、意図せず触れて値が変わるかもしれない。
立体投影
立体投影システムを作って、対話コミュニケーションを行う時、縮小表示する時は目線位置を合わせて縮小すべき、目線の一致が行われないと問題が起きますね。
「半透明のペッパーズ・ゴースト方式は長い間見ていると(現実とディスプレイを常に区別するため)目が疲れる」と言うのは、例えば光学シースルーHMDのMoverioのコンテンツを作る上では留意すべきでしょう。
ジェスチャ
「物理的な操作はジェスチャーで、抽象的な操作は音声で」
飛行機の操縦をジェスチャで行う。可能そうに見える。ではイメルマン・ターンはどうやってジェスチャで表現する?
拡張現実
焦点距離の差をなくすことに言及していて素晴らしい。
擬人化
人間の代わりに動物を用いることで、対等な存在ではなく、ペットや案内役としてみなすといった、ユーザーの期待値を低くする効果もあります。 →メイドロボはドジでも良い!!!!
不気味の谷→システムが人間ではないことを明確に示す
ルクソー Jr.のランプは「人間的」とは何かの良い教材になる
アイアンマンのダミーはゴツイけど可愛い。みたいなのはファイアボールのゲデヒトニスもですね。
余談
この本が信頼できる根拠として「立体投影をホログラムとは呼ばない」と明言している事も付記しておきます:)