群馬・朝鮮人犠牲者追悼碑:排外団体と職員もめ事

毎日新聞 2014年07月29日 07時10分

 群馬県高崎市の県立公園「群馬の森」にある韓国・朝鮮人の強制連行犠牲者追悼碑の継続設置を県が不許可とした問題で、排外的な主張を繰り広げるグループが2012年、碑の前で公園管理職員の胸を小突くなど小競り合いを起こしていたことが分かった。

 ◇県、設置不許可の理由に

 県幹部は取材に対し「こうしたことが今後も起きる恐れがある」と述べ同グループとのトラブルが不許可の理由につながったことを認めた。碑を管理する市民団体「追悼碑を守る会」は28日、不許可処分の取り消しを求めて10月にも前橋地裁に提訴する方針を決めた。

 県によると、12年5月、碑前で守る会が開いた集会の様子がネット上で紹介された直後から、「碑文が反日的だ」と撤去を求めるクレームが県に寄せられ始めた。

 さらに同年11月、排外的な主張を繰り広げる団体が撤去を主張する街宣活動後、公園内にプラカードなどを持ち込んだため、公園管理職員が伏せるよう指示。だが、団体側は碑前で横断幕を広げて写真撮影しようとし、制止する職員と小競り合いになり、県警高崎署員が駆け付けた。

 県の古橋勉・県土整備部長は取材に対し、「撤去を求める団体が来て騒いだ事実があり、今後も起きる恐れがある。論争の場になることは都市公園としてまずい。不許可は公園管理者としての責務だ」と話した。

 守る会は28日、「撤去を求める団体はヘイトスピーチを繰り返し、県に大量メールやファクスを送りつけて撤去を求めてきた。不許可決定は彼らに対する屈服、同調であり、断じて認められない」とする声明を出した。

 県議会は先月、2団体と個人から提出された撤去を求める請願を自民党などの賛成多数で採択。県は今月、碑前での過去の追悼集会で参加者が「政治的発言」をしたと指摘し、「政治的行事を行わないこと」との設置許可条件に抵触したとして不許可とした。【塩田彩、角田直哉】

 ◇朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑の設置不許可◇

 市民団体「追悼碑を守る会」の前身団体が2004年4月、群馬県の設置許可を得て県立公園「群馬の森」(高崎市)に建立。県が合意し「かつてわが国が朝鮮人に対し、多大の損害と苦痛を与えた歴史の事実を深く記憶にとどめ、心から反省し、二度と過ちを繰り返さない決意を表明する」と刻まれている。今年1月に許可期限を迎え、県は7月、不許可とした。

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