尾車親方の巡業改革!「開かれた相撲界」アピール

2014年7月27日12時33分  スポーツ報知

 大相撲の人気が回復している。27日に千秋楽を迎えた名古屋場所は10日間が満員御礼で、99年以来15年ぶりとなった。本場所と並んで地方巡業も好調だ。今年は4月にインターネットの動画サイト「ニコニコ動画」が主催した巡業など新たな形態にも挑戦している。巡業部の尾車部長(元大関・琴風)に巡業の現状を聞いた。

 名古屋場所13日目の25日、10月の秋巡業の日程が発表された。10日の横浜市から26日の山口・防府市まで13か所で昨年より2か所増えた。尾車部長は「昨年より各段に各地から引き合いが増えています。今回ももっと回りたかったんですが、調整が付きませんでした」とうれしい悲鳴を上げた。

 巡業は4月の春、8月の夏、10月の秋、12月の冬と4回行われる。平成に入ってから最多は若貴ブームに沸いた92年の93か所。これが、05年には15か所まで激減。八百長問題に揺れた11年は、協会がすべての巡業を中止する危機的な状況に追い込まれた。昨年は26か所にまで回復、今年は春が11、夏が8、秋が13とも昨年を上回る日数で、合計40か所近くまで増える予定だという。

 遠藤の人気、3横綱など土俵上の活性化が最大の要因だろう。一方で巡業部も改革に着手。12年に部長に就任した尾車部長は各担当の親方に「勧進元さんの要望は最大限、聞いてもらいたい」と通達したという。以前は、要望があっても、なかなか受け入れる体質がなかった相撲協会。それが、勧進元と呼ぶ各地の主催者の意見を聞き入れることで反応が各段に良くなってきた。

 その象徴が、4月に幕張メッセで2日間に渡り開催した超会議場所だ。インターネットの動画サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴが主催。チケットはすぐに完売し、人気お笑いコンビ「ナインティナイン」の岡村隆史ら著名人が遠藤と対戦するなどの企画もあり、動画の生中継で8万件以上がアクセスした。当初、芸能人と関取が土俵で相撲を取るなど、これまでにない企画を受け、協会内でも抵抗はあったという。尾車部長は主催者と綿密に打ち合わせ、巡業部として「土俵の上を汚すことだけは遠慮していただきたい」とだけ希望したという。

 関取に胸を借りる芸能人にも、土俵下でのパフォーマンスは認めるが、土俵の上では真剣に取って欲しいと伝えた。その結果、岡村がマイクで遠藤を挑発するパフォーマンスは土俵下だけにとどめた。朝稽古も初日は行ったが、会場の仕組みから雑音が多く力士が集中できないことを考慮し、2日目は中止した。こうした新たな取り組みは、対外的も評価され、10代、20代の若者を中心としたネットユーザーに「開かれた相撲界」をアピールできた。

 巡業部は、勧進元の意見に耳を傾けてきた。一方で、内容の充実が急務で、特に一般ファンが普段は見られない関取衆の朝稽古については、改革が必要だった。これまでは稽古する関取が少なく、申し合いの番数を数えて各師匠に通達し、土俵に上がるよう促す改革はあった。しかし、現状では相変わらず停滞した稽古が続いている。そこで尾車部長は8月の夏巡業から、関取の朝稽古に申告制の導入を決めた。これは、申し合いをしたい力士が事前に申告し、それ以外の力士は土俵回りに来なくていいというものだ。「稽古しない力士は弱くなるだけ。そんな力士に無理やり稽古させても実にならない。強くなりたい者が自発的に稽古するのが一番。さらに、稽古しない力士が今までのように土俵回りで立っていても、お客さんは土俵が見えなくて迷惑。やりたい力士が稽古をやれる環境を整えるという、当たり前のことをやるだけです」と尾車部長。横綱、大関の看板力士は例外だが、申告制の導入によって力士は自覚を問われることになり、一層の朝稽古の充実も期待できる。

 尾車部長は就任時、東日本大震災の復興支援を公約に掲げた。「昔から東北地方には夏に巡業に行って、お世話になってきました。その地域の方々のために少しでも恩返しをさせていただければ―という気持ちです」。毎年、夏巡業には東北地方各地を慰問。今年は福島・いわき市を訪れる。今後は被災地慰問だけでなく「津波や原発事故の影響で、ふるさとに住めなくなった方々を訪問することも考えています」。巡業は、地方の方々に相撲の魅力を伝える重要な行事。時代に応じた改革と支えてくれるファンのために、今後も全国を歩き続ける。

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