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ライフ
【主張】土用のウナギ 資源と食の文化の永続を
つまるところは、捕りすぎなのだ。資源が激減してしまったウナギのことである。
今シーズンは、養殖用のシラスウナギ(稚魚)の漁獲高が少し回復したために、かば焼きなどの価格が落ち着いた、と歓迎されている。
だが、激減傾向の中での小回復なので、本来はシラスウナギの多獲を控えるべきだったはずだ。
国際自然保護連合(IUCN)によってニホンウナギは6月に絶滅危惧種に指定されたばかりであるにもかかわらず、今夏の消費に抑制傾向はみられない。
ウナギの生活史は特殊だ。成熟した親ウナギは秋に川を下って海に出て南のマリアナ海嶺で翌年の5月ごろ産卵する。生まれた子供は黒潮に乗って、年明けの1、2月ごろ、シラスウナギとなって日本沿岸の河口に現れる。このシラスたちが親になって海に向かうのは5~10年後のことだ。
資源回復を目指すなら、まずは秋の下りウナギの捕獲をやめなければならない。この措置を厳しく講じているのは、鹿児島などの九州3県と高知県に限られ、愛知と静岡県が緩やかな対策をとっているだけだ。
次には河川シラスウナギの漁獲制限と漁獲量の把握が不可欠だ。高値が付くことや夜漁のため、暴力団などによる密漁も行われ、正確な参入資源量が分かっていないのが実態だ。
もっと言えば、日本列島におけるウナギの自然分布さえ判然としていない。東北地方や北陸地方の川や池にウナギがいても、自然の個体か、養殖に由来する個体なのか、簡単には分からない。
ニホンウナギの再生には、基礎調査からの着手が急務である。環境省が大学への委託研究で利根川など7河川での総合調査に乗り出したことを評価したい。
農林水産省も新たに成立した内水面漁業振興法に基づいて養鰻(ようまん)業の実態把握に動き出す。中国からのヨーロッパウナギの輸入で国際社会から後ろ指をさされるようなことをなくすためにも必要だ。
ウナギの減少は約40年前から目立ち始めた。気候変動に伴う海流の変化などの影響もあるだろうが、即応性のある対策は過食の抑制だ。人工の種苗生産が期待されるが、実用化には時を要する。
土用の丑の日には絶滅危惧の重みまでを舌に乗せて考えよう。
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