The Economist

中国とアジア:中国の巨大リバランスの勝者と敗者

2014.07.29(火)  The Economist

(英エコノミスト誌 2014年7月26日号)

中国における投資の鈍化と消費の底堅さが、アジアの経済秩序を変えつつある。

かつては一面が森に覆われていたインドネシアのスマトラ島では今、島の中央部に近い場所に深い溝が刻まれ、地面の直下に眠る富が露わになっている。大型の黄色い掘削機械が石炭を掘り出し、60トンの大型トラックに積み込むと、トラックはうなりを上げ、パダン市パウ郡にあるこの露天掘り炭鉱の地上部分へと運び上げていく。

 燃料に対する中国の強い需要に推され、5年間にわたり絶え間なしにトラックが行き来したため、石炭を運ぶ舗装されていない道には車輪の跡が深く刻み込まれている。

 しかし、最近は正午になるとトラックが動かなくなる。中国の石炭需要が頭打ちになり、石炭価格が下落したからだ。この炭鉱を運営するマインメックスは、従業員の昼休みを延長したが、その分は無給となる。「我々には選択肢はない。耐えるしかないね」と言って、日焼けした38歳のドゥマクさんはため息をついた。

投資関連と消費関連で大きく分かれた明暗

 「耐える」という言葉は、増加し続ける中国への輸出に依存するようになっていたアジア各国の経済にふさわしい表現に思える。中国経済は、30年間にわたり年平均10%の成長を遂げたが、それに続く直近の2年間はかろうじて7.5%の成長を遂げたにすぎない。これは大半の国にとっては羨望に値する数字だが、中国にとっては明らかに減速だ。

 この停滞は、アジア地域全体に波紋を呼んだ。台湾の工作機械メーカーは2012年以降、中国向けの輸出が20%以上落ち込んでいる。中国に引き渡されるオーストラリアの鉄鉱石の価格は最近、21カ月ぶりの安値に落ち込んだ。香港での宝石の売り上げは2014年に入って40%も落ち込んでいるが、その原因の1つは、中国が汚職に対する取り締まりを強化したことにある。

 しかし、耐えるという言葉が中国関係のビジネスをする人たちすべてに当てはまるわけではない。アナリストがニュージーランドの牛乳を「白い金」と呼ぶのは、同国産の牛乳に対する中国の需要が非常に旺盛だからだ。スリランカを訪れる中国人の数は、2014年上半期に前年同期比で2倍以上に達した。

 30代の中国人女性は今や、韓国の小売り大手ロッテのウェブサイトを訪れる外国人の中では最大のグループとなっており、先を争うように化粧品を購入している。

 このように大きく分かれた明暗は、中国の成長に訪れた、緩やかではあるが根本的な変化に由来している。消費がようやく投資に取って変わり、経済の主な推進力になろうとしているのだ。

 家計の消費が国内総生産(GDP)に占める割合が最近…
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