北朝鮮がミサイルやロケット砲の発射実験を繰り返している。先週末も日本海に向けて短距離ミサイルを1発撃った。

 北朝鮮は、これまでも核やミサイルの無謀な実験を重ね、国連安全保障理事会から制裁を強められてきた。

 短距離であってもミサイル発射は国際社会への挑戦であり、自国の孤立を深みに追い込む。その愚かさを悟るべきだ。

 発射の政治的なねらいは、まず韓国の朴槿恵(パククネ)政権を意識したものとみられる。

 事件事故や不祥事など国内事情で苦境に立つ朴大統領を圧迫し、いずれ始まる南北協議を有利なかたちで始めたい、とみるのが妥当だろう。

 朴政権は対北関係の改善を掲げてはいるが、実際には強硬姿勢を崩していない。そのため、北朝鮮は反発を強めており、対話は軌道に乗っていない。

 北朝鮮は韓国を射程に収めるミサイルを撃ち続ける半面、9月に韓国・仁川で始まるスポーツ行事、アジア大会への選手や応援団の派遣を表明した。

 だが、そのためには「平和的な環境が整えられるべきだ」とも訴える。来月予定される米韓合同軍事演習の中止を暗に求めるなど、硬軟織り交ぜて朴政権を揺さぶっている。

 そうした対外戦術をめぐらすなかで北朝鮮は、日本人拉致問題などをめぐる日朝協議も利用しようとしている恐れがある。

 最近のミサイルの発射にも、日米韓をにらんだ思惑がにじんでいるとみるべきだろう。

 日本政府は発射に抗議しつつも、日朝協議は続ける意向だ。「ただちに日本の領土や国民に重要な影響をおよぼさない」などとの理由だが、そうした影響評価は韓国とは当然ずれる。

 日本の協議継続の姿勢に米韓が理解を示しながらも、不安なまなざしを向けるゆえんだ。

 ただでさえ歴史認識などで関係が悪い日韓が、北朝鮮政策でも足並みを乱せば、それこそ北朝鮮の思うつぼだろう。

 見方をかえれば、北朝鮮と今、正面から向き合えるパイプを持つのは日本だけだ。拉致問題と並行して、直接対話でミサイルなどの挑発行動をやめるよう求め続けるべきである。

 来月にミャンマーである東南アジア諸国連合の会合には、北朝鮮の李洙●(へんが「つち」、つくりは「庸」)(リスヨン)外相が出席する可能性が取りざたされる。北朝鮮の高いレベルと意思を交わす機会になるかもしれない。

 日本は政府間協議の継続をてこに、軍事挑発は北朝鮮のためにならないことをねばり強く説く必要がある。