東京スカパラダイスオーケストラが今年デビュー25周年を迎えることを記念した全国ツアー「25th Anniversary Hall Tour 2014 "SKA ME CRAZY"」の最終公演が、7月26日に福島・いわき芸術文化交流館アリオスで開催された。
定刻を少し過ぎた頃、まだ客電が落ちていないステージにスカパラのメンバーが1人ずつ現れ、各自の定位置にスタンバイする。最後にシルクハットと燕尾服を身に付けたGAMO(Tenor Sax)が颯爽とステージに登場。指揮棒を持ったGAMOがステージセンターの指揮台に立つと、サウンドチェックを兼ねるように彼の指揮で茂木欣一(Dr)から順番に音を出していく。全員が音を出し終えたところで、まずは25年前に発売されたスカパラのインディーズデビュー盤「東京スカパラダイスオーケストラ」に収録された「ホリデイ」からライブがスタート。「ホリデイ」の演奏が終了すると客電が落ち、懐かしのナンバーも含んだメドレーや、「ルパン三世'78」「スキャラバン」などでオーディエンスを一気にヒートアップさせていく。
最初のMCでは谷中敦(Baritone sax)が、「スカパラ25周年です。無我夢中でやってきた25年。ずっとお客さんを幸せにするってこと、幸せを共有するってことをやってきた25年だと思います。そんなパラダイスへようこそ! 人生っていうのは妙なもんで、ボクがバリトンサックスをはじめたのは、いわき出身のある人が『バリトンサックスが似合う』と言ってくれたおかげでした。それが26年前。そんな人を輩出してくれた、いわきに感謝。今日は思いっきり盛り上がってくれよ! 闘うように楽しんでくれよ!」と、ツアーファイナルの地となったいわきへの感謝の思いと、熱い言葉をオーディエンスへ投げかけた。
そしてライブ中盤、会場をラジオのサテライトスタジオに見立てて茂木欣一がトークを繰り広げるコーナーで思わぬサプライズが用意された。今回のツアーで設けられたこのコーナーは、ステージ後方のスクリーンにメンバーの顔がルーレットのように次々と表示され、最後に止まった顔のメンバーと茂木欣一とトークをするというもの。この日、ルーレットが止まったときにスクリーンに写ったのは、スカパラの創始者であり当時バンドマスターでもあったASA-CHANGのアーティスト写真だった。
会場中がどよめく中、ステージ下手からASA-CHANGが登場した。彼がスカパラと同じステージに立つのは実に21年ぶりのこと。その後スカパラのメンバー9人とASA-CHANGがステージ前方で横一列に並びながらトークを繰り広げ、北原雅彦(Trombone)が「北原さんはドレッドが似合いそうだからドレッドにしたほうがいいとASA-CHANGに言われてドレッドにした」、谷中敦が「ASA-CHANGにバリトンサックスが似合いそうだと言われてバリトンを買ってスカパラに入った」「北原さんとオレはASA-CHANGに言われたことを25年間ずっとやってきた」とASA-CHANGから受けた影響を力強く語った。ASA-CHANGについてのトークはさらに盛り上がり、スカパラの創始者であること、もともと小泉今日子のヘアメイク担当だったこと、スカパラのロゴを作ったことなど、さまざまな思い出話に花を咲かせる。
茂木が一緒に演奏をしようとASA-CHANGを誘うと、21年ぶりのスカパラでのステージに緊張感を漂わせるASA-CHANG。そして「東京スカパラダイスオーケストラ、オリジナルのリズム、スカとマンボでスカンボー!」というASA-CHANGの掛け声を合図に、最初期の楽曲「スカンボ」が披露された。スカパラのメンバーは怪しげでいなたいムードを漂わせながら演奏し、ASA-CHANGは小気味良くギロを奏でる。「スカンボ」に続いて披露されたのは1990年のメジャーデビューアルバム「スカパラ登場」に収録されている「ウーハンの女」。この曲の演奏が終わる直前に再度「東京スカパラダイスオーケストラ!」とシャウトしたASA-CHANGを、スカパラのメンバーとオーディエンスが万感の思いを込めた拍手で送り出した。
再びスカパラのメンバー9人によるステージが始まると、彼らは「DOWN BEAT STOMP」「ペドラーズ2014」でオーディエンスを熱く踊らせ、また「水琴窟」では沖祐市(Key)が美しいピアノの音色でオーディエンスを優しく包み込んでいく。谷中が「全員両手を挙げろ! そのまま手を左右に下ろして全員肩を組め!」とシャウトしたあと「All Good Ska is One」が演奏されると、場内のオーディエンス全員が肩を組み、笑顔で左右に揺れていた。
そして本編ラストを飾ったのは、ベートーベン作曲の交響曲第九番「歓喜の歌」。オープニングと同じく燕尾服を着て指揮棒を持ったGAMOが、スカパラのメンバーとオーディエンスを自在に操っていく。そしてGAMOが「今日はこの曲をみんなで大合唱したい! ステージで一緒に歌いたい人はいるか!?」と聞くと、来場者ほぼ全員が手を挙げた。選ばれた約30人ほどのオーディエンスがスカパラメンバーの真後ろに整列すると、GAMOが「この人がいなかったら今のスカパラはなかった! ASA-CHANG!」と、再びステージにASA-CHANGを呼び込む。GAMOとASA-CHANGの2人の指揮により祝祭感たっぷりに「歓喜の歌」が演奏され、ステージ上からも会場中のオーディエンスからも大合唱が沸き起こった。最後は指揮台からASA-CHANGが大ジャンプを披露して「歓喜の歌」を締めくくった。
アンコールのメンバー紹介では、1人ひとりがツアーファイナルを迎えての思いや25年間の感謝の思い、そして21年ぶりにASA-CHANGと共演した思いをオーディエンスに伝えていく。最後に谷中がもう一度ASA-CHANGをステージに呼び込み、この日のラストナンバー「SKA ME CRAZY」を披露。ASA-CHANGはスカパラ在籍時からずっと使ってきたというマラカスを客席に投げ込んだ。終演後、鳴り止まない拍手の中、ステージ袖ではスカパラメンバーとASA-CHANGの10名が最高の笑顔で記念撮影を行っていた。
なお、東京スカパラダイスオーケストラは8月13日に通算19枚目のオリジナルアルバム「SKA ME FOREVER」をリリース。ツアーで披露されて反響が大きかった「歓喜の歌」「ペドラーズ2014」や、亀田誠治をプロデューサーに迎えて挑んだ10-FEET、MONGOL800、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとの“バンドコラボ3部作”などが収録されている。