外交文書公開 日米繊維問題で日本不信の書簡7月24日 12時10分
1970年前後に日米の間で最大の経済摩擦となっていた繊維問題を巡って、当時のアメリカのニクソン大統領が佐藤総理大臣に対し、日本政府の対応への不信感を伝える書簡を送っていたことが、24日に公開された外交文書で明らかになりました。
日米繊維交渉は、1969年から71年にかけて、日本製繊維のアメリカ向け輸出を規制するかどうかを巡って行われ、当時、日米の間で最大の経済摩擦となっていました。
こうしたなか、1971年3月、当時のニクソン大統領が佐藤総理大臣に宛てて、日本政府の対応への不信感を伝える書簡を送っていたことが、24日に公開された外交文書で明らかになりました。
書簡では、日本の業界団体がそれまでの政府間交渉を踏まえない形で日本側に有利な自主規制案を発表し、日本政府がこれを支持したことに触れ、「本当に驚いた」と述べるとともに、「失望と懸念を隠すことができない」と伝えています。
そのうえで、「双方が満足できるような交渉を続けることが望ましいと思うが、それは不可能だと思われる」として、交渉継続を断念する可能性を示唆しています。
さらに、書簡が届けられた4日後、愛知外務大臣がアメリカ側の真意を確認しようとマイヤー駐日大使と会談した際の記録では、マイヤー大使が「端的に言えば、大統領は事態に憤慨しているということだ」と述べたほか、「繊維問題が沖縄返還協定のアメリカ国内の審議に飛び火するのを心配している」と述べ、沖縄返還に向けた動きにも影響が出かねないと懸念を伝えています。
繊維問題は、結局、この年の10月、日本側がアメリカの要求を受け入れる形で輸出の自主規制を決断し、翌年、正式に決着しました。
専門家 「ニクソン大統領の不信感の強さが表れている」
日米外交史が専門の日本大学の信夫隆司教授は「ニクソン大統領は、直接、自分の思いを告げたいという感情が強くなって、こうした書簡を送ったのだと思う。当時の首脳外交は、首脳どうしがお互いに意見をぶつけ合って、『この問題はどうすべきか』ときちんと言っていることが非常におもしろい。この手紙のあと、アメリカは、日本からの輸入に対して10%の課徴金をかけるなど、いわゆる第2の『ニクソンショック』を発表しており、ニクソン大統領の不信感の強さが端的に表れている」と話しています。
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