こんばんは、吉本ユータヌキです。
僕は18歳の頃に実家を出て、去年から8年ぶりに実家に戻って暮らすことになり、気づいた。
やっぱり母親はすごい。
だって、仕事から帰ってきたら食べたいと思っていたご飯が出来上がっているのだから。
ハンバーグの口ならハンバーグが。唐揚げの口なら唐揚げが。カレーの口ならビーフシチューが。少しの微調整ならできる。もう大人だもん。
そして冷蔵庫には僕のごちそうさまを待ちわびた大好物エクレアがキンキンに冷えて眠っている。
やっぱり母親はすごい。
うちの母親は僕が仕事で家を出るよりも早く家を出て、僕の帰りよりも遅く帰ってくることもあり、その時は自分で冷蔵庫にある食材でご飯を作る。
料理には自信があるので材料がなんだろうとある程度作れるが、いつも冷凍食品を選んでしまう。丁度食べたかったものがそこにあるから。
なんでそんなにもドンピシャであるの?冷凍食品があまり好きじゃないから極力自分で料理がしたいのに、丁度食べたかったものがチンカチンカで眠っている。
やっぱり母親はすごい。
僕はハマり症であり、飽き症でもある。食べ物のブームは特に波が大きくてハマりはじめると2週間餃子だけの時もある。お米も食べず、味付けも変えることなく毎晩ただひたすら餃子だけを食べている時もあった。
母親はそれを察知して冷蔵庫に餃子を切らす事無くストックし続けている。
やっぱり母親はすごい。
どうしてこんなにも僕の食べたいものを用意できるのだろうか。
冷蔵庫になんでもかんでもストックされているわけではない。
むしろ、いつも少なくて足りないと思うぐらいにカラカラの冷蔵庫なのに。
数ヶ月前に空前のプロテインブームが訪れた。粉末のプロテインを牛乳に溶かして飲むタイプのもの。当時はジムに通う時間があったので毎日飲んでいたが、ジムに時間を費やす余裕がなくなったせいでプロテインも牛乳も飲む事がなくなった。
小学校時代に給食で出てきた小さな牛乳パックが冷蔵庫の隅っこで朝礼の如く二列横隊して並んでいる。こんな所にプロテインブームの余波が。具合が悪いのかヘコんでいるやつも。いや、具合が悪いどころか賞味期限が切れ始めている。
母親がその牛乳を見て一言。
『あんたが全部飲みや。』
やっぱり母親はすごい。
賞味期限が切れた牛乳を飲むことが日課となったおかげで在庫も着々と減ってきている。数日前に起き始めた原因不明の腸内土砂崩れがこれ以上悪化しなければ全部飲みきれるであろう。明日から粉末のビオフェルミンを溶かして飲もうと企んでいる。クソマズいプロテインの味を乗り越えたんだから、少々薬っぽくても大丈夫さ!
そんな牛乳処理班に任命された僕にもう1つ任務が言い渡された。
冷凍庫にぎっしりと詰まった冷凍餃子の処理だ。少しまで強烈な餃子ブームに襲われていた僕は、夏バテをキッカケに熱も冷めてしまった。冷凍なのでそのまま置いておけばと思うものの『カサ張って邪魔』と言われたが最後、最近の僕は“王将”よりも万里を越えている。
しかし、残念なのは処理班に任命されてから“牛乳”と“餃子”が再びビッグウェーブという名のブームに突入している。そしてウェーブの向こうでは母親が笑っていた。
気づいてしまった。
いつも僕の食べたくなるものが作られているんじゃない。
食べたいものが上手くストックされているんじゃない。
僕が食べたくなるようなトリックが仕掛けられているのだ。
いつも切らす事無く大量にストックされているのは恐らくセール品なのであろう。弁当を作る訳でもないのに異常な程に冷凍食品を買い込む。そして、賞味期限が近づくと任務として連続的に食べさせ、必然的にブームが起きる僕の習性を上手く利用したストックの仕様になっている。いや、この習性自体が昔から植え付けられたものなのかも。
あくまでも憶測でしかないがあながち間違いでもないだろうと思っている。
とにかく僕自身が賞味期限とセール品に絡めて上手く料理されていたのだ。
やっぱり母親はすごい。
先程、ずいぶん前に健康を気にして買い溜めていた野菜ジュースの賞味期限切れが発覚。お約束の一言。
『あんたが全部飲みや。』
また新しい任務が言い渡されました。
やっぱり母親はすごい。
おわり