囚われの姫(?)
夢を、見た。
私は、塔の前に立っていた。
周りに広がる風景は、中世のヨーロッパのようである。
そして私の格好も、何故か鎧のような者を来ていた。
まるで中世に紛れ込んだ様だった。しかも手には、大きく「台本」と書かれた本を持っている。
「なんだこれ?」
邪魔な鎧を脱いで、その表紙をめくる。
そこには、「囚われの姫(?)」と書かれていて、
「主演/勇者・両儀式
姫(?)・黒桐幹也
その他」
と、書かれていた。
「お困りかな?お嬢さん」
1.破壊魔
立っていたのは、髪の長い女だった。
その髪は赤く、何故か顔を仮面で隠している。
「ブルー、とでも呼んでちょうだい」
「誰だ、お前」
「案内役よ」。
「案内役?」
「そう。だって、私と貴女は会ったことがないし、殆ど知らないでしょう?
戦うことは不可能だもの。それに、今回貴女の敵であるヤツと、私は犬猿の仲でね」
女はそう言って笑うと、台本を指さした。
「大まかなキャスティングは、それに書いてある通りよ。貴女は姫(?)を助けるべく、
この塔に登って行くの。簡単な話でしょ?」
まるで、大昔のヒロイックファンタジーの様。
「これは夢だから、何だって有りなのよ。
じゃあ、頑張ってね。
特にラスボスの女はこてんぱんにのしちゃってオッケーだからね!!」
「あ、おい、待て―――」
私が引き留めるより早く、女は消えてしまった。
台本を開いてみると、キャストの所に
「案内役・ミスブルー(蒼崎青子)」
と言うのが追加されていた。
なるほど。
これで最後の敵は解ったな。
ともかく、私は幹也(姫?)を助けるために、この塔を登らなければならないらしい。
「何で私が」
あの馬鹿を助けに行かなければならないのだろう。
大体こういうのは―――――、
「まったく、いつもいつも、」
私は、あの馬鹿に一言行ってやるためにも、塔の扉を開いた。
2.変態結界野郎
「待っていたぞ、両儀式」
最初からこいつかよ。
こいつの方がラスボスみたいだと思う。
「否。今回は私よりも適任が居るのでな」
相変わらずの、もったいぶった言い方。
「お前、死んだんじゃなかったのか?」
そいつは、口の端を上げて、笑った。
「忘れたのか。これは、夢だ」
そう言って、そいつ、荒耶宗蓮は、右手を突きだした。
「ちっ」
私は反射的に目の前の空間を切った。
「流石」
荒耶は楽しげにつぶやく
「何が目的だ」
再び、この体が目当てか。根源とか、起源にこだわって―――
だが、荒耶の発した言葉は、予想しえなかった物だった。
「姫(?)だ」
「……は?」
「だから、姫だと言っている」
いたって真面目な顔で言う荒耶。
そうか、お前、ホモだったのか。
「失礼な。あのような可憐な姿を見れば、誰であろうと心奪われよう」
荒耶はそう言って、頬を赤らめた。
キモチ、悪い――――
――――あいつ、どんな格好してるんだ?
「…そうか」
私は、いつの間にか持っていた刀を抜いた。
夢って言うのは、こういう時に都合がいい。
「何をする気だ」
「お前を一撃で倒すのにはこれしかないからな」
「む」
「安心しろ。今日は怪我もないから、外しはしない―――」
そうして私は、荒耶を視た。
結界ごとヤツの「死」を視て、に実にあっさりと、荒耶宗蓮を葬った。
先を急ごう。
じゃないと、幹也の貞操の危機だ。
3.ブラコン妹
「待っていたわ、式…」
階段を上ったところにいたのは、妙なグローブをつけた鮮花だった。
「うふふふふふふ・・・、貴女を片付けて、幹也と私はハネムーンよ…」
うわあ、イっちゃってるよ。
「そう言うわけで」
シュシュシュシュシュシュシュッ
「フリッカージャブ!?」
私は、当然繰り出されたジャブを危うい所でかわす。
「何時の間に、そんな技を…」
「この間礼園に来た、臨時のシスターから教わったんです」
協会と教会って仲悪くなかったか?
「ふん、お前の技なんか効かない」
避けてればいい話だしな。
「そうかしら?」
鮮花が、構えを変えた。
「これは、私がある物をヒントに生み出した技よ」
「何?」
「くらうが良いわ!
ギャラクティカマグナム――――!!」
パクリかよ。っていうか、そのままじゃないか。
私はあっさりと鮮花をかわし、その首に手刀を食らわして、気絶させた。
さぁ、早いとこ上に行こう。
4.危険人物
「待っていました。両儀、式、さん―――」
「今度はお前か、浅上藤乃」
「はい」
浅上は笑みを浮かべたまま、頷いた。
私は刀を構える。こいつ相手に、手加減は、出来ない。
「待ってください。私には、貴女と争う気はありません」
「何?」
浅上は、悲しそうに笑った。
「今の私は、痛みを感じることが出来ませんから」
―――それはつまり、力を使うことが出来ないと言うこと。
「…そうか」
「ええ、ですから、どうぞ先に進んで下さい」
そう言って、浅上藤乃は階段を示した。
「さあ、どうぞ」
そう言ってにっこりと微笑む。
でも、その笑顔はあからさまに嘘くさい物だった。
「どうしました?」
「いや…」
私は浅上の様子を見ながら、ゆっくりと階段に向かった。
そして階段に足を踏み出す前に、足下に落ちていた石ころを拾って、投げつけてみた。
それは、浅上の前ではじかれる事もなく、足下に当たった。
どうやら、本当らしい。
私は、階段を一歩、登った。
そのとたん――――
がら、ガラガラガラッ
階段が崩れ始めた。
「くっ、やっぱり嘘かっ!!」
「おほほほほほほほほ…………」
くそインケン女め。
私は崩れ落ちる階段を駆け上った。
5.案外まともじゃないヤツ
階段を駆け上って、何とか次の階にたどり着いた。
すぐ後ろの階段は崩れ落ち、下の階からは浅上藤乃の笑い声が響いていた。
「式お嬢様」
「…この階はお前か、秋隆」
「はい」
そいつは、いつも通り、何を考えてるんだか解らない顔で、頷いた。
「―――で?お前まで、何でこんな所に?」
まさか、お前まで幹也を?
「いいえ。私の目的は、黒桐様ではございません」
「なら、何故」
聞くと、秋隆は突然、遠い目をして語り出した。
「先日、あるお方から、こういうお話を伺ったのです。
曰く、
『障害の多い恋ほど盛り上がる』と」
何となく、誰が言ったのか予想がついた。
「それで?」
「はい、それで、お嬢様と黒桐様の恋の応援をしようかと」
こいつ、ほんと何考えてんだ?
大体障害なんかもう十分あったからもういらないのに。
「私も、両儀の家に仕える者です」
秋隆は、どこからとも無く刀を取り出した。
「お相手させて、いただきます」
私は、刀を構えた。
緊張が、走る。
音が消え、時が止まったかの様な感覚。
やがて二人は、同時に跳んだ。
勝負は、一瞬。
私の握った刀の先が、秋隆の首の寸前で止まっている。
「お見事です、お嬢様」
私は、刀を下げた。
秋隆は階段を示す。
「どうぞ、お気をつけて―――」