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電力不足を乗り切るための企業のエネルギー対策 第19回 電力小売り全面自由化。事業者選びのポイント

経営・戦略 三木 優 2014年07月22日

全面自由化は、電力システム改革の「第2弾」

電力販売が全面的に自由化される今回の法改正は、政府が昨年から進めてきた電力システム改革の「第2弾」になります。 この改革は・・・


●地域独占が長く続いてきた電力市場に競争原理を導入し、コスト構造の見直しを促す
●需要者の選択肢を増やし、電力会社やサービスを選べるようにする
●供給者の事業機会を拡大する
●東日本大震災による電力供給への影響を踏まえ、広域で電力を融通し合える体制を構築

・・・などを目的としています。また、民間投資を喚起する安倍政権の成長戦略のひとつとしても位置づけられています。

電力システム改革は3段階で進められており、第1弾は地域間の電力融通を可能にする送電網の整備と、そのための広域的運営推進機関を2015年4月に設立するというものです。この法案は2013年11月に成立しています。そして第2弾が、今回の法改正で決定された、2016年春からの「電力小売り全面自由化」です。

第3弾は「発送電の分離」。これは、大手電力会社の送配電部門を法的に分離して、全国の送電線網をどの事業者でも公平に使えるようにすることで、事業者間の自由な競争をさらに促すことがねらいです。2018年~2020年の実現を目指して、2015年の通常国会に法案が提出される見込みです。

安定供給確保と需要家保護の面でも配慮されている

今回の全面自由化にあたって、私たち需要家が押さえておきたいポイントは、次の2点です。

1. 電力会社と料金プランを自由に選べるようになる

従来の制度では、電力小売りの自由化は、契約電力が50kW以上の工場やビルなど、大口需要家への供給だけにしか認められていませんでした。契約電力50kW未満の小規模事業所や商店、一般家庭向けの供給については、東京電力や関西電力などの一般電気事業者による地域独占が長く続いていました。

今回の法改正によって、電力小売りへの参入規制(地域独占)が撤廃され、2016年春からは、新たに登録をした小売り電気事業者であれば、50kW未満の小口利用者への供給も可能になります。企業や個人は、複数の電力事業者や料金プランの中から、価格や付加サービスを比較しながら、自社(自分)にとって最適な会社を選べるようになります。


電力全面自由化で、すべての需要家が電力会社を選べる時代に――

2. 事業者には、安定供給確保と需要家保護を目的とした義務を課す

小売り電気事業者に対しては、契約したすべての顧客からの電力需要に対応できるよう、必要十分な供給力を確保することが義務づけられます。

一般送配電事業者(現在の一般電気事業者の送配電部門)に対しては、安定供給を確保するために、需給バランスの維持、山間部や離島のような採算ベースに乗りにくい地域に対してのユニバーサルサービスなどが義務づけられます。

また、2016年以降も、政府が電力会社の値上げ幅を審査している現行の料金規制が、経過措置として残されます。したがって需要家は、従来の電力会社と今の料金体系を変えることなく契約し続けることもできますし、いったん他の新電力会社などに乗り換えた後、再び戻ることも可能になります。この経過措置の解除については、今後、実際に市場で競争が進展しているかを確認したうえで、実施することになっています。

このほか、需要家が安心して電気事業者を選べるように、事業者(代理店を含む)に対して契約条件の説明義務、書面交付義務を課すとともに、苦情処理義務、名義貸しの禁止などの規制がかけられます。



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コラムニスト・プロフィール

三木 優みき ゆたか

これまでにエネルギー企業を中心としたコンサルティング・調査業務に従事。主にエネルギー・環境に関する新領域に進出する際の事業性評価・事業戦略の策定に関するコンサルティングを行ってきた。近年は ...

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