インターネットの発展によってデジタルマーケティングが活発になっている中で注目を集めているマーケティングオートメーションソフトウェア。その特徴と国内外のプレイヤーの動向を整理し、マーケティング部門にとってのメリットを探っていく本連載。第一回目の今回は、マーケティングオートメーションの市場動向と基本的な機能についてまとめていく。
活況なマーケティングオートメーション市場
米国を中心に年率50%以上の勢いで成長を続けているマーケティングオートメーションソフトウェア市場。2013年には日本円にして7兆円を超える規模への成長が見込まれておりますます活況だ。また、Adobe社がNeolane社を(2013年6月)、Salesforce.com社がExactTarget社を(2013年6月)(そのExactTarget社もPardot社を(2012年8月))、Oracle社がEloqua社を(2012年12月)、Microsoft社がMarketingPilot社を(2012年8月)と、企業買収が続いていることも本市場の注目度の高さを物語る一端といえよう。
マーケティングオートメーションとは、リード(見込客)の獲得および育成プロセスの高度化をソフトウェアで支援をしようとの思想に基づいており、目的は、案件化確度の高いリードを生成することにある。いわゆる"ホット"なリードというものだ。そのホットリードを後工程である営業プロセスに引き継ぎ、結果のフィードバックを受けながら、その精度を高めていくのである。
簡単な例で言えば、BtoBにおいて大型展示会の来場者、BtoCにおいて証券会社の開催する勉強会への参加者などは、"買う=顧客化"という点においてホット度合いはバラバラである。単なる情報収集や勉強のために来ている人もいれば、今まさに困っていることや考えていることがあってその解消のために来ているというホットな人もいる。あるいは既に自社の顧客となっている人も混ざっているのが通常であろう。これらをすべて一括りに「リード」として後工程に供給しても、受け取った営業側はたまったものではないし、また、参加という行為が即時に売り込まれるという状況につながることは、参加者側としても次回以降の参加に対してネガティブになってしまう可能性もある。
マーケティングオートメーションは、これらの参加者に対して、個々の状況に応じて適切な対応を行うことで、ホットなリードに育成していくことを支援する。ひとりひとりの相手の状況を確認しあるいは推察し、それに合わせたメッセージを、最適なタイミングで発信していく。もちろん、手間と時間とをかければ可能なことではあるが、見返りが不透明な見込客相手では個別対応は難しい。そこに効率化をもたらすのがマーケティングオートメーションという位置付けだ。
マーケティング活動におけるコミュニケーション手段は、ますます多岐にわたり複雑化している。以前よりあるマス広告や展示会、郵送によるダイレクトメールなどに加え、インターネットの発展とモバイルの進化によって、自社のWebサイト、Web広告、電子メール、ソーシャルメディアなどの活用と最適化は、マーケティングの現場において大きな課題の1つとなっている。そのような背景もあり、今、マーケティングオートメーションが注目を集めている。
リードを獲得する、リードを育成する
マーケティングオートメーションが持つ機能に話を移す前に、マーケティングプロセスについて共通の理解を持っておきたいと思う。マーケティング活動を2つに分けると、リードを獲得する工程と、獲得したリードを育成する工程とに大別できる。ここで、リードとは、Eメールアドレスや電話番号が分かっているなど、こちら側からその相手に対して直接連絡する手段があり、その許諾が得られている相手のことを指す。
リードジェネレーションと呼ばれるリードを獲得するプロセスは、潜在的な見込客と効率的に接触して、こちら側の存在に気付き興味を持ってもらい、その結果として、連絡先と許諾を提供してもらうという工程になる。
広告や展示会など、自社の顧客層と相関の高いメディアに対して自社ならびに製品やサービスを露出していき、そこから誘導する。あるいは、検索エンジンから誘導するためにリスティング広告を活用したり、SEOとして自社サイト内のコンテンツを最適化したりする。また、対象となる顧客層を一定の条件でしぼれるのであれば、リストアップをして、郵送やFAXによるダイレクトメール、電話によるアプローチも多く用いられているのが現状だろう。また、ソーシャルメディア上でのコミュニケーションを通じて自社サイトに誘導し、そこからリードを獲得するという方法も実際に活用され始めている。
誘導経路は様々あれど、リードを獲得する場所としては自社のWebサイトを用いることが多くなってきている。それは従来型のお問合せフォームではなく、例えば、有用なコンテンツのダウンロード、サンプルリクエスト、セミナー申込みのような体裁をとるいわゆるランディングページだ。もちろんリードの獲得はWebだけでは無い。本当に確度の高いリードは電話で入ってくることが多いというのは読者諸氏の経験則にも当てはまるのではないだろうか。
そうして獲得されたリードは、そのまま案件候補として営業対象とするに相応しいものも一部は含まれるが、大半は、ゆるい状態であることが多い。その比率は、リードジェネレーションに用いた手段にもよるが、何れにせよ全件がすぐさまその対象となることは極めて少ない。そこで必要となるのがそれらリードに対して買いたい気持ちを醸成していくリードナーチャリングの工程だ。
リードナーチャリングは、そのリードが獲得された経緯、その後送信したEメールの開封やリンクのクリック状況、自社Webサイトコンテンツの閲覧傾向、展示会やセミナーへの参加状況、それらのコミュニケーションを通じて収集されたプロファイル情報から、相手の状況を理解しあるいは推察して、最適なタイミングで、最適な内容のコミュニケーションを、最適な手段で実施することで実現する。
見込客に対しても担当営業がぴったりと張り付いて、定期的な訪問を通じて関係構築をして案件の機会を創っていく——そういったことが出来る環境であれば、それこそそれは理想のナーチャリング活動とも言える。が、現実的には、お互いに業務にゆとりがなく、具体化していないテーマについて、じっくりゆっくり話しをする時間は取りにくくなっている。そのため、その活動対象は適切に絞り込む必要があるし、一方で、足繁く通うことが出来ないリードに対してのコミュニケーションも何かしらの手段で確保をしておく必要がある。
案件化し成約した場合の見返りの大きさとなるポテンシャルサイズや、現状の案件化への見込度合いなどからリードの現在価値を評価し、頻度や手段を考慮した継続的なコミュニケーションを行なっていくことがポイントとなる。
なお、成約し顧客になった後に、定着化や離反防止、アップセルやクロスセルのための活動ももちろん重要なパートとして存在する。が、それらは、ナーチャリング工程で行われる施策と方法論には重複するため、本稿においては省かせていただくこととする。
どのような経路で獲得したリードの案件化率が高いのか、どのようなシナリオでコミュニケーションするとリードを育成できるのか、案件見込として後工程に引き渡すのに最適なのはどのような状態のリードか、マーケティング活動全体に投入しているヒトやカネのリソースに対する見返りはどうか、最適な配分が出来ているか——マーケティング活動の分析やレポーティングも、前述の2つの実行工程を最適化させるための重要な工程となる。これら3つの工程をどう日々の業務の中で回していくかが現場に与えられた課題となろう。
マーケティングオートメーションの機能
前項のようにマーケティング活動は様々な手段の複合的な工程となっている。マーケティングオートメーションツールは、それらの最適化を支援し、その手間を低減するための機能を持つ。各社違いはあるが主な機能をまとめると以下のようになる。
Webランディングページとフォーム
自社のWebサイトの中に、広告や送信したEメールからの遷移先としてのランディングページを簡単に設置し管理できる機能。ページ内に、リードとして登録してもらうためのフォームを埋め込むことが出来る。また、ページを閲覧した相手に応じてダイナミックにコンテンツを出し分ける機能を有するツールも多い。
リード管理とセグメンテーション
フォームからキャプチャーされたリードや、展示会など外部で集められたリードなどを一元的に管理するデーターベース機能。ツール内の機能によって行われたコミュニケーションの履歴はもちろんのこと、外部で行われた接触履歴についてもインポートや記録をすることができる。それらの履歴情報とフォーム入力やアンケート内容などを基に、セグメンテーションをする機能を持つ。例えば、「昨年の展示会に来場しており、かつ、直近1ヶ月間に自社のサイトを閲覧したリード」や「◯◯に関するページを過去3ヶ月の間に合計5ページ以上閲覧したリード」などだ。
Eメールマーケティング
Eメールの送信については大きく2つの機能を持つことが多い。1つは前述のセグメンテーション機能によって作成されたリストに対して、一括送信する機能。もう1つは、ある条件にミートするリードが発生したタイミングで指定した文面のメールを送信する機能だ。これは例えば、セミナーに参加したリードが、Webの価格表ページを見に来た場合、その1時間後にメールを送信する、などになる。効果的なナーチャリングには必須の機能と言える。また、一括送信メールでも、リードのデータベース内の項目に応じてコンテンツの一部を差し替えるなどの調整が出来るものもある。また、Eメールだけでなく、郵送やFAX送信の機能を備えたツールも存在する。
ソーシャルメディア
ソーシャルメディアについても海外系のツールでは統合されていることが多い。大きく機能は2つあり、1つはモニタリング機能。これは、事前に登録しておいたキーワードを含む投稿がソーシャルメディア上で行われた際にそれを蓄積し、必要に応じて反応をすることが出来る機能。もう1つは、Twitter、Facebook、Google+など各種ソーシャルメディアに対する投稿をする機能。時間指定による投稿予約や、投稿内のリンクのクリック数やいいね!やRT(リツイート)などの反応についても一元管理される。
SEO/PPC広告管理
リードジェネレーション系の機能として、自社サイトのSEO(検索エンジン最適化)についてのアドバイス機能やキーワードごとの流入数管理や順位のトラック機能を有するツールもある。また、Google AdWordsなどPPC広告との連携機能を持つ。
キャンペーン/施策管理
各種のマーケティング施策をキャンペーンとして管理し、その状況や結果を一元的に管理できる機能。これにより、各キャンペーンを横並びで対比することが可能。別々のツールを使っていると、Excelなど外部で一覧表を作成し評価をする必要が出てしまうことを回避。
SFA/CRM連携
創出・育成されたリードを後工程となる営業プロセスに引き継ぐための各種SFAやCRMシステムとの連携機能。マーケティングオートメーションツールはマーケティング部門のメンバーだけが用い、営業を中心とするその他のメンバーは、リードの状況などはSFAを通じて確認するといった思想で作られているツールが多い。案件化状況、案件金額、成約状況、成約金額などのSFA側からデータフィードバックを受けて、最終的なマーケティング活動評価に繋げられる機能も多くのツールが持っている。
レポーティング/分析
すべてのリード情報と、すべてのマーケティング活動、そして案件情報が一元管理された環境にあるので、非常に有用なレポーティングが可能だ。正しくマーケティング活動のPDCAサイクルを適切に回していくために必要なレポーティングが可能になっている。獲得ソース別分析、キャンペーン分析、チャネル分析など。
以上、マーケティングに用いられるチャネルの多様性にともなって、その持っている機能も多岐に渡っていることが見て取れると思う。マーケティングオートメーションツールを用いない場合には、各チャネルに個別のツールを用いることで実現しているケースがほとんどだろう。その場合は、各ツール間でデータの連携などをしなければならず非常に手間がかかることになる。そういったことをせずに統合環境を持てることは大きなメリットとなる。
最後に、筆者は、個々の機能が充実していることが重要なこととは考えていないことを伝えておきたいと思う。それら機能が活用するマーケッターにとってどれほど有用なのか、これまで実現出来なかったことを可能にするのか、創出されたリードや案件数や成約金額にどれほど貢献するのか——これらの視点にたって本連載を進めて行きたいと考えている。連載内で取り上げて欲しいことなどあればソーシャルメディアなどを通じてご連絡いただけると幸いだ。
筆者プロフィール
株式会社クロスシフト 代表取締役
尾花 淳
半導体商社での営業職、マーケティング職を経て、B to Bインサイドセールスのアウトソーシング会社にてコンサルティング部門に従事、責任者として幾多の法人営業部門の改革に携わる、2012年に日本初のインバウンドマーケティング専業エージェンシーの創業に参画、2013年5月に独立し現職、マーケティング領域において、アナログからデジタル、アウトバウンドからインバウンドと広くに渡る知見と経験が強み。