【全文】Google創業者ラリー・ペイジが語る、Googleが目指す未来とイノヴェイションの秘訣
- 2014/07/28
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Googleの創業者、ラリー・ペイジ。世の中に様々なイノヴェイションを提案し、より豊かな生活をもたらすGoogleを生み出した彼が、今後目指すGoogleの取り組み、そして、社会に対してインパクトがあるイノヴェイションを起こすための秘訣について語ります。
ここでは、アメリカで著名なインタビュアーとして知られる、チャーリー・ローズとGoogleの創業者であるラリー・ペイジの対談を書き起こしていきます。
【スピーカー】
インタビュアー チャーリー・ローズ氏
Google創業者 ラリー・ペイジ氏
【見出し一覧】
・検索のエンジンの完成こそが、Googleの目指すべき未来
・ゲームをクリアし、猫を認知できるまで進化した人工知能
・テクノロジーと情報が人々の生き方を180度変える
・いい情報「だけ」を共有できる世界を作りたい
・車が自動運転になり、自転車が空中を走る時代がすぐそこに
・誰もやらないことに取り組まなければイノヴェイションはない
【動画】
検索のエンジンの完成こそが、Googleの目指すべき未来
チャーリー・ローズ氏(以下、ローズ):これからインターネットとGoogleの話をし、それから検索技術とプライバシーの話をしたいと思います。そして、これまでの仕事でどうやって点と点を繋げてきたのかという仕事の哲学や、あなたの始めた仕事の旅路について、どうして興味深い展望が開けるようになったのかということについて、主にGoogleの目指す未来について話を聞いていきましょう。
最初の質問ですが、Googleは今どこにいて、どこへ向かっているのでしょう?
ラリー・ペイジ氏(以下、ペイジ):それは我々もよく考えます。かなり昔、私達が定めたミッションは、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」でしたが、現在でもミッションについては良く聞かれることがあります。今Googleがやっていることもミッション通りなのかと。私もよくそれを自問しますが、自分でも分かりません。ただ実際、検索について考える時、それは私達にとってとても深い意味を持っています。自分が何を求めているのかを理解して、世界の情報を理解する、Googleはその出発地点にいる。本当にクレイジーなことです。我々は検索に15年取り組んできましたが、全く完成に近づいていないんです。
ローズ:検索エンジンが完成したときには、どんなものが出来上がるのですか?
ペイジ:検索エンジンは、何故完成していないんでしょう?その理由の大半は、コンピューターがダメだからです。コンピューターは、ユーザーがどこにいるか、何をしているか、何を知っているか分かっていません。私達が最近取り組んでいることは、デバイスを使えるものにして、ユーザーのコンテクストを理解させることです。「Google Now」は、ユーザーの現在地を知っていて、ユーザーが必要なものを把握しています。でも、本当にコンピューターが機能し、ユーザーと情報を理解するところには至っていません。まだまだ洗練されていないのです。
ゲームをクリアし、猫を認知できるまで進化した人工知能
ローズ:今のGoogleが取り組んでいることの中で、「ディープマインド」(2014年にGoogleが買収した人工知能の研究開発企業)はどこに当てはまるんですか?
ペイジ:まず買収の経緯ですが、それは検索について考えていたところから説明する必要があります。検索は、周辺の世界について全てを理解しようとする行為であり、コンピューターをより洗練させ、ユーザーを本当に理解させることだと考えています。
例えば、声による検索は重要ですが、今の音声認識技術はどうでしょう?あまり精度が良くありませんよね。ユーザーの発音をちゃんと認識してくれません。そのため、私達はそれを改善すべく機械学習を研究し始め、既に結果が出てきています。
また、私達はYouTubeのような映像に目を向けました。YouTubeをコンピューターに学習させてみたのです。すると、コンピューターが自分で「猫というもの」を発見したんです。これには重大な意味があると気付きました。私達が「猫というもの」を発見し、学べるということは非常に重要だからです。
ディープマインドが開発した人工知能の本当に驚くべきところは、自ら学び取れるということです。ビデオゲームの遊び方の学習から始めたましたが、ゲームをプレイしながら自動的に遊び方を覚えてしまうんです。
ローズ:この映像を見て下さい。コンピューターが凄い事を出来るようになる様子がこちらです。
ペイジ:驚くべきことに、人工知能は私達が見るのと同じピクセルを見て、ゲームを操作し、スコアを上げて、同じ1つのプログラムで様々なゲームを覚えたのです。しかも、人間を超えたレベルでプレイできるようになりました。今までコンピューターではこのようなことは出来ませんでした.
少し説明すると、ゲームではボクシングをしています。人工知能は、対戦相手をくぎ付けにする方法を見つけ出します。左が敵のコンピューターで、スコアがどんどん上がっています。
このような人工知能が、スケジュール管理や必要な情報提供の機能として組み込まれることを想像してみてください。私達がいるのはまだスタート地点ですが、非常にワクワクしているところです。
ローズ:人工知能がボクシングゲームをクリアしたことを見ると、私達の向かう先には確かに人工知能があるようですね。我々は、人工知能の進化の道のりのどの辺りにいるのでしょう?
ペイジ:これは久しくなかったような非常にエキサイティングなことです。ディープマインドを立ち上げたデミスは、神経科学と情報工学を学び、さらに脳科学の博士号を取るために復学もしています。こうした神経科学と情報工学の交わる部分で、知的なものを作り出し、面白いことをさせるには何が必要なのか、数々の研究が行われています。
ローズ:今、プロジェクトはどういう段階で、どれくらいの早さで進んでいるのでしょうか?
ペイジ:今お見せした、YouTubeで猫のようなものを理解することや、音声認識を改善することが最新の技術です。これまでの機械学習では、物事を徐々に改善していくことしかできませんでしたが、さきほどの例はとてもエキサイティングです。1つのプログラムだけで多様なことをやってのけるのですから。
ローズ:それでは、人工知能がイメージした猫画像をご覧に入れたいと思います。これはコンピューターが猫を観察し、猫とは何かをイメージしたものです。その画像はこちらです。
ローズ:猫が見えますか?コンピュータが捉え描いた猫の概念です。
ペイジ:この絵は、コンピュータがYouTubeを見て学習したものです。猫が何かも知らずに描いたものとなります。この「猫」という概念は、人なら理解できるものですが、今やコンピューターも理解し始めています。
テクノロジーと情報が人々の生き方を180度変える
ペイジ:ここまで、私たちは検索から出発して、人々のコンテクストや情報を理解しようとしてきました。それに関してご覧頂きたい映像があります。私たちの見つけたものです。
(以下、映像)
ザック・マテレ(ケニアの農夫):以前、ジャガイモを畑に植えたんですが、突然次々と枯れはじめ、本で調べても理由が分かりませんでした。そこで、出かけて行ってコンピューターで検索してみたんです。あるウェブサイトが、アリが原因かもしれないと教えてくれました。書いてある通り、木を燃やした灰をまくと、数日後アリは消えていました。そこでインターネットの凄さを感じました。
また、事業を拡大したいと思っている友達がいるのですが、彼とインターネットカフェに行って、一緒にいろんなウェブサイトを見ました。その次に彼と会った時、彼は風車を地元の学校に作ろうとしていました。これまででは想像すら出来なかったものが、突然地元の学校にできたことを誇らしく感じました。
しかし、誰もがインターネットにアクセス出来る訳ではないということに気付いて、私の祖母でも使えるようなインターネット環境が必要だと思いました。そこで掲示板を思いつきました。簡単な木の掲示板です。電話で情報を受け取ると、その掲示板に情報を貼り出すんです。それは、基本的にはコンピューターの代わりになるものです。
私は、インターネットを人助けのために使います。自分や身近な人のために、生活をよりよくする方法を探しているんです。
多くの人が情報へアクセス出来ますが、その後に生かすことができません。その後に生かすために必要なのが、知識だと思います。知識を手にすれば、誰かに助けてもらわなくても自分達で解決策を見つけ出すことができます。情報には力があります。情報をどう使うかで私達の生き方は決まるのです。
(映像はここまで)
ペイジ:この映像の凄いところは、彼の話をネットの記事で読み、そこから彼を見つけ出し映像を作ったということです。
ローズ:あなたの話題になると、「ペイジは世界を変えたいんだ。テクノロジーがその鍵だと彼は信じている」と言います。世界を変えるには、インターネット、そして言語を使うのですが、それは人々がいかにネットにアクセスし、自らのコミュニティに影響を及ぼせるかということでもあります。あの映像はまさにその一例ですね。
ペイジ:はい、その通りです。未来を見据えたとき、情報のアクセスにより重点を置くようになって、最近「Projcet Loon(プロジェクト ルーン)」というものを立ち上げました。私達は、気球を使って計画を実現しようとしています。映像をお見せしましょう。世界の3人に2人は、インターネットにアクセスできません。私達は、このプロジェクトが低コストで、かつインターネットにアクセス出来ない人の役に立つと考えています。
ローズ:気球ですね。
ペイジ:ええ、気球でネットのアクセスを提供するんです。
ローズ:どうして気球を使うとインターネットにアクセスできるんでしょう?気球をどこかに繋がなくてもよくするための興味深い仕組みがあると伺いましたが。
ペイジ:これはイノヴェイションの良い例ですね。私達は、このアイデアに実際に手をつけるまでに5年以上、考えを温めてきました。そのアイデアの原点は、「アクセスポイントをどうやって低コストで高所に配置できるか?」ということです。通常は人工衛星を使いますが、打ち上げるまでに長い時間がかかります。私達の計画で気球を上げるのが、いかに簡単かご覧頂きましたが、これもインターネットのお陰なんです。気球を上げる方法は、ネットで検索していて見つけました。3、40年前に誰かが気球を上げて、地球を何周もしたそうです。今の我々に同じことが出来ない訳がないと思いました。それがこのプロジェクトのきっかけです。
ローズ:でも風の影響を受けてしまいますよね?
ペイジ:はい、受けてしまいます。しかし、これまでに前例のない規模で気候シミュレーションをした結果、気球の高度を空気の出し入れなどでうまく制御してあげると、気球の行き先を大まかに制御できることが分かったんです。たくさんの気球を使うことで、地球全体を覆う通信網を作ることができると考えています。
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【なぜみんなシリコンバレーを選ぶのか!】シリコンバレーで起業することのメリット
- 2014/02/23
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GoogleやFacebook、Apple、PayPalと世界を代表するウェブサービスが次々と生まれるアメリカ・シリコンバレー。シリコンバレーはアメリカ合衆国カリフォルニア州北部のサンフランシスコ・ベイエリアにおける南部に位置し、IT企業の国際的な都市です。IT業界においてはどの関係者もイノベーションを創造する中心的な存在として注目している特別な場所です。社会に新たな価値を創造するために挑戦する起業家が多いシリコンバレーですが、なぜシリコンバレーで起業をする人が多いのでしょうか。今回は、シリコンバレーで起業をするメリットを探ってみたいと思います。
世界最大級の強力なネットワーク
シリコンバレーで起業をする一番のメリットは、やはり世界最大級の強力なネットワークを活用することができることです。ここで言う、ネットワークとは人脈やインフラストラクチャー、スタートアップ間同士の交流を指しています。こうしたネットワークを保持している中心的な存在はシリコンバレーのインキュベーションを兼ね備えたベンチャーキャピタルです。500StartupsやYコンビネーター、TechStars、Plug and Play Tech Centerは好例です。
これらのベンチャーキャピタルはシリコンバレーで起業をする際に、慣れない場所で少人数で仕事をする上で障害となるオフィスなどといったインフラストラクチャーや人脈やスタートアップ間同士の交流などといったネットワークを提供してくれます。従来のベンチャーキャピタルにおいては、大きな取引先を紹介する営業の側面および質の高い人材を連れてくる採用の側面においてその役割を果たしています。しかし、インキュベーションを兼ね備えたベンチャーキャピタルにおいては顧客が欲しがるプロダクトの作り方まで価値提供してくれます。
現地メディアでの掲載=世界中のメディアでの掲載
スタートアップにおいては、協力者を多く得て、より多くの人を巻き込んでいくことが何よりもサービスを加速させる上で重要です。そのような中で、メディアに掲載されることは信用を手に入れることと同義であり、助けになる存在となります。また、メディア掲載は有能な人材を集める、ベンチャーキャピタルから資金調達をする上でも信用力のある実績として示しやすいものとなります。
シリコンバレーの情報は世界中のIT業界関係者を中心とした人々が毎日アンテナを張り巡らして情報を得ています。つまり、シリコンバレーの現地のメディアに取り上げてもらうことは、世界中のメディアへと情報を波及させることにつながり、サービスの認知度を加速度的に上げることに寄与します。
ただし、メディアに掲載されることが、世界的にユーザーを獲得につながることは注意しておきたいです。あくまで、メディア掲載されることは自社およびそのサービスのブランディングや採用面において有意義なことであるということであります。
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シリコンバレー発のウェアラブルデバイスと開発プロセス
- 2014/03/11
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今日、スマートフォンやタブレットを中心としたスマートデバイスが爆発的に世界規模で普及しています。これらのスマートデバイスはこれまでトップの座を占めていたPCを浸食し、わたしたちのライフスタイルを大きく変えました。
そのような状況下において、シリコンバレーではポスト・スマートデバイスとしてウェアラブルデバイスが注目を集めています。そこで、今回はシリコンバレーにおけるウェアラブルデバイスの事例およびウェアラブルデバイスによるスタートアップを創造するための開発手法に関してご紹介します。
シリコンバレー発ウェアラブルデバイスの事例
ウェアラブルデバイスとは、文字通り身に付けることによって利用するコンピューターです。手で操作しなければならないスマートフォンやタブレットデバイスとは異なり、体に身につけることで両手が解放され、自由に操作することができたり行動を記録することができるのが特徴です。
こうした特徴を持つウェアラブルデバイスでありますが、シリコンバレーでは現在眼鏡型ウェアラブルデバイスとして注目を集めているものがあります。一つは日本にも上陸した圧倒的な知名度を誇るGoogleグラス、もう一つが日本人がシリコンバレーにて創業したベンチャー企業「Telepathy」のウェアラブルデバイス「Telepathy One」である。
TelepathyのCEOである井口尊仁氏は「スマホは1つのアクションを起こすのに、10以上の操作が必要である。それを限りなくゼロにしたい。」と話しており、従来の手で操作するスマホ・タブレットでバイスをただウェアラブルデバイスに置き換えたのではなく、ウェアラブルデバイスの特性を生かした開発を試みているそうです。
ウェアラブルデバイスを創造するための開発手法
ウェアラブルデバイスの開発手法においては、リーンスタートアップを取り入れます。リーンスタートアップとは、ユーザーの声を聞きながら迅速に仮説と検証を繰り返しながら開発を進めていく方法です。
具体的には「Conceptを設定→最低限の機能を持ったプロットタイプの作成(MInimum Functional Prototype)→完全な機能を持ったプロットタイプの作成(Complete Functional Prototype)→工場での製造のための設計(Design-for-Manufacture)⑤はじめての工場での製作(First-factory-run)→小売り」の順番で行います。
仮説と検証を迅速に繰り返すことで少しずつ進歩し、ウェアラブルデバイスによるスタートアップ成功への道を見つけ出すのです。ユーザーが何を求めているのかを把握することが難しい今日、リーンスタートアップを通してユーザーの求めているものを学びながら開発していくことで、ユーザーが欲しがらないものに多くの時間とお金を使って事業失敗に陥ってしまうことを防ぐことも有効とされています。
シリコンバレーを中心として非常に注目を集めているウェアラブルデバイスですが、まだ一般的に普及するものはあまり出てきていないというのが現状です。つまり、市場はまだ広がっているのです。ユーザーの心を掴む、素晴らしい製品を開発すれば世界の市場を占めることができるかも知れません。まだまだ可能性を秘めた分野なのです。
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