27時間テレビで草なぎ君が、はるか昔の一件について質問されていました。
もう何年も前、草なぎ君は問題を起こし、ニュースになりました。
懐かしい。あれを朝から報じたのが僕でした。あの時の草なぎ君、本当に立派でした。
先週の事ですが、僕がメインキャスターを担当している番組「バラいろダンディ」内で神奈川県逗子海岸の「ある問題」を取り上げました。
そう。
テレビって、なんでつまらなくなったのか。
この二つを見ると、良く分かります。
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古巣と袂を分かってからもう何度聞かれたか分からない質問。
「なんでこれ程にフジテレビはつまらなくなったのですか?」
フジテレビだけか?
確かに、古巣は視聴率的にも苦戦しているし、面白くない番組が増えたとは思う。
でも、古巣だけか?テレビ、全体に言えないか?
『昔よりも面白くない』って?
僕はせっかく辞めたのだし、そこのところは突き詰めていきたいと思っていた。「なぜ、つまらなくなったのか?」色々と語っている評論家や学者さんではわからない。内部を知る人間でなければ、実際に現場の人間がどれだけ一生懸命頑張ってるかなんてわからない。どれだけ才能のある人間がいるかなんてわからない。
でも一度飛び出して、周囲を見てみた。
『昔よりも面白くない』なんてもの、テレビ以外にもあふれてないか?先週お伝えした逗子海水浴場のニュース。
あまりにもお客さんの…特に若い男女のマナーが悪いという苦情が相次いだらしい。このままでは、安心して子供を連れて行けない、と。
逗子市は逗子の海岸を「日本一安全でマナーのいい浜辺」として利用できるようにしよう!と決断。結果…
・酒はダメ
・刺青は論外
・音楽もかけちゃダメ
逗子海岸は今年施行された法律により、日本一、間違いなく「マナーが良く」「子供にも安心して楽しめる海岸」へと生まれ変わった。
そして、大きな問題が発生した。
海開きは7月1日。そこから2週間がたち、逗子海岸お訪れたお客さんは1万3千人。
去年の同時期は…
7万4千人だった。
なんと、客が激減。7分の1の客数では周囲の海の家や旅館は立ち回らない。そう。
地元の観光協会やホテルなどが逗子市を相手取って裁判を検討し始めたのだ!
一体何故?
マナーがいい方がいいんじゃないのか?
親子で安心して遊べる方がいいんじゃないのか?
しかし、行政が良かれと思ってやったことは、逗子海岸が「見捨てられた海岸」となる結果をもたらした。。
答えの一つはここにあるように思える。
人間は…もっともっと、リラックスして生きている。ダメなことはダメだ。が、その…ダメなことをしちゃうことも受け入れながら生きているのだ。人間はバカで、だらしなくて、だからこそ愛すべき存在で、だからこそ楽しさや苦しみがあるのだ。
人間が生きる生活には…本来もっと『のりしろ』があるべきなのだ。
そして、多くの人間はそんなこと、とっくの昔に知っていて、だから人間みんな、うまいことやりながら許し、許され、生きている。
ダメなことはダメだ。その通り。
が、実は人間はそうは言いながらもう少しリラックスして生きるものだし、ダメなことを許容しながら生きている。逗子海岸はそこをあまりにもきっちりと線引きをした。
やだよね。そりゃあ。そんな堅っ苦しい海岸。僕でもやだ。さすがに海なら酒くらい飲みたいし。
なので誰も行かなくなった。可哀想だが、逗子海岸周辺の海の家やホテルは経営はもはや成り立たないだろう。いくらなんでも客数7分の1位になると…もうやってはいけないだろう。可哀想だが、たたむところが続出するだろう。
そして裁判も勝てないだろう。
逗子の海岸を良い方向に持っていこうと考えた行政に罪はない。事実、苦情は山ほど来ていたのだから。と、言うか、むしろ「安全な海を作りたい」の方がよっぽど正論だからだ。正論が…正論すぎて息苦しくなったのだ。
草なぎ君、本当に頑張っている。偉いと思う。
可哀想に、昔、もう何年も前の話。
草なぎ君はストレスでお酒をかなりの量を飲むようになった。そらそうだ。国民的アイドルグループの一員の重圧ってきっと並みの神経じゃ耐えられないはずだ。
で、酒に酔った草なぎ君は酔っ払い、あくまで彼が住んでいたマンションの「プライベートガーデン」内で素っ裸になったとのこと。
で、おまわりさんに怒られたってだけの話だ。
僕はこれが大きく報じられた時にどう考えても「何が悪いのか分からなかった」のだ。でもテレビでは偉そうな顔をしたコメンテーターが「彼は社会的影響が大きいのですから自覚が足りないとしか…」と責めたてていた。そんなもんか?そんな悪いか?今まで彼が残してきた功績、彼のお陰で受けた感動、それをぶっ潰すほどのもんなのか?
釈放された草なぎ君が会見をする、という。
しょうがない。取材に行く。気が進まないとはこのこと。でもしょうがない。仕事だし。会見場は300人の報道陣でごった返し。まぁそれはしょうがない。でも、深々と頭を下げる草なぎ君に…まぁ厳しい質問が相次いだ。
「自覚はあるのか?」
「引退は考えないのか?」
「失望したファンには?」
だんだんイライラしてきた。何だってんだ?こいつら?そんな聖人君子に見えないぞ?僕も大概狂った人間だが、なんだかこいつらと一緒だと思われたくないんだが。
30分が過ぎたころ、手をあげて、思いっきりその流れを断ち切ってやった。
「早く復帰してほしい、と願ってるファンが沢山いますよ。ファンのために早く復帰しないとですね」
40分間ほどの会見で、草なぎ君が唯一、微笑んで答えてくれた瞬間だった。他局、全部僕の質問の答えの所を使ってたけど、今度から使用料もらうからね。フリーになったのだし。
その後、僕たちスタッフは夜の街に繰り出し、100人の方々にアンケートを実施。その結果を翌日のスタジオで発表しておいた。
「今回の草なぎ君の一件に関して、街中でアンケートを取りました。『草なぎ君は活動自粛に入りますが、それについてどう思いますか?』」
答えは80%を超える人たちが「そこまでしなくていいと思う」と回答したのだった。そらそうだ。全然誰も怒ってなかった。
草なぎ君は国民的アイドルグループに所属しながら芸能記者たちの厳しい質問の嵐に、一切の原稿もなくすべて自分の言葉で答え続けていた。僕は立派だったと思う。僕のとくだね!の放送を見て、ネット上では「やっぱりフジはスマップに甘いわ」との批判が多数書き込まれていたが、悪かったな。あれ、僕がスタッフと一緒に考えて、そこまでの他のマスコミの報じ方が気持ち悪かったから、全マスコミに対して「お前らが言うほど、世間、怒ってないっつーの」という皮肉を込めてやってやっただけだ。フジテレビの演出じゃないし。ただの僕のイヤミだ。
逗子の海岸もそう。
みんな、そこまでの正論、期待してないし。そこまで言われたら…もう、堅苦しいんだよね。
草なぎ君もそう。
みんな、全然怒ってなかったし。怒る訳ないし。酒飲んでの失敗くらい、みんなやってるだろ。僕、何回失敗したか分からんわい。でも、あれで何か月も謹慎させられるんだよね。
最近はテレビだけじゃなく、行政も何もかも、「そこまで怒らんでも」ってことに対して、怒りすぎ、「そこまできちきちせんでも」ってことで、きちきちしすぎなんです。
会議室の中で考えちゃうと、それでいいって思っちゃうんでしょうね。
違うんだよなぁ。
人間ってもっともっとリラックスして生きてます。本当はいろんなこと出来るのに、なんだか形上の「正論」にあぐらをかいて、単に決まりを作って、単にあれもこれも辞めるって決めて安心することに甘えて。
テレビがつまらなくなったのも、今の日本が息苦しくなっているのも、原点は同じだと思う。
なので、僕は今いる職場でそこを叩き潰してやろうと思う。
TOKYO MX の、新しい僕の仲間と、批判にも正論にもビクともせずに、「楽しいテレビ」を貫いてやる!
そう思っています。
記事
- 2014年07月27日 20:54
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