東京照射 TOKYO BEAM
鉄道の整備計画 分かれた行き先
成田、羽田両空港へと通じる都営浅草線を東京駅とつなげる路線、東急多摩川線と京急空港線を結ぶ「蒲蒲(かま・かま)線」――。こんな鉄道新線計画が決まったのはミレニアムに沸いた14年前。中には2020年東京五輪を控え、地元が盛り上がる路線も。それらが盛り込まれた「運輸政策審議会答申第18号」が来年、期限を迎える。新線は本当にできるの?
◆具体化 上位にランク付け
未着工 多額の事業費懸念
「答申の目標年次が迫るなか、今後どのように検討を進めていくのか」
3月の都議会本会議。答申第18号をめぐり質問が相次いだ。この答申は00年、有識者、知事、鉄道事業者らがメンバーとなってまとめ、当時の運輸相に提出された。
答申では、「15年までに開業するのが適当な路線」(A1)▽「15年までに整備着手することが適当」(A2)▽「今後整備を検討すべき」(B)の3ランクに分け、東京圏の新線計画をまとめた。計画に強制力はないが、14年がたってみると、A1に入ったかどうかが、計画実現の分かれ目になっている。
A1には、(1)08年に開業し、13年3月から東急東横線との直通運転が始まった東京メトロ副都心線(2)来春に開通する、東海道線と上野駅以遠の宇都宮・高崎・常磐線を結ぶJR東北縦貫線など、計画が具体化した路線がずらりと並ぶ。
一方、昨年9月の五輪開催決定を機に話題に上った新線計画は、A2に位置づけられていた路線が大半だ。
代表格は3路線。
〈3〉「蒲蒲線」は東急・JR蒲田駅―京急蒲田駅の約800メートルをつなげるため、約3キロの路線を地下に造る。線路幅が違うので乗り換えが必要だが、東急沿線など東京西部から羽田空港へのアクセスが便利になるとして、地元の大田区が整備を求めている。事業費は1千億円を超す見込みだ。
〈4〉京成線や京急線を通じて成田・羽田の両空港とつながる都営浅草線。答申では、浅草線の日本橋―宝町駅間で東京駅へ迂回(う・かい)させることになっていた。
今は、丸の内に「新東京駅」をつくり、京成線の押上駅と京急線の泉岳寺駅を新線で結ぶ「都心直結線」構想(〈5〉)に取って代わられた。安倍政権が成長戦略に位置づけ、国土交通省が検討している。
〈6〉東京メトロ有楽町線豊洲駅―東西線東陽町駅―半蔵門線・都営新宿線住吉駅を結ぶ「8号線」。20年東京五輪の競技会場が集中する臨海部を抱える江東区が実現を求めている。総事業費は1260億円。1972年に作られた、より古い答申から盛り込まれている。
だが、A2路線の着工の見通しは立たないままだ。
事業費の負担を求められ、都営地下鉄も運営する都は慎重だ。蒲蒲線について、3月の都議会で問われた舛添要一知事は「多額の事業費を要する。鉄道ネットワーク全体のあり方を検討する中で総合的に判断していく」と述べるにとどめた。
国と都が株主の東京メトロも有価証券報告書に「副都心線を最後として、今後は新線建設を行わない」と明記。そもそも、特殊法人の営団地下鉄から株式会社の東京メトロに変わったのは、必要な地下鉄の建設にめどがたったからだという考え方だ。
◇新答申へ駆け込みも
期限の15年が過ぎると答申はどうなるのか。国交省はまだ正式には公表していないが、再び審議会が開かれて新たな答申がまとめられる見込みだ。それに向けて、都も近く委員会を設け、新線計画を練り直す。
新答申に駆け込みで名乗りをあげようという路線も出てきた。中央区の地下鉄計画だ。銀座などの中心部から、五輪選手村の予定地で住宅開発が進む晴海などの臨海部を結ぶ構想(〈7〉)。区は今年度、1千万円の調査費をつけた。担当者は「答申に位置づけてもらうことが、実現への最初のステップだ」と意気込む。
答申第18号には、JR京葉線を東京から三鷹駅まで延伸する計画もある。JRの広報担当者によると「社内で聞いたことはない」。すっかり宙に浮いている。都営大江戸線を大泉学園町まで延ばす計画についても、3月の都議会で「さらに具体的な検討が必要」(交通局長)と答弁があった。どちらもA2だった。
(福井悠介)
■14年前に答申 来年が期限
・運輸政策審議会答申
運輸相(当時)からの依頼で専門家らが交通に関する政策をまとめたもの。答申の内容を実現させる強制力はない。答申第18号の表題は「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」。
むすびには「計画の実現に向け、国、地方公共団体及び関係事業者の努力・協調はもとより、当該地域の各界の支援を強く要請する」と書かれている。現在は交通政策審議会に組織がかわった。