二十歳前後の学生を見ていると、体のエネルギー利用効率が悪いなと感じます。昼ごはんきちんと食べたであろうはずのに、4限目の授業で講義室にどんよりと漂う「もう、お腹すいた」という空気感。
自分が学生の頃を思い出してみても、ごはんを食べる度に汗がぶわぁと吹き出して、無駄に熱エネルギーが放出されていました。それが年齢を重ねる度に、食事しても肌はサラっサラで、一滴の汗もかかないことが多くなったと感じます。
年をとると、若い頃と同じ量を食べても太りやすくなる要因の一つは、エネルギー代謝に関わるホルモンの分泌量が減少するからです。具体的には、男性ホルモンだとテストステロン、女性ホルモンだとエストロゲンがエネルギー代謝、すなわち脂肪燃焼に関わっています。これらのホルモンは、加齢とともに減少し、だいたい50代で思春期の約半分になるといわれています。
見た目はさほど変わらなくても、年齢と共に、体の質は劇的に変わっています。自分の体を車で例えるとわかりやすいでしょう。若い時の自分の体は、燃費の悪い“クラシックのアメ車”のようなものであるのに対し、年を重ねた時の体は、燃費が非常に向上した“ハイブリッドカー”のようなものです。つまり、加齢とともに体が、省エネルギー化、エコ化するのです。
さらに「人は年齢を重ねると、体だけでなく、思考も省エネ化する」と最近感じています。加齢による体力低下によって余裕がなくなることと連動し、考え方も省力化・最短化していく気がします。私も油断すると「これは、こうでしょ」とか「そんなの、わかっているよ」といった、頭から決めつけのセリフを吐きそうになる自分がいることに気が付きました。「これは、やばいぞ」と感じています。
これまでの経験を踏まえて、将棋や囲碁の世界でいう大局観で、シンプルにものを考えることはもちろん大事です。しかし、思考の範囲を狭めたり、硬直化が過度に進行してしまうと、立派な“頑固オヤジ”ができあがるのだと思います。研究者としては致命的な欠陥でしょう。
加齢とともに、体は省エネ化に向かうのは自然の摂理で逆らえませんが、考え方はエコ化せず、脳内の神経活動に関するエネルギーを無駄にたくさん使って、面倒な道に無鉄砲に進むのを止めてはいけないなと感じた週末でした。