放送法では、確かに委員の個別番組への干渉を禁じている。経営委員はNHKの経営に関してのみ発言が許されるのであって、恣意的に番組内容の変更を求めるような発言は出来ない。放送の公正性を維持するためには当然の規制である。
しかし、明らかに誤った発言があっても、知らんぷりを決め込んで、何も言ってはならないというのはおかしい。経営委員という重要な立場の人が、明白な間違いがあっても、指摘も注意もしないで看過するとしたら、それこそ無責任と言うべきではないか。
NHKの看板番組ともいうべきニュースは、影響力が大きい。国民の判断を誤らせるような間違った内容は、厳に慎むべきことで、断じてあってはならないことなのである。
私はかつて、国家公安委員長という重職に就いたことがある。この大臣は「君臨すれども統治せず」という妙な不文律があった。警察行政にくちばしを入れ、捜査等を左右させるようなことがあってはならないということであろうが、国民の側に立って、警察行政の誤りが無いように、しっかり見守ることは大事な役割と心得て仕事をしたものである。
大越キャスターは、7月17日の番組で、
「在日コリアン一世の方たちというのは、韓国併合後に強制的に連れて来られたり、職を求めて移り住んできた人たちで、大変な苦労を重ねて生活の基盤を築いてきた経緯があります」と説明した。
韓国併合の良し悪しは歴史に委ねることとして、ここで論ずるつもりはないが、要は日本国籍になった訳で、日本人として、当然国民徴用令を受けてきた。「徴用」を「強制連行」と言うこと自体、韓国人を特権的な被害者とする、いわば韓国側の一方的な、政治的な言い分なのである。当時の日本人は皆、当然のこととして徴用を受けてきているのである。
週刊新潮(7月31日号)誌上で、ジャーナリスト水間政憲氏は
「在日一世で、強制連行の経験を持つ人なんていない。そう騒ぐ人たちが指しているのは、戦時中[国民徴用令]によって労働者として連れてこられたコリアンの事。しかし、1959年、外務省が発表した資料によれば、彼らは優先的に祖国へ帰ることが出来た。その時点で在日コリアンは約61万人いましたが、うち徴用由来の人は、自由意思で止まったたった245人しかいませんでした」と述べている。
一世のほとんどは、一旗揚げることを夢見て日本へ渡ったか、戦後に密航してきた人だと言う声もある。そうした事実を知らないで語っているのだとしたら、キャスターの不勉強に尽きると言わなければならない。
この大越キャスター、実は私の現役時代、政治部の記者として交流があった。当時彼には3人の男の子が居て、「とにかく腕白で、女房もノイローゼ気味です」。
ある時、私の家内と共に、一家をすっぽん料理屋に案内したことがあるが、確かに子供たちの腕白ぶりは見事であった。今、私に2人の男の孫が居るが、2人寄ると猛烈な騒ぎぶりである。思わず、私の若き時代を振り返り、あの頃の大越一家との交流を懐かしく思い出したものである。彼は真面目で、人当たりの良い好青年であった。
その後、彼は順調に活躍して、今やNHKの看板キャスターとして、押しも押されもせぬ存在になっている。テレビの雄姿を見る度に「立派になった」と喜んでいる。好漢、自重してさらに躍進して欲しいと心底願っている。
百田氏は自身の発言について、「放送が終わった番組について感想を述べただけ、放送前の番組に干渉したわけではなく、放送法に抵触しないのは明白だ」と述べている。
私も決して放送法に触れるものではないと思っている。むしろ、国民放送としてのNHKの重要性から考えて、あらゆる立場の人が、 更に積極的に発言して、正しい世論を喚起して欲しいものだとさえ思っている。
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