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音楽文化を取り巻く環境についてフォーカスし、キーパーソンに今後のあり方を聞くインタビューシリーズ。第一回目は音楽レーベル運営だけでなく、カフェやレストランの飲食事業、ライブハウス事業、書籍出版事業など多角的な事業展開を行っている株式会社エル・ディー・アンド・ケイの社長、大谷秀政氏が登場。そのビジネス観や、音楽ビジネスの現状に対する考え方を探りつつ、どのような方針で音楽事業やカフェ事業に取り組み、どう新たな文化を提案していくのか、今後の展望についても話を聞いた。
「音楽を取り巻く環境、ライフスタイルというところまでやっていく」
――大谷さんは95年にエル・ディー・アンド・ケイを立ち上げ、ガガガSPや、羊毛とおはななどのアーティストを輩出し、音楽シーンに存在感を示してきました。そのなかで「カフェ事業」に参入すると聞いた時には驚きましたが、結果的に見ると一貫した軸があるように思えます。ご著書では「やりたいことをやった」と書かれていますね。
大谷:そうですね。人が生活していくなかで、「家で音楽だけ聴いて暮らしている」なんて人はいない。音楽もTPOを想像して提供したいし、うちはライブハウスもやっているんですけど、音楽を取り巻く環境、ライフスタイルというところまでやっていかないと。
あとは本にも書いたように、アーティストのたまり場的なところを作ってあげたかった。アーティストもレーベルを選ぶものだし、居心地のいい環境を作らないと、定着しないでしょ。レコーディングスタジオも持っているし、制作の環境も整備していますね。
――「環境を整備していく」という発想は早い段階から?
大谷:ファクトリー的なものを作りたいという気持ちは、わりと早い段階からありました。関西だったり沖縄だったり、地方出身のバンドが多かったから、寮のような感じで一軒家を借りてあげたりだとか。何より、クリエイターが自由に出入りして、賑やかにやっている環境があるのは楽しいですからね。
――00年頃はCDが売れていた時代でしたし、レーベルとして大資本を目指すという道も選択肢にはあったと思います。でも、そういう道ではなく、ライブハウスやカフェなど音楽を軸とした事業を、東京・渋谷を中心に広げていく方向に進まれました。
大谷:だって、CDバブルの恩恵を受けてませんから(笑)。そういうのは大きいメジャーの会社さんがやればいいことで、小さなレーベルが同じことをやっても仕方がないじゃないですか。カフェについても、ドトールさんやスタバさんみたいなことはやろうと思ってもできませんしね。大きく展開しようとすると「一般的に好まれる味」を作らなきゃいけないし、そうすると差別化できないから、値段競争になってしまう。特殊なポジションで、どうやったら存続できるか、というところを模索しながらやっています。
――音楽もカフェも“安売り”にならないようにしてきたと。大谷さんは23歳という若さで起業していますが、いわゆるベンチャー勝ち組を目指すことはなかったのでしょうか。
大谷:もともと、会社をでかくする=稼ぐことを目的にするということに、あんまり興味がないんです。というのも、自分はもっと早く死ぬと思っていたんですよ(笑)。だから、時間を大事に過ごしたかった。そうすると、より快適に、より楽しく生きたいという気持ちが先に立っちゃうので、お金のために何かを犠牲にしようとは思えないんです。いい感じのまま事業を継続して、そのまま死んでいきたい、というのが一番ですね。わりとラテン系の考え方なのかもしれないですけど。
もっともベンチャー企業の経営者、孫(正義)さんや堀江(貴文)さんもスゴいと思うし、共感する部分はありますよ。あの人たちって、お金に興味がないはずなんですよ。貯金なんかしないでずっと投資し続けてるんだろうし、事業をやりたくて仕方がなくて、止まっていられないんだと思う。要するに、僕と同じでやりたいことをやっていて、どこに重きを置くかが違うだけなんじゃないかと思います。
――なるほど。事業の規模をさらに拡大するか、ご自身の生活も含めた質を大事するか、重点の置き方の違いですね。
大谷:どちらが正解というわけじゃないと思うんですけどね。それと、最近ではスタッフがやりたいということをなるべくやらせてあげたい、と思っていて。僕は小学校くらいから30代後半で死ぬと思ってきたので、それを超えたあたりからかな。近年でオープンした数店舗は、事業として規模を拡大してきたというより、「店長としてお店をやりたい」というスタッフがいたからですね。「やってみなよ」と。
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