注1:kWh:キロワット時
注2:電気料金は企業向け(自由化領域)の平均価格。再値上げ幅想定値は、専門家の協力を得て本誌で行った。その方法は以下の通り。
①各電力会社の発電は、大半が原子力と火力(石炭、石油、LNG)で行われている。このうち、原子力発電がゼロになる場合を想定した。
②①でゼロになる原子力発電量を、火力発電で代替する場合に必要になるコストを算出する。石油、LNGで代替する場合(既存の石炭火力発電はベース電源で稼働率が高いため、原子力発電を代替する余地がないと想定)で計算した。
③経済産業省の電力需給小委員会(2013年4月)で示された4つのエネルギー源の発電単価を使用。原子力発電単価(1円)と、石油・LNGの値差は14.5円となる。
④各電力会社の現行電気料金の原価算定の前提となっている原子力での発電量にそれを掛け、原子力を火力で代替する際に新たに必要になるコストを算出する。
⑤④で算出した必要コストを各社の販売電力量で割って1kWh当たりの必要値上げ幅を算出した。販売電力量は各社の料金原価前提から。
「今年2月から客室の照明をLEDに変えたり、ロビーなどのエアコンの設定温度を少し上げたり、細々と対策を打っているけど焼け石に水だね…。去年からの電気料金の引き上げは、本当に痛いよ。何とかならないのか」
札幌市のある大手ホテルの支配人はこう言って頭を抱えた。北海道電力が昨年9月に電気料金を大口顧客向けで平均11%値上げしたことが大きな打撃になっている。
このホテルの場合、値上げ前の電気料金は月平均で500万円だった。「単純計算すると月に100万円を超えるくらい上がるはずだったけど、小さな節約を重ねてなんとか80万〜90万円の上昇に抑えている。でも、これから夏場に入るとそれも限界がある…」と顔を曇らせる。
今、日本経済はかつてないほどの電気料金引き上げに見舞われようとしている。日経ビジネスは7月28日号の特集「電力暴騰 企業生き残りへ、4つの選択」で、今後すべての原子力発電所が再稼働しない場合、電力会社を延命させるために、東日本大震災前に比べて当面どれだけの値上げが必要になるのかを独自に試算した。7月16日、九州電力・川内原発の再稼動申請が合格の内定を得たが、再稼動のメドが立っている原発は実際にはごくごくわずかであることから、こうしたシミュレーションを実施した。
北海道電力61.5%、東京電力57.9%、関西電力57.8%。震災後多くの電力会社が行った値上げに、今後想定される追加引き上げ分を乗せると、これらの地域では実に5割以上の大幅上昇になった。前述のホテル支配人の嘆きよりもはるかに深刻な声が今後、各地に広がりかねないのである。
だが、よく見ると地域によって予想分を含めた値上げ後の電気料金には格差があることが分かる。例えば、東北電力は本誌予想の値上げ後でも1kWh当たり料金は19.2円、中国電力は17.7円、北陸電力は16.5円と、北電(22.3円)、東電(21.8円)、関電(21.0円)などに比べかなり低い。