本田がメディアに話さなくなった4つの理由
イメージトレーニング、世界基準、自己への問いかけ
2つ目の理由は、「メディアの手のひら返しへの憤り」である。
2010年W杯の直前まで、当時23歳の本田はサブにすぎず、スポーツ新聞の記者からはどちらかと言えば「期待のタレント」というよりも、「生意気な若手」として扱われていた。
しかし、2010年W杯で本田はレギュラーの座をつかみ取り、絶対的なエースになると、メディアの扱いが急変する。典型的な手のひら返しだ。不信感を抱くなというほうが難しい。大会後、2得点を上げたエースの下に取材依頼が殺到したが、本田は1度もTVに出演することなく、ロシアに飛び立った。
同じく4年前の取材で、本田は言った。
「オレは都合のいいのが嫌いで。W杯の後は、はっきり言って、みんな都合よすぎたから。そういうところは人間性として大事にしている部分。カッコいい感じやなと思ったら、オレはしゃべるし。ダサいなと思うときにはしゃべらへんし。シンプルですよ。ヨメにも言われますもん。こんな扱いやすいやつはいないと」
男としてカッコよくない
3つ目の理由は「つねに世界基準で物事を見ている」ということだ。
日本ならばベスト16に進出しただけで英雄扱いされる。だが、サッカー大国であれば、逆に「なぜもっと上に行けなかったのか?」と批判されるだろう。本気で世界トップを目指している者からすると、国ごとにスタンスを変えて話すのは、自己否定とイコールなのだ。
「(南アフリカW杯でベスト16に進んでも)ロシアにきたら、そんな高い評価は誰もしてないよという感覚なんでね。『ベスト16が何か?』というくらいの反応を結構もたれているから。それなのにオレが日本に向かって偉そうにW杯を語っても、男としてカッコよくないでしょ。オランダのメディアに出たら、格好いいことは言えない。なのに日本のメディアで格好いいこと言うんですか? そういうのが嫌いなんですよ。どこの国のメディアに出ても、同じような目線で言いたい」
本田はセビージャ戦でゴールを決めて日本人初のCLベスト8を決めたときも、「日本人初とか興味ない。僕が目指しているところははるか上なんで」という言葉を残していた。
取材で称賛を受ければ、いくら世界基準で考えていても、無意識のうちにブレが生じかねない。いちいち基準が違うと説明するのも面倒だ。質問者との意識のギャップが背景にある。