2014-07-27
■『ダバング-大胆不敵-』でオトナの階段を昇れ!
『ダバング-大胆不敵-』観賞。
とはいえ。輸入版で数十回見て、日本公開決定にギャーギャー喜んでいたら試写も見せていただいて、劇場公開初日にまだ未見の友人を誘ってで、もはや何度目の観賞なのか解らない。そもそも3年前、インド映画を輸入版で見始た時に、最初にまとめ買いした中の1本が『ダバング-大胆不敵-』だった。初めて見た時には、あまりのおもしろさに終わってすぐにもう一度再生しなおして、以降もことあるごとに繰り返し観賞し「他にもコレに匹敵するくらい面白い映画があるのかも!?」と、インド映画を集中的に見始めるきっかけになった大事な1本だ。
『ダバング-大胆不敵-』映画が始まってすぐ、銀行強盗を終えたギャング団アジトへ主人公が乗り込む。サンピンをドアごと蹴飛ばし、ぶっ倒れて悶絶するその手を踏みつぶして登場するのは警察官の制服を着た、口ひげにタレサンのサルマーン・カーン演じるチュルブル・パンデーだ。たった一人の警察官の登場に拳銃を向けるギャング団。
「ほほう。警察官を殺したとなると重罪で20年は食らう上にムチ打ち刑もあるぞ。しかし、オレがオマエを殺せば…… 昇進だ!」
話が進むにつれ、主人公のサルマーン:パンデーは確かに悪党だが庶民の味方で面倒見も良い兄貴肌な男だと判明していく。部下の警察官たちに酒を(文字通り)浴びせるほど飲ませ、陽気に歌い踊る。「酒だ!酒だ!酒もって来い!」というミュージカル・ナンバーが、盛り上がらないワケが無い!
パンデーは惚れた女にも強引に迫りはするものの、相手の自主性を尊重し、無理強いはしない。彼に惚れられる相手も、グイグイと迫るパンデーを正面から受け止めつつサラリといなす、鋭いアイメイクも艶っぽい姐御肌だ。
物語は規格外な警察官チュルブル・パンデーが義理の親父や弟との確執に悩みつつ、政権与党のヤクザな青年部の陰湿な策略に対し、義理人情と圧倒的な暴力で向かっていくというもの。
たとえば、理不尽な世界をビビッドな色使いで見せるアニメもイイだろう。怪獣やロボット、スーパーヒーローが暴れる映画も好物だ。しかし、オトナの心を単純明快にワクワクさせるオトナの娯楽だってあってしかるべきだろう。立ちはだかるヤヤコシイ困難に対してエイヤと拳を力いっぱい振り下ろし、ブリな美女としっぽりしけ込む。そんな娯楽が!
そもそもこの『ダバング-大胆不敵-』は、モダン化するインド映画の潮流に対するカウンターとして企画され、もくろみ通りのヒットを飛ばした経緯がある。
最新作が『チェイス!』のタイトルで日本公開が決まった『Dhoom』シリーズしかり。『RACE』『BLUE』といった高級コンゲームもの、リティク・ローシャンがスーパーヒーローに扮する『Krish』やシャー・ルク・カーンによるアミターブ・バッチャンの名作リメイク『DON 記憶を消された男』*1など。海外ロケを中心としたバタ臭い風景をバックに高級スポーツカーを乗り回すタキシード姿の男優とパーティドレスの女優が景気の良い話をしていく。そんなチャラチャラしたインド映画界に「オマエらインドの心を忘れたか? 親と先祖に感謝しろ! 割りきれなくても感謝しろ!」とドスを利かせたのが本作だ。
タイトルを連呼するベタな歌で始まり、インド的原風景であろう街並みの中、ラジニ・カーントが『ムトゥ 踊るマハラジャ』で見せたタオルアクションに替わる「後ろ襟サングラス掛け」アクションと、あくまで泥くさいキメキメポーズの連続で見せていく。そんなクドクドとした脂ぎった魅力が、瀟洒でこざっぱりとした映画に飽きた観客に受けて2010年のインド映画興行収入1位を記録した。
今の日本の映画興行の状況だって4年前のインドと変わりはしない。むしろ悪いと言っていいだろう。そんな今、日本で『ダバング-大胆不敵-』が日本で公開されたのは何かの啓示に思える。
子供のころに憧れたオトナはタレサンかけた松田優作ではなかったか? 優作はいつだって酸いも甘いも噛み分け終わって疲れた美女と逢瀬を重ねてはいなかったか? 「太陽にほえろ!」ジーパンはおばあちゃんを大事にする家族想いな一面があったハズだ。
あの頃に憧れていた、野蛮で艶っぽくて家族至上主義の野暮ったい魅力を、インドから来たマッチョなオヤジを見て思い出してみるのも、この夏に経験すべき必須科目ではないだろうか。
クドクド書きましたが、基本的には超おススメの痛快アクション映画です。
劇中より「酒だ!酒だ!酒もって来い!」音頭。