(2014年7月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
イスラム原理主義組織ハマスは7月下旬、イスラエルの開かれた世界的な貿易経済の心臓部を襲った。パレスチナ自治区ガザから発射されたロケット弾がテルアビブ近郊のベングリオン国際空港から1マイル離れた場所に着弾した後、米連邦航空局(FAA)が一時的に同空港への発着を禁止したからだ。
これに先駆けて、ハマスの軍事部門であるアルカサム旅団はイスラエル国内の外国航空会社にメールを送り、イスラエルの主要な玄関口であるベングリオンは軍の基地も併設しているため、各社の航空機を攻撃の標的にする計画だと警告していた。
パレスチナのニュースサイト、アジナードは、空港閉鎖はイスラエルが「ミサイル防衛システム『アイアンドーム』の能力について嘘をついていた」こと、さらにパレスチナの「レジスタンス」には、イスラエルの軍事施設のみならず、民間インフラも攻撃する力があることを証明したと書いた。
ハマスの「勝利」は短命だったものの――24日までに大半の航空会社が運航を再開していた――、この一件は、3週間目に入った直近の戦闘の経済的悪影響に対するイスラエル経済の脆さを浮き彫りにした。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相の就任以来の最大のテーマは、同首相はイスラエルの国民と経済――同国は近隣諸国よりも欧米との貿易の方が多い――を地域のリスクから守れるという確約だった。
イスラエルは今、ハマスを弱体化させ、ガザの過激派がロケット弾を発射するのをやめさせること以外には指導者が何の終局も示していない戦争に対する備えを固めており、同国経済にはさらなるリスクがある。
レバノンでのヒズボラとの戦闘以来の人的、経済的コストか
イスラエルとガザの境界線の地下を走る過激派のトンネルを破壊する目的で開始された軍事作戦は、7月半ばに地上戦に拡大し、イスラエルが攻撃を強めるために戦車と兵士をガザに送り込んだ。
イスラエルでは、今回の紛争がもたらす人的、経済的な潜在コストを測ろうとするエコノミストらがすでに、2006年のレバノンのヒズボラとの戦いと比較している。ヒズボラとの戦いは31日間続き、イスラエル史上最も長い戦闘だった。
2006年の紛争はイスラエルの四半期の国内総生産(GDP)を2%減少させ、イスラエル北部の国境地帯の経済を混乱させたが、戦いが終わると、成長が回復した。