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webほんのしるべ編集部+瀬名秀明「文系人間のための〈科学本棚〉」

2014年07月27日

改めてお詫び申し上げます

 仙台に戻って参りました。7月25日の深夜にお詫びし、削除した文章を、訂正線つきで再掲しました。おそらく批判された方は、一度アップした文章を削除することは、たとえ謝罪があったとしても証拠隠滅を図ったのと同様であり、陰湿で卑怯な行為だと感じられたのだと思います。私はそこまで考えが至りませんでした。心からお詫び申し上げます。


 今回の件につきまして、皆様にご迷惑をおかけし、不快な思いをさせてしまったことを、改めてお詫びいたします。本当に申し訳ありませんでした。

 まず私は、今回の日本SFファングループ連合会議総会における「星新一賞を応援する」議案の結果について、充分確かめることなく誤った情報を書いてしまいました。この議案が却下されたと聞き違え、その勘違いを各方面に確認しないままブログに断定的に書いたことで、ご迷惑をかけてしまいました。これはまったくもって私の軽率な過ちでありました。関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。本当にすみませんでした。

 そして感情に流され、つい(*2)のように、無関係なSFファンの皆様のお心を傷つけ、皆様のせっかくの楽しい想い出を壊す文章を書き記してしまいました。これはすでに述べましたように、完全に私の過ちであり、失言でした。
 なぜこのような文章を書いてしまったのか、懸命に振り返ってみると、おそらく私は暗黒星雲賞を頂戴し、ホールの皆様から大きな拍手をいただいたことで、ようやく多くのSFファンの方々と一体になれた、同じ気持ちを共有できた、と感激し、その高揚が残っていて、つい自分本位の意見を他のSFファンの方々にも無意識のうちに押しつけてしまったのだと思います。「自分は無関係なのだから、瀬名のいう『皆さん』のなかに私を巻き込まないでくれ」というお怒り、ご批判はもっともであり、心からお詫び申し上げます。本当に申し訳ありません。
 こうした文章は、第53回日本SF大会なつこんの参加者の皆様のみならず、なつこんの開催・成功にあたって懸命な努力をなさったスタッフの皆様、ボランティアの皆様のお気持ちをも踏みにじる暴言であったと反省しています。重ねて心よりお詫び申し上げます。

 また、(*1)の文面が、一部のなつこんボランティアの方のお心を傷つけるものだとはわからず、不快な思いをさせてしまいました。私は中立的な文章として書いたつもりだったのですが、一部の方にはこれが、暗にスタッフの不備を批判する陰湿な内容の文章だと感じられたようです。そうした読み方ができることへの配慮が足りませんでした。私の文章力のまずさに原因があったと思います。申し訳ありませんでした。

 続いて、私にはまだ詳細がわからず戸惑っているのですが、上述のこと以外にも、私はなつこんにてボランティアの方に不快な思いをさせてしまったようです。尊大な態度でその方に接してしまったようなのですが、申し訳ありません、どうしても該当する出来事が思い出せません。
 なつこんでは「スタッフ」(運営側)と「ボランティア」(大会参加者が自主的に登録して、一時的に企画を手伝う)の方々がいらっしゃいました。なつこんスタッフの方によれば、本日未明の時点まで、スタッフMLで私への苦情は出ていないとのことなのですが、ボランティアの方には私のわからない大きな粗相があったのかもしれません。具体的にご指摘いただければ……とこちらから申し上げても、きっとそれ自体がその方にとっては大きなご負担となるでしょう。ですからここで改めてお詫びいたします。本当に申し訳ありませんでした。


 その他、さまざまなお怒りのお言葉、ご批判を2ちゃんねるSF板の方々より頂戴しました。
 そうしたお叱りに対し、こうしてお詫びを申し上げること自体が、また別のご批判の対象になっています。「瀬名はスルー力がない」というものです。
 ふだんならスルーしていたでしょうが、私は今回、GoH(ゲストオブオナー)のひとりとしてなつこんに参加させていただきました。私の役目は、名前も知らないSFファンの方々と会話し、楽しい時間を共有し、想い出をつくり、私から感謝の気持ちを述べることでした。
 2ちゃんねるSF板に文章をお寄せになる方々は、おそらくSFファンなのだと思います。ですからGoHとして、なつこんに関してそうした方々を不快にさせてしまったことについては、たとえ匿名掲示板の方々であろうと、ここで心を込めて謝罪するのが道理だと感じた次第です。
 こうした考えにはご異論もあろうと存じます。またこの場で2ちゃんねるSF板の方々のお言葉を取り上げること自体、そうした方々のお気持ちを傷つけている可能性も考えました。私がこのようにブログを書き連ねること自体、自己正当化の行為であり、ただの自己憐憫でエントリーを書いているとのご指摘もありました。さすがに後者のご批判を見たときには悲しくて涙が出そうになりました。
 ですから個々の文章には言及せず、最近私が考えてきたことを述べ、改めてお詫びといたします。
 以下に書く内容によって、「また瀬名はSF業界を批判している」と捉えられてしまうかもしれません。ですがどうしても避けて通れないので、すみません。決して批判目的ではないのだということをわかってください。

 私が考えるに、一部のSFファンには、大きく次のふたつのルールがあるのだと思うのです。

・自分たちは自分たちの常識内で仲良くやっているのだから、そこに余所の常識を持ち込んだり、ましてやそれによって混乱をもたらしたりすることはルール違反である。

・自分(たち)のプライドを傷つけ、ましてやその経緯を衆人のもとに晒すことは、重大なルール違反であり、一生かかっても償うことができないほどの過ちである。このルールを犯した者は、どんな謝罪があろうと、永久に許すことはできない。

 以上の推測は、たぶん、それほど的外れではないと思うのです。これらのルールは私の道徳・倫理規範からは大きく外れるものなのですが、おそらく一部のSFファンの方々にとっては絶対に侵すことのできない規律なのではないでしょうか。
 私はふだんから、おのれの道徳観に基づいて行動してきました。私は作家になってから、おのれの道徳・倫理規範に照らして卑怯だと思えるような行為は、一度もしたことはなかったと思います。ですが道徳・倫理規範は世界のなかで一様ではありません。私にとって道徳的な行為が、一部の方々にとってはとても卑劣で、目障りなものに見えたかもしれません。そうした可能性について、確かに私は充分な配慮を欠いていました。
 たとえば私がこのブログで他者の実名を挙げてときおり批判を展開したことは、2番目のルールを激しく侵していたでしょう。日本SF作家クラブを改革しようとしたことは、1番目のルールに抵触したのだと思います。瀬名がひとりで暴走している、と当時ご批判を受けましたが、このルールの重要性を私がきちんと見抜けなかった(甘く見ていた)からでしょう。
 つまりなぜ私がいま多くのお怒りやご批判を受けているのかと考えると、私のこれまでの行動が、そうした皆様の規範に対して尊重の念や配慮に欠けていたからだと思うのです。
 私は最初ホラー作家としてデビューしましたが、いつの間にかSF分野に入る作品を書くようになっていました。SFコミュニティの方々とのおつきあいもできてきました。そうしたとき、私はSFコミュニティのなかにある道徳規範をもっと早くに察知し、擦り合わせてゆく必要があったのです。私はその努力を怠っていたのです。
 そのことにいまは気づきました。本当に申し訳ありませんでした。今後はなるべく皆様の活動範囲から姿を消すことに努めるので、どうか許していただけないでしょうか。

 ひとつだけ、これも自己正当化だ、といわれてしまうでしょうが、述べさせてください。
 私・瀬名は「根回し」ができないため多くの人に迷惑をかけているのだ、というご指摘が複数ありました。しかしそれはちょっと違うと私は思っているのです。
 私も必要に応じて「根回し」という社会的行為をすることはございます。たとえば日経「星新一賞」において、いくつか著名な学術団体からのご協力は、私が直接その団体の有力者に連絡してうまく理事会に諮ってもらうようお願いしたり、あるいは団体内で力のある人をご紹介いただき繋いでいただいたり、といった、いわゆる一般的な「根回し」の上で成り立ったものです。これらは決してあくどい手法を使っているわけではないので、常識的な社会道徳の範囲内だと思っています。SFWJ50のときも、私は会長という立場を有効に「利用」することで、協力団体様との関係をうまく保つよう努めました。いくつかのイベントは、そうした「根回し」が効いたはずです。SFWJの多くの会員にとっては雲の上の存在である著名な作家会員にご協力をいただきたいときは、企画担当者ではなく私が直接電話やメールしてお願いしたこともありました。つまり「根回し」が必要なときは、トップの人間として、あるいはチームメンバーのひとりとして、常識の範囲内でおこなってきたつもりです。
 ただ、ご承知のように「根回し」というのは相手が「こいつは私の仲間だ」と思ってくださらないとできないものなので、SFコミュニティのなかで「仲間」と思っていただけない私が変に「根回し」をしてしまうと、逆に「瀬名はひとりで暴走した」「ルールをわきまえず勝手な行動をして迷惑だ」ということになってしまい、糾弾されかねない。なのでそうした場合、「仲間」のひとりでない私は、文章化されたルールに則り、正攻法で行くしか方法がなかったのです。
 むろんその前に、SFコミュニティのなかで有力であると思われる人物にコンタクトし、私自身は後方に引きながら、その人を引き立て、その人に各方面へご調整いただく、ということもよくやりました。むしろそれを第一選択としたほうが多かったです。しかしそれでもうまくいかなくて、私が行動するほかない、というときもありました。日経「星新一賞」の協力を日本SFファングループ連合会議に諮っていただいたのは、(私の側から見れば)そうした最後の手段のひとつであったことをご理解いただきたいのです。
 ただここでも倫理観の違いが、やはり一部の方々のご不満を募らせてしまったものと思います。また以前には、どうしても私自身の道徳観に鑑みて承諾できない「根回し」を求められることもあり、そうしたものは苦慮の末「できない」とお断りすることもございました。それらも一部の方々が重んじるルールを軽視した卑劣な行為に映っただろうと思います。繰り返しますがこれは批判目的の文章ではありません。価値観の違いがご迷惑をおかけする結果となったことをお詫びしたいのです。本当に申し訳ありませんでした。

 今回、皆様のご投票により「暗黒星雲賞・ゲスト部門」を頂戴しました。それは本当に嬉しいことだったのですが、このような事態を招いたいまとなっては、もういただいた表彰状や副賞を見ることができません。皆様のご厚意を無にしてしまうことは誠に申し訳ないのですが、頂戴したものは実行委員会様へ返送したいと思います。どうか2位の市長様にお渡しいただけないでしょうか。それが難しければ、本当につらく、身を裂かれる思いですが、(辞退)というかたちで、こちらで処分させてください。すべて私自身の過ちが原因です。関係者の方々にここでもご迷惑をかけ、不快な気持ちにさせてしまうことを、深くお詫びいたします。

 たくさん書きましたが、すべて今回は私の過ちにより生じた混乱であり、責任のすべては私にあります。
 デビューしたてのころ、「こんな科学的に誤った小説を書いて金を儲けるような学生を育てた、東北大学の教育は問題だ」という趣旨のご批評を、ある雑誌で頂戴してとても悲しい思いをいたしました。
 今回とこれまでの件について、すべては私・瀬名秀明個人に責任があり、私の出身地や、私の両親・妹・親族などはまったく無関係であることを、どうかご理解ください。私はいまも一部の方々のお怒り、ご批判の声が怖くてたまりません。私の家族の心もばらばらになってしまうのではないかと怯えているのが正直なところです。
 いまここで皆様に土下座をいたします。ですからどうか、もう許してください。これまでのすべてについて謝罪いたします。本当に申し訳ありませんでした。ですからどうか私の家族に安心の日々をください。


 このブログページを含め、私のウェブページは、2005年に業者さんに頼んで体裁をつくっていただいたものです。その業者さんに再び頼んで、近日中にすべてを削除していただくようお願いします(私自身では操作がうまくできないので)。
 本日をもって、SF関係者の皆様とはしばらくおつきあいを辞退させていただければ幸いです。本当に申し訳ありませんでした。

瀬名秀明
posted by 瀬名秀明 at 20:01| ちょっとしたお知らせ | 更新情報をチェックする