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 安倍晋三首相はよほど外遊がお好きとみえる。

 通常国会が閉会するやいなや、オセアニア3カ国歴訪に旅立った。今月下旬には中南米5カ国を訪問する予定だ。それを含めると、外遊は今年になって10回を数える。

 平均すれば月1回以上という目まぐるしさである。

 今年だけの話ではない。昨年は13回も海外に出かけた。就任以来、訪れた国は延べ50カ国近い。

 歴代首相の多くが年間10回足らずの外遊だったことを考えると、回数の多さは際立っている。

 多くの国との関係を深める努力は当然だ。相手の国情を理解し、日本の考えや立場を伝える上で、首相の直接訪問は大きな意味を持つ。

 ただし、問題はその中身だ。これだけ外遊を重ねているのに、隣国の中国、韓国とはまだ一度も首脳会談を持てていない。むしろ両国との距離は開くばかりに見える。

 これでは首相が掲げる「地球儀外交」はいびつになってしまう。一部の国に背を向けたままでは、日本の国益を損なう恐れもあるだろう。

 安倍首相はオーストラリアでアボット首相と会談し、経済連携協定(EPA)に調印した。日本が輸入牛肉に課している関税の段階的引き下げなど、オーストラリアの要求をほぼ認めた内容とされる。

 一方で集団的自衛権の行使容認に対する支持を取り付け、防衛装備品移転に関する協定にも調印した。武器輸出に積極姿勢を示す安倍政権にとって期待通りの成果と言える。

 中国の海洋進出をけん制する点でも両首脳の考えは一致し、これまで以上に踏み込んだ話し合いとなった。両国の「特別な関係」を良い方向に発展させる取り組みは重要だ。

 とはいえ、憲法解釈を変更する閣議決定について、国内で説明責任を果たしたとは言えない。先に海外で行使容認を伝えて支持を求めるのは、順序が逆ではないか。

 国民の多くは行使容認の政府方針に反対している。「国際公約」を理由に事を進める意図があるとすれば、誠実な姿勢とは言い難い。

 まず国民に対して丁寧に説明するのが政治家としての務めだ。

 安倍政権の発足以来、中国との要人往来は激減している。他国訪問に向ける熱意をなぜ、隣国との関係改善に向けられないのか。

  
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