整備新幹線:財源にJR九州の上場益を 与党PT提案へ

毎日新聞 2014年07月10日 20時05分(最終更新 07月10日 23時29分)

 北海道新幹線や北陸新幹線の開業時期を早める検討をしている与党の整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT、町村信孝座長)は10日、開業を前倒しするための財源として、国が全株式を持つJR九州の株式上場などを政府に提案することを決めた。JR九州は既に2016年度までの上場を目指しており、上場議論が進む可能性がある。ただ太田昭宏国土交通相は8日の記者会見で「(上場時の売却益は)旧国鉄職員の年金支払いに充てる」と述べており、協議は難航も予想される。

 整備新幹線の開業前倒しの財源については、整備新幹線の施設を保有する独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」にJR各社が支払っている貸付料収入を担保として、資金を借りる案が軸となる可能性が高い。

 ただ国交省の試算では、将来的に4700億円程度の貸付料収入が見込まれるが、開業前倒しに使えるのは2000億円程度にとどまる見通し。この場合、北陸新幹線で1年、北海道新幹線で2年の前倒しは可能だが、与党PTは5年の前倒しを目指している。5年前倒しする場合、新たに国と地方合わせて3400億円程度の財源が必要になる。

 だが、国も地方も財政が厳しく、さらなる予算の積み上げは難しい。そこで浮上したのがJR九州が株式を上場した際に得られる売却益だ。JR各社が支援機構に支払う施設使用料(貸付料)の期間を現在の30年から10年程度延長することなども含め、足りない資金を賄う案といえる。これが実現すれば「国と地方の年間の負担額は平均210億円程度に収まる」(町村座長)という。

 しかし、こうした財源確保策には課題もある。JR九州は、収益性の低いローカル線を抱えるなどで鉄道事業は苦戦が続き、14年3月期の鉄道事業は149億円の営業赤字に陥っている。旧国鉄の民営化後、経営支援のために国から与えられた約4000億円の「経営安定基金」の運用益(14年3月期で約120億円)などで何とか鉄道事業の赤字を穴埋めしているのが実態。上場する場合、基金の取り扱いなどの問題を解決しなければならない。

 JR九州の経営陣は基金を残したまま上場したい考えだが、太田国交相は「(上場は)経営状況の推移を見極めながら判断する必要がある」と慎重な立場だ。そもそもJR九州が鉄道事業をどこまで黒字化できるかも上場に向けた大きな課題となる。

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