短期国債:一時マイナス金利に 日銀の大量買い入れで

毎日新聞 2014年07月10日 20時40分(最終更新 07月10日 20時44分)

 日本の金利の低下(債券価格は上昇)傾向が強まっている。10日には3カ月満期の新規発行国債(短期国債)の取引が一時、マイナス0.002%で成立し、東京債券市場で初めてのマイナス金利になった。大量の国債を買い入れることで市場にお金を流す日銀の大規模量的緩和の結果、市場は慢性的な国債不足。そこにだぶついたお金が流れ込み、金利を押し下げている。

 長期金利の代表的な指標である10年満期の新発国債の利回り(終値)は10日、前日比0.005ポイント低い0.54%を付け、終値として約1年3カ月ぶりの水準まで低下した。

 短期国債は一時マイナス金利となり、国債を買う側が利息を支払う状態に。担保用に一定の短期国債を持っておきたい金融機関などが買ったとみられ、損失が出るのを承知で国債確保に動く異例の事態となっている。

 日銀の金融緩和の結果、金融機関などが保有するお金の量は増えた。しかし、長期不況を経験した企業は多額の借り入れには慎重で、資金需要はなかなか伸びない。米国でも景気の先行き懸念から金利が低水準で推移しており、投資先を失ったお金が世界中から日本国債に向かっている。

 金利低下による影響も広がりはじめた。長期金利の低下を受け、三井住友信託銀行、みずほ信託銀行は10日、長期プライムレート(企業向け優遇貸出金利)を現行の年1.2%から1.15%に引き下げると発表。みずほ銀行など他の主要銀行も引き下げに動いており、企業にとってお金をより借りやすい環境になっている。

 住宅ローン金利も下がり続けている。住宅金融支援機構の長期固定金利の住宅ローン「フラット35」の適用金利は過去最低水準。金融機関間の競争が激化していることも金利低下に拍車をかけている。

 日米欧の金融当局が金融緩和を続ける中、市場では「長期金利の低下傾向は当面続く」との見方が大勢。これから年末にかけ、物価上昇率が日銀の想定を下回ったり、消費増税の影響などで景気の回復ペースが鈍ったりすれば「日銀が追加金融緩和するとの予想が強まり、長期金利が0.5%を割り込む可能性もある」(SMBC日興証券の森田長太郎氏)との声も出ている。【赤間清広】

最新写真特集