リネハンさん:「日本変わった」 ゲイ公言の米総領事帰国
毎日新聞 2014年07月27日 15時05分(最終更新 07月27日 16時31分)
米国の大阪・神戸総領事を務めるパトリック・J・リネハンさん(61)が今月末で3年間の任期を終え、米国に戻る。ゲイ(男性同性愛者)であることを公言。在任中は各地で講演に招かれ、性的少数者(LGBT)への理解を訴えた。公式行事には夫のエマーソンさん(42)も一緒に参加し、「他のカップルと変わらないと積極的に示すことで、多くの人に温かく迎えられた。初来日した26年前と比べ、日本は大きく変わった」と話す。
リネハンさんが米国務省の職員として来日したのは1988年。「近所の方は親切で、独身だった私のために女性とのお見合いの場を設定してくれました。当時は私もゲイとは明かせなかった。『日本にはゲイはいない』と言われていた時代でした」
89年から札幌の米領事館で4年、99年から東京の米大使館で4年勤務。2011年8月、大阪・神戸総領事として日本に戻った。リネハンさんは日本社会の変化をこう表現する。「10年前は『日本にゲイはいるけど、私は知らない』と言われました。今はこうです。『日本にゲイはいる。私も知ってるよ』。政治家の中にもLGBTを公言する人が出てきました」
リネハンさん自身も東京で出会った日系ブラジル人のエマーソンさんと07年、カナダで結婚。総領事とそのパートナーとして行事に招待されることも多く、昨年の祇園祭の山鉾巡行では二人で裃(かみしも)を着て京都を歩いた。「日本は皆さんが思っている以上に寛容な国。米国のように、LGBTの存在を批判する政党や集団もない。私たちに悪口を言ったり、攻撃する人は一人もいませんでした」
リネハンさんは各地での講演で「Different(違い)」という言葉を使い、「お互いの違いを尊重し、受け入れてほしい」と訴えてきた。日本では、差別をあおるヘイトスピーチが問題になっているが、リネハンさんは「私が伝えたいことはLGBT差別の問題と同じです。社会では一人一人が違いを持っている。人種や国籍だけでなく、身長も違うし外見も違う。違いを乗り越え、それぞれの人間の価値に目を向けてほしい」と話す。