狩人だったら狩らないとただのアーチャー。
「お、起きてきたんだね、あんたにお客が来ているよ」
ログインして宿屋の個室から外に出た自分を、宿屋の女将さんがあるテーブルへと案内した。 そこには、おじいさんが1人でのんびりとお茶を飲んでいた。
「ヒサメさん、冒険者の弓使いを連れてきたよ、後はヒサメさんから話しておくれ」
そう言い残してすぐにカウンターに戻っていく女将さん。 宿屋の女将は色々と多忙だからすぐに仕事に戻っていったのだろう。 そう考えつつカウンターに戻ってゆく女将さんを見送る。
「突然申し訳ございません、ヒサメと申すじじいでございます。 ひとつ、冒険者様にお頼みしたいことがありまして、女将に繋ぎを頼んだ次第でございます」
そういって、白髪頭の龍人のおじいさんは頭を下げてくる。
「ご丁寧にどうも。 私はアースと申します。 いろんな物事に手を出しながらのんびりと渡り歩く……とりあえずは弓使いとしておきます」
我ながら歯切れが悪いことこの上ないが……自分は何者かと上手く表現できなかったのだ。 弓使いであり、鞭やら蹴りやらに手を出し、更に鍛冶、料理、薬、木工など色々な生産にも手を出している自分は何なのだろうと。 器用貧乏と言うジョブはない。
「なんだか、含むような部分がおありのようですが……依頼したい事は、我々が『イボイノシシ』と呼ぶ、目の上にイボのような物ができているイノシシがおりましてな……そ奴の肉がとても美味いのです。 ですがそ奴の肉を手に入れるのはなかなか骨でして。 冒険者殿に何とかイボイノシシの肉を手に入れていただきたいと思いましてのう」
む、新しい食材か……これは興味が出てきたな。
「何の為にお使いになるのか、聞いても宜しいですか?」
ヒサメのおじいさんはゆっくりと頷き……
「じつは、数日後に孫の誕生日を迎えますので、そこのお祝いの席に一品料理として出したいと考えております。 じっくり煮込んで灰汁を取ると実においしい肉に化ける……一年に一度の贅沢を孫にさせてやりたいのです」
そういうことなら、何とかしてやらなくてはならんか。
「最後にもう一つ、何故私を指名されたのですか?」
「イボイノシシは何故か剣も槍も斧もいまいち効果を上げる事が出来ぬのです。 唯一効果的なのは弓でしてな……しかしわしら龍人の弓使いはかなり少ない状態でしてのぅ。 なかなか手に入らぬ理由の一つがそこでありまして……の」
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ヒサメのじいさんから、イボイノシシが比較的見つかりやすいという場所に出向いていた。一が武の林から南に向かうと開けた土地が広がっていた。 この開けた土地の土の中に色々と食べられる野菜のようなものが多数埋まっているらしい、その埋まっている食料をイボイノシシは食べに来ることがよくあるとの事。 〈危険察知〉と、〈遠視〉で周りを見回してみるが……近くにそれらしいイノシシはいないようだ。 注意されたこととして、イボイノシシだけではなく、普通のイノシシも出没するらしく、普通のイノシシは必要ないですからの、と念を押されている。
(とりあえず、遠視で確認しながら歩くしかないか……)
長期戦になるかもしれない。
そして30分後……。
(確定だ、イボイノシシはレアモンスターだ……)
めったに湧くことがないモンスターをレアモンスターなどと称し、いいアイテムのドロップがあることが多いが……最大の難点はその湧かなさにある。 レアモンスターの種類によっては、最悪一回も見ないでゲームが終わるなんて事もある……そのレベルの湧かなさだった場合は勘弁して欲しい所だが。
そんな物欲センサーとの戦いから更に15分経過後。 うろついているイノシシの中に、毛並みがちょっと違うイノシシを発見。 遠視でしっかり確認すると……目の上にいくつものいぼができている。 アイツがイボイノシシなのだろう……。 イボイノシシは地面に開けた穴に時折顔を突っ込んでいる。 あそこに何か食べられるものがあるのだろう。
さて、ここから狩るわけだが……いくつか問題がある。 まず一つ、イボイノシシの強さがわからない。 レアモンスターにも色々いて、攻撃を当てると一目散に逃げ出す、怒って襲い掛かってくる、特殊能力を駆使してくる、など色々なパターンがある。
それからもう一つは周りのイノシシとリンクしないか? と言うことだ。 周りに普通のイノシシが5匹ほど歩き回っている。 その姿がイボイノシシの護衛に見える……流石に一気に襲ってこられると厳しいものがある、最悪イボイノシシが逃げ出して護衛の5匹が向かってくるなんて結果になったら目も当てられない……。
「ならば挟み撃ちか。 ピカーシャ、向こう側についた後、タイミングを計って本来の姿に戻ってあそこにいる6匹のイノシシが逃げ出した場合、逃がさないように足止めをして欲しい。 自分がその隙にイボイノシシを討ち取るから」
「ぴゅぴゅ」
ぴよこピカーシャはふわふわっと飛んで行き、しばらくして自分から見てイノシシ達の反対側に到着した。 これで一応は挟み撃ちにしたことになる、自分は懐から以前買っておいた手榴弾もどきを取り出しつつ、イノシシの団体さんにゆっくりと近寄っていく。
自分の投擲イメージと重なる場所まで前進したあとに、ピンを抜いて手榴弾もどきをブン投げた。 手榴弾もどきはイボイノシシ近辺に落下して……爆発した。
『ゴガァン!』
ふむ、自分の強化オイルと違って、爆発による瞬間的な殺傷能力が重視されているようだ。 これで先手は打てたから、あとはイボイノシシを逃がさないように討ち取るだけ。
「ぴゅいー!」
イボイノシシだけではなく、護衛と思われた5匹のイノシシたちは一直線に自分の反対側へと逃げ出した。 まさか護衛まで一緒になって逃げ出すとは思わなかったが……反対側にいてもらったピカーシャが本来の姿に戻り、イボイノシシを含む合計6匹のイノシシを足止めしてくれている。 イノシシたちは突然現れた(様に見えた)ピカーシャを目の前にしてとっさに一塊になり防御体制を取ったようだ。
(固まったか、ならば遠慮なくいただく)
手榴弾もどきの投擲距離には遠いので弓を引いて……〈ソニックハウンドアロー〉を放つ。 このアーツは風震狩弓に進化した時に手に入れたアーツで、矢のダメージに合わせて、矢が纏う特殊な空気の振動によるダメージを追加する。 その特性から矢はガードされても、振動はガードされないというなかなかに厄介な能力を持つアーツだ。 また空気が振動する故に、ある程度の範囲攻撃になっているという面も持つ。 一箇所に固まった今のイノシシ達にはおあつらえ向きだろう……2匹ほど護衛のイノシシが振動の衝撃でひっくり返った。
「これでどうだ!」
その護衛イノシシの一部がひっくり返った事でイボイノシシを守る防壁に隙間が開き、その隙間に矢を二本同時に番えてイボイノシシめがけて矢を放った。 二本の矢はイボイノシシに見事命中し、プギー! とブタのような鳴き声をあげた……イノシシの鳴き声じゃないよなぁ。 この攻撃であっさりイボイノシシは倒れ、イボイノシシの肉が手に入った。
「ピカーシャ、残りは一気に倒しちゃっていいぞ!」
「ぴゅいー♪」
自分の声が掛かるや否や、イボイノシシを討ち取られて混乱している様子のイノシシ達は、ピカーシャの鋭いくちばしによる突き攻撃であっと言うまにイボイノシシの後を追った。 今回はピカーシャがいなかったら絶対にイボイノシシ達には逃げ切られたな……本来はPTでやる相手だったんだろう、足止め役と討伐役の二手に分かれて戦うべきで……。 ま、いいか。
「おつかれさん、助かった」
「ぴゅいぴゅい」
頬ずりをしてくるピカーシャ。 モフモフで柔らかくてあったかい。 この感覚にはまる人ははまりそうだ……。 帰りはさっさとピカーシャに乗って街の近くまで送ってもらった。 空を飛ぶということは仮想空間であろうと格別だな。
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「なんと、もう仕留められたのですか!?」
ヒサメのおじいちゃんがびっくりしている。
「冒険者様を送り出した後、イボイノシシはすぐに逃げる特性があると伝え忘れた事を後悔しておりましたのですが……まさか仕留めてこられるとは……」
目の前にはイボイノシシからとってきた肉を提示している。
「確かにイボイノシシの肉ですな……お見事でございます。 報酬の1万グローと、迷惑量として2000グローを追加でお支払いさせていただきます、いや、これならばイボイノシシの肉に対して、仕込みの時間が十分に取れます」
ホクホク顔で引き上げていくヒサメのおじいさん。 ま、苦労に見合った報酬かな……?
「しかし、あっさりと狩ってきたね、イボイノシシは数人でやるのが基本なのに、よくもまあ1人でやれたものだねぇ」
女将さんはそう言うが……。
「いや、1人じゃないですよ、頼りになる相棒がいますからね」
そういってひよこ形態のピカーシャを撫でる。 今回はピカーシャがいなければ狩る事は出来なかっただろう。
「そうかい。 ま、そういう相棒がいるのはいいことだよ。 1人じゃ生きられないんだからね」
そういいつつ、仕事に戻っていく女将さん。 自分も今日はこれでログアウトかな。
すぐに逃げるモンスターに対して、皆様も逃げんじゃねー!
とか叫ばれた経験はありますでしょうか?
スキル
風震狩弓Lv17 蹴撃Lv46 遠視Lv64 ↑1UP 製作の指先Lv83 小盾Lv14
隠蔽Lv41 身体能力強化lv64 義賊Lv40 上級鞭術Lv5
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv42 上級鍛冶Lv36 薬剤Lv43 上級料理Lv36
ExP 17
所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
同行者 青のピカーシャ(アクア) 飛行可能 騎乗可能 戦闘可能 魔法所持 ???の可能性

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