不毛な探索・前編
ログインをして、今日こそはPTを探し当てようとPT募集のウィンドウを開く直前だった。
【おーい、アース、今大丈夫か~?】
ウィスパーが飛んできた、声の主はツヴァイの様だ。
【ああ、大丈夫だ、何かあったのか?】
アースの返答にツヴァイはこう続けた。
【時間があるのなら、ユニークモンスターを倒しにいこうぜ!】
ユニークモンスター……ゲームによって色々な呼び方があるが、固有の名前を持った特殊なモンスターのことである。 その近辺のエリアのボスであったり、見つけるのが難しいなどのさまざまな能力を持ち、倒すことで落とすアイテムの内容も特別なものであることが多い。 時には奪い合いにもなる存在。
【それはいいが。 そいつはどこにいるんだ?】
ユニークモンスターの存在は知っていたが、興味がわかず情報も集めてこなかったため、アースはこのゲームのユニークモンスターについては知らないことが多い。
【龍の国の一が武、あそこの近くに林があるだろ? あそこに青い毛玉の外見をしているユニークモンスターが出たって情報があるんだ、探す価値はあるだろ? 見つからなくてもゴブリンやオーク倒せば金はたまるしさ】
──おめでとうピカーシャ……じゃない。 これはどう考えても暴走みたいにモンスター達をぶっ飛ばしまくっていたこの前のピカーシャを、誰かが遠視スキルで見ていたんだろうな……。
【ちなみにそいつの特徴は?】
一縷の望みをかけて……。
【ああ、何故かモンスターでも何でも見つけ次第倒しまくるって事と、遠距離への攻撃には、緑色の弓を使う物を生やして攻撃するらしい】
頭痛が痛い。 日本語的には大間違いなのだが、今の気持ちをあえて言葉で表すなら頭痛が痛い。 間違いなくこの前の自分とピカーシャの事だ。 遠視スキルで見ていたからそこまではっきりとは見えていなかったのかもしれない、そこから情報が伝言ゲームになって色々おかしく話が捻じ曲がったと。
【それだけ強いならドロップも期待できるしな、来ないか?】
不毛だな~……今お前はそのユニークモンスターの正体に話しかけているんだが……。
【まあいいか、行く事にしよう、集合場所を指定してくれ】
【じゃあ、一が武の入り口前で待っていてくれ】
ウィスパーが切れる、絶対に会えないんだがな~そのユニークもどきには。
「まあいい、行こうか、ピカーシャ」
「ぴゅぴゅ」
────────────────────────
一が武の門前で待つこと数分、ツヴァイを戦闘にギルド・ブルーカラーの面々がやってきた。 今日の面子は、ツヴァイ、ミリー、レイジ、エリザ、カザミネの様だな。
「おお、アースか、引退したと噂では聞いていたが」
そう言えばレイジとこうして直接会うのも久々だったな。
「止めてはいないよ、まあ他のプレイヤーとかかわりを持たなかった時間がそれなりに長くあったのは確かだが」
クィーンやらグリーン・ドラゴンやら色々とあったからなぁ。 ドラゴンさんは丼になりましたが。
「そうだったのですか。 今日はよろしくお願いします」
と、こちらはカザミネの挨拶。
「こちらこそ。 それはそうと、武器を大太刀に変えたんだな」
カザミネの使用する武器はバスタードソードから大太刀に変わっていた。 やはり刀に変更したんだな。
「ええ、予想とは異なってしまいましたが、やはり刀を使いたかったので」
名前からもそれは予想できた……実装されてよかったな。
「じゃ、早速行こうぜ。 どうも噂のネームドを狩ることを目的としたPTが、俺達以外にもずいぶんいるようだしな」
ツヴァイが音頭をとり、PTを組んだ後に林へと向かいだす。 その林へと向かう途中でエリザに声をかけられる。
「そう言えば……貴方の頭に止まっているその青いひよこみたいな子は一体何なのでしょうか?」
レイジやカザミネも「そういえば……」と注視してきた。
「そう言えば言っていなかったか、契約じゃなくて同行者として一緒に来てくれている妖精だよ。 契約じゃないから能力を見ることは出来ないし、命令も出来ない。 お願いは出来るが、それを聞いてくれないからと言って怒る事はできない」
ふーん……と、三者三様でピカーシャのひよこ状態を眺めている。 当のピカーシャはスヤスヤとお昼寝モードのようだ。
「寝てないか?」
レイジがボソッと言ってくるが「いざって時はちゃんとしてるから大丈夫だ」と言っておく。 レイジの相棒である土属性のハリネズミはなんとなくそわそわとしているようだ。 いや、レイジのハリネズミだけでなく、PTメンバーの妖精達がみんなそわそわしている様子だ。 これはお偉いさんが身分を偽って近くにいることに気がついてしまった一般社員の心情と言う奴だろうか?
「どうしたミリー、そんな険しい表情をしているのは珍しいな?」
普段はのほほんとしているはずのミリーが、妙に険しい表情をしてこっちを見ていた。
「え~? 険しい表情なんてしていませんよ~?」
普段のほわわん表情に戻るが……だからこそ先ほどの表情が気にかかる。 何か重大な問題でも見つけたのだろうか……? それとも自分の装備を見られていたのだろうか?
引っかかる部分はあるものの、雑談などをしながら歩く事で目的地の林に到達する。 久々に出会ったメンバーも居ることだし、色々と見せていただきますかね。
後編へ続く。
スキル
風震狩弓Lv15 蹴撃Lv46 遠視Lv60 製作の指先Lv83 小盾Lv14
隠蔽Lv41 身体能力強化lv63 義賊Lv37 上級鞭術Lv5
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv39 上級鍛冶Lv36 薬剤Lv43 上級料理Lv36
ExP 17
所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

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