暴走?
実体験込み。
(あっちは前衛募集、こっちはヒーラー募集、そっちは魔法使い募集……)
今、PT募集ウィンドウを眺めているのだが、今日はどういうわけか火力枠は完全に埋まっているようで、募集されてるのがタンカー役、ヒーラー役、補助にも動ける魔法使い役と、どのPTにも入れる様子が無い。 一日最大で2時間しか入れない自分にとって、このPT結成で時間が掛かり過ぎると何も出来なくなってしまうのだが……今日はとことんかみ合わない日らしい。
(だめだな、こりゃ。 こういう流れの時はPTに参加できないというのが今までの経験で分かる)
PT募集ウィンドウを閉じて考える。 選択肢はいくつかあるが……予定を変更して料理をやるか、鍛冶でちょっと試すか、ソロで狩りにいくかなのだが……。
(料理と鍛冶は止めておこう、こういう日は生産行動をやって上手くいったためしがない)
バイオリズムを完全に信じるわけではないが、そういう日は不思議とあるものだ。 過去の日記を見直しても、不思議と上手く行かない日の波長は偏ることが多い。 その精度は物欲センサー並といえば理解してもらえるかもしれない。 そうなると、狩りしかないのだが。
(う~ん)
悩みながら首をひねっていると、頭の上に乗っているピカーシャがパタパタ羽ばたきしながら目の前に下りてきて、こちらを見た後に町の外へゆっくりと飛んでいく。
「なんだ?」
ふわふわ羽ばたきながら町の外に向かっていくぴよこピカーシャ。 というより、ひよこ形態でも空を飛べたのか……でも、ひよこが小さく羽ばたきながら空を飛んでいるって絵はシュールだな……可愛いだけに妙な気分にさせられる。 こういう部分はファンタジーだから、で片付けるほうが色々精神的によさそうだ。
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街から出たピカーシャはぴよこ状態を解除し、本来のサイズに戻り、体を屈めた。 これは乗って、のサインなので素直にピカーシャに乗る。 自分が乗ったことを確認すると、ピカーシャは立ち上がり、てこてこと林に向かって歩く。
ピカーシャに乗ったまま、林に到着したのだがピカーシャはそのまま自分を下ろさず突き進む。 ピカーシャの考えが分からないが、こういう日は従ったほうが多分いい結果をもたらすだろう。 そう言えばこの辺の木の質も後で調べておかなければ……木工に使えるかもしれない。
と、〈危険察知〉にモンスターの反応が。 そろそろピカーシャを止めないと。
「ピカーシャ、前方にモンスターがいるからそろそろ……」
自分を下ろして、と続けるつもりだった。 ところか、その自分の声を聞いた途端ピカーシャは……
「ぴゅういいいいいいい~!!♪♪」
と大声で鳴いたかと思うと、前方に向かって突然高速で突進を始めたのだ。
「え、おい、どうしたんだ!?」
自分の慌てた声も聞こえていないかの様に、どどどどどっと突進し続けるピカーシャ。 と、その突進していく先にゴブリンPTの団体様が目に入ってきた。
「ピカーシャ、前、前!!」
注意を呼びかけるが、それも無視してピカーシャはゴブリンのPTに自分を乗せたまま突っ込んだ。 そうだな、ボーリングの玉をピカーシャ、ピンをゴブリンに見立てて欲しい。 そんな感じで突っ込んで……弾き飛ばしたのだ。 ボーリング場だったら、非常にいいストライクの音がしただろう。
「ぴゅい!」
それだけに留まらず、倒れこんだゴブリンを足でむんずと捕まえて、他のゴブリンめがけてブン投げてボール代わりにし、追撃をするように攻撃を始めた。 こうなっては仕方がないので、近場のゴブリンはピカーシャに任せて遠くに吹き飛ばされていったゴブリン達を、ピカーシャの背中から狙撃していく。 ピカーシャも背中のやわらかさを立ち上がれるぐらいの硬さにしてくれているので、立ち上がって弓を射る事が出来ている。
ものの数十秒でゴブリンの8匹PTは全滅した。 戦闘ではなく、これは蹂躙といったほうが正しいだろう。 ピカーシャが強いとは分かっていたのだが……もしかして、ずーっとぴよこ状態に押し込めていたからストレスが極度に溜まったのかも知れない。
それを裏付けるように、自分がピカーシャの背中に座り込んだら、再びてこてこ歩き出すピカーシャ。 自分が〈危険察知〉でモンスターを発見すると、再び突進→ストライク! 後は蹂躙&狙撃。 ゴブリンどころか、オークすらお手玉する有様で、それを続けて1時間もたつと、ゴブリンやオークがこちらを見つけると大慌てで回れ右をして逃げ出す始末。
それでもピカーシャは止まらない。 サーチ&デストロイと言う言葉が頭にふよふよと浮かぶ。 逃げ出したオークたちに容赦なく突進し派手に吹き飛ばす。 つつく、踏みつける、ブン投げる、氷魔法でぶち抜く……キリングマシーンと化した今日のピカーシャは止まらない、止められない。
ログアウト直前に林から出てきた時には、ドロップしたグローだけで10万を超えていた。 乾いた笑いしか出せなかった自分をどうか責めないで欲しい。 ピカーシャは満足そうにぴよこ状態に戻っていた。 絶対ピカーシャを怒らせないようにしよう、そう誓った。
それから蛇足だが、この日のことは掲示板に、「青い毛玉のユニークモンスター、林を駆ける!」などと見出しつきで大騒ぎされる事になってしまったのだが……真実は言わぬが華である……あーあ。
真・ピカーシャ無双。
ぴよこ形態時の鬱憤を晴らしています、女性は怖い(苦笑)。
スキル
風震狩弓Lv15 ↑4UP 蹴撃Lv46 遠視Lv60 ↑1UP 製作の指先Lv78 小盾Lv14
隠蔽Lv41 身体能力強化lv63 ↑1UP 義賊Lv37 ↑2UP 上級鞭術Lv5
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv39 上級鍛冶Lv36 薬剤Lv43 上級料理Lv15
ExP 15
所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
同行者 青のピカーシャ(アクア) 飛行可能 騎乗可能 戦闘可能 魔法所持 ???の可能性

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