龍の国のフィールド
龍の国フィールドに初めて足を伸ばした。 最初に出迎えたのは町の側でのんびり草を食べつつ『モー』と鳴く牛。 軽く撫でてあげると気持ちよさそうに目を細める。 こんなのどかな風景だが、実装された昨日の夜は地獄絵図だったそうだ……。
事の始まりは、誰かがここでのんびりとしている牛をぶっ叩いた事から始まる。 牛→肉→ステーキ! と考えたらしく、肉を取って料理人に持ち込もうとしたらしい。 で、得物である片手剣で牛に斬りかかった……牛側は『モー!モー!』と鳴きながら逃げ出した。 その牛を追いかけながら、さっさと止めを刺そうと剣を振り上げると、背中にドシン! と衝撃が来た。 何だと思って振り向くとそこには数匹の怒った牛が。
そこからは襲われたプレイヤーを援護しようと誰かが手を出す→ 手を出したプレイヤーも襲われる→ 牛はいくら殴っても倒れず、どこにいたのかどんどん追いかけてくる牛が増えてゆくといった現象が発生したらしく、牛がめちゃくちゃいっぱいこのフィールドに現れて、手を出したプレイヤーが全員すっ転がるまで追い掛け回されたらしい。 とあるお姫様の名前を冠する伝説に出てきたニワトリを連想させられる。 あっちはエリアチェンジで逃げられるのだが。
まあ、それはさておき。 もう少し先に進むと林が見えてくる、その林の中にモンスターがうろついていると情報があった。 ゴブリンに加えて、このゲームでは初お目見えのオーク、そしてカメレオンリザードと言うトカゲもうろついているらしい。 カメレオンリザードはその名のごとく、ハイド能力を持っているので要注意とされている、が。
(ま、〈危険察知〉の前では、存在している事までは隠せない)
この盗賊スキルの能力〈危険察知〉の重要性は既に広く認知されており、PTに絶対一人使える人間を入れておくのはこのゲームの常識になりつつある。 習得や進化に大量のExPを使う必要があることも知られており、大事にされるらしい。 ツヴァイ達のギルド、ブルーカラーはノーラが盗賊もちだったな。
と、林をゆっくり進んでいると前方に反応が1つ。 弓を構え、反応があった方向を遠視スキルで注意深く観察する……居た、周りの風景に溶け込んでいるが、違和感を感じさせる物体が木に張り付いてごそごそ動いている、アイツがカメレオンリザードで間違いなさそうだ。 大きさは全長2.5mぐらいだろうか。 静かに弓を引き……矢を射る。
『オオーン……』
特殊能力が発動し、矢が竜の幻影に変化して、カメレオンリザードに喰らい付く。 リザードはまともに攻撃を受けた様子で、ぽとりと木から落下した。 そんなチャンスを逃す必要はないので、更に追撃で矢を放つ。 5本目の矢が突き刺さったところで、カメレオンリザードは力尽きた。 隠れる能力を重視しているためか、生命力や防御力はそれほどでもないようだ。 もしくは、ドラゴン・ボウの威力がかなりあるために、あっさり倒せたのかもしれないが。
倒した後、すぐに〈危険察知〉で周囲を確認する。 ソロである以上油断するとすぐにフルボッコにされてしまうので、こまめに周囲を警戒するのはもはや癖になりつつある。 今回は幸いこちらに気がついて近寄ってくる影は確認できない。 今のうちにカメレオンリザードの革などを回収する。
それからしばらく林の中を散策したが、戦闘は最初の一回以降、一度も行なっていない。 理由は見つかるモンスターが、全て団体様ばかりだったからだ。 ゴブリンたちも鎧に盾、槍に杖など、1つのPTを築いて行動しているのが当たり前だったし、オークともなると、図体がでかいだけではなく、扱っている武具もその体に合わせて大きい物になっているため、リーチや威力が恐ろしい。 あんな連中にソロで喧嘩を売るつもりは無い……。 遠視スキルのお陰で、遠くから装備を確認できるのは非常にありがたいが、そろそろソロをメインにする行動には限界が近いのかも知れないという事実も痛感する……ソロにこだわりすぎて、ピカーシャを盾役にするのも嫌だし……難しい所だ。
特にこのゲームのオークは初めて見たが、アレは侮っちゃいけない相手だと理解できた。 ゲームによっては非常に弱い事も多いオークだが、このワンモアではその考えは完全に捨てたほうが良さそうだ。 しっかりと武器や防具を装備し、PTを組んで歩いているあの様子から、プレイヤー側と比べても変わらない戦力を持っていると考える方が無難だ。 妖精国のウォーゴブリンズも厄介だったが、それ以上か。
(とりあえずの偵察、情報確認は取れたし引き上げるか……道理でPT募集が活発なわけだな)
掲示板にも、決まった時間に組める固有PTメンバー募集と言う書き込みが最近は特に多かった。 その理由は、ここに来る前の殺人系モンスターだけでなく、龍の国はPT行動を前提として行動すべきだという情報が流れたと考えられる。 モンスター達に気が付かれない様に〈盗賊の歩方〉で静かに林を立ち去る……移動にも便利な盗賊スキル、先行投資が間違っていなかったのは嬉しいところだ。
一が武に戻ってくると、PT募集の人達が声を出している。 あの林で戦うならPTは必須だな、明日からはPTを組んであの林の戦闘に挑戦してみよう。
ログアウトまでの残りの時間は、一が武のお店を見て回った。 調味料として、醤油に味噌、みりんなどを購入、食材店では米を購入した。 これでどんぶり物を作ることが出来る。 まあその研究も明日以降に回すつもりだが……今から始めると間違いなく時間を忘れる。
後は屋台の料理を買い込み、ピカーシャと自分で一緒に食べる。 今日はおでんをチョイスしてみた。 出汁が良く具にしみており、なかなかにおいしい。 ピカーシャも気に入ったようだ。
おでんを食べ終わったらログアウトするために宿屋へ向かう。 龍の国では、宿屋もベッドではなく布団で、布団を敷く場所などは畳が敷かれているという凝った造りになっている。 畳に座ると落ち着くのは日本人だからだろうか? ログアウトのために布団にもぐりこむと、ピカーシャも布団の中にもぐりこんで来る。 そんなピカーシャを眺めつつログアウトした。
とりあえず序盤です。
それから、ピカーシャを酷使する方向にはしない予定です。
スキル
風震狩弓Lv11 ↑1UP 蹴撃Lv46 遠視Lv59 ↑3UP 製作の指先Lv78 小盾Lv14
隠蔽Lv41 身体能力強化lv62 ↑1UP 義賊Lv35 ↑2UP 上級鞭術Lv5
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv39 上級鍛冶Lv36 薬剤Lv43 上級料理Lv15
ExP 15
所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
同行者 青のピカーシャ(アクア) 飛行可能 騎乗可能 戦闘可能 魔法所持

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