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とあるおっさんのVRMMO活動記 作者:椎名ほわほわ

2人PT+おまけが1人

 龍王様の挨拶が終わったので、一旦ファストに帰還して準備をした後に、今はワイルドベアが生息しているエリアにいる。 かつての強敵も今はトレーニング用のサンドバッグ代わりとか、自分もかなり外道だな、などと今更ながら感じる。

「で、ロナがいるのは約束したから当然なんだが……なんでお前がここにいる」

「そんな冷たい事いわんでくれぬかのう」

「相変わらずアース君は読めないよ……」

 この場には自分、ロナ、そしてなぜか龍ちゃんがいる。 龍姫なんて絶対呼ぶものか。 ちなみに龍ちゃんは自分と同じように外見を隠すように外套を纏っている……柄が派手だが。

「まあ何の理由もないわけではないがの……まずは今までの料理を食べた分の代金を払わなければの」

 そういって、龍ちゃんはお金を出してくる、6000グローか、まあ食べた量を考えれば妥当か。 その出されたお金は受け取っておく。

「確かに代金は受け取った、んじゃ邪魔はしないでくれよ……本当なら今すぐに帰って欲しいのだが」

 立場がはっきりした今、ほいほいうろつくなと……クィーンの二の舞はごめんだぞ。

「大人しく見ておるわ、城の外に出ておるだけでもかなりの気分転換になるからの」

 そういって木の上に登り枝に腰掛ける龍ちゃん、アレならまあいいか……。

「では、最初の釣りだけ弓を使うが、その後は蹴りだけで戦えばいいかな?」

 当初の目的のため、ロナに声をかけてロナ本人の確認を取る。 確認を取ったら、早速のんびりしているワイルドベアに向かって矢を放ったのだ、が……。

「あ」

 このタイミングでドラゴン・ボウの特殊能力である (ドラゴン・ソウル) & (ドラゴン・レギオン)が発動してしまい、ターゲットとなっていた哀れなワイルドベアは、小さい幻影のドラゴン4匹に噛み砕かれ、その上にそのうちの一匹が弱点を捉えていたようで、その場で何も出来ずに崩れ落ちて砕け散った。

「「……」」

「ほう」

 無言が自分とロナ、一言発したのが龍ちゃんである。 少しの間、静かな時間が流れる。 チチチチ……と小鳥の声が良く聞こえる。 ぴゅ~……と寝ぼけたピカーシャの鳴き声も聞こえた。

「──何今の? ねえ! 何今の!?」

 再起動したロナが自分の首元を掴んでがっくんがっくん揺すって来る。 揺すられた事で頭に乗っていたピカーシャが驚き、あわてて飛び降りていた。

「おま……まて……」

 舌を噛みそう、頭をがっくんがっくん揺すられる、現実でやられたら絶対むち打ち症になるぞこれは。 それからロナが落ち着きを取り戻すまでに数分かかった。

────────────────────────

「で、その弓の事はどうしても言えないんだね?」

 ロナが弓の説明を求めてくるがこれは全力で拒否した。

「当然だ、流石に知り合いだからといって重要な情報を撒き散らすわけには行かない、蹴りだって有用な事を知っているプレイヤーはいる筈だが、それを乗せたりしないのはあまり知られたくないからだろう」

 情報には大きな価値がある。 これを知らない人は存外に多い。 知は力なり、これはあらゆる場所に通用しうる真理である。

「蹴りスキルって……そんなに使えるの?」

 ロナの疑問に頷く事で肯定する。

「これからの戦いを見れば判るだろうな、まあ、仕切りなおして見てもらう」

 気を取り直して矢を放つ、今回は特殊能力は発動せずに飛んで行き、矢がワイルドベアに突き刺さる。

「グア!?」

 こっちに気がついたワイルドベアが突っ込んでくる事を確認して、弓を背中に背負う。

「じゃあ、今から蹴りだけであいつを倒す」

 体から少しだけ力を抜き緊張をほぐし、突進してくるワイルドベアとの間合いを図る。 ──今か。 突進をぎりぎりの間合いで回避し、わき腹に挨拶代わりの膝蹴りを入れる。

「グ!?」

 突進してきた勢いを殺せずに、ある程度すべるように急ブレーキをかけるワイルドベアの無防備なケツに、とび蹴りを入れてあげる。 蹴られたワイルドベアは怒り心頭とばかりに、振り返ってから立ち上がり、その強靭な腕をこちらに振り下ろすが……〈トライアングルシュート〉で幻影を残しながら飛びのき、ワイルドベアから見て左側のこめかみ部分にとび蹴りをつきたてる。

「え!? 蹴りのアーツ!?」

 ロナが驚いている。 蹴りにアーツがあるということは広まっていない。 知っている人はそれなりにいる筈なのだが、誰もWikiの蹴り項目を全く更新しない。 蹴りの有用さを知られたくないという蹴り系統使い同士が生み出した偶然の総意なのかどうか分からないが、そうといっても差し支えない妙な状況になっている。

 ワイルドベアは首を二、三回振り、蹴られた方向をを見ようとするが……そのとき自分は既に〈ハイパワーフルシュート〉のモーションに入っていた。 当然思いっきり蹴り上げられて、派手に空に吹き飛ぶワイルドベア。 ここからエリアルに行きたいが、〈大跳躍〉や〈フライ〉は蹴り技ではないので今回は使えない。 なので、今回はワイルドベアの落下予想地点に走り、〈エコーキック〉をチャージし始める。 〈エコーキック〉はチャージ、つまり溜める事によって攻撃力、エコーによる攻撃回数が増えるという特性がある。

 少しして空から落ちてきた、哀れなワイルドベアにしっかりと狙いを定めて……。

「おおらぁっ!」

 と気合をこめて〈エコーキック〉のフルチャージをぶち込んだ。 『ドゴン!』と最初の蹴りが入った後に、『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴガァン!』と見えない蹴りが打ち込まれる音が周りに響く。 そのまま受身も取れずに地面に落ちたワイルドベアの顔面に全力で何回も踏み付けを行う事で止めを刺した。 とりあえずはこんな物かな。

「…………」

「ほうほう、やるものじゃの」

 振り返ると、無言のロナと拍手している龍ちゃん。

「おーい、ロナさんや、生きとるかーい?」

 放心している様子のロナに近寄り、軽くほっぺたをぺちぺちと叩く。

「あ、うん、戻ってきた……って、なんであんなに戦えるスキルが全く広まってないの!?」

 ロナは戻ってきた途端に、興奮状態に入ったようだ。

「そう言われてもなぁ……あ、ロナ、お前も広めないでくれよ、蹴り使い同士による無言のお約束みたいな雰囲気が今はあるからな?」

 更新がないという所から予想してそんな感じかね、いつかは広まるにしても今はまだ広まって欲しくないと予想される。

「うん、これは燃えてきたよ……しっかり蹴りスキルを鍛えよう!」

 おおう、ロナの瞳に炎が見える。 こうして1人、蹴りスキルの使い手が増えましたとさ。
そしてロナちゃんは格闘家としての高みにまた一歩進んだとさ。

スキル

風震狩弓Lv10 蹴撃Lv46  ↑1UP 遠視Lv56 製作の指先Lv78 小盾Lv14
隠蔽Lv41 身体能力強化lv61 義賊Lv33 上級鞭術Lv5 
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)

控えスキル

木工Lv39 上級鍛冶Lv36 薬剤Lv43 上級料理Lv15

ExP 15

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

同行者 青のピカーシャ(アクア) 飛行可能 騎乗可能 戦闘可能 魔法所持
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