再会
龍の国実装が翌日に迫っていた。 ピカーシャの背中で目覚めた自分は、ピカーシャに再びひよこサイズになって貰い、東を目指す。 目的は蹴りと鞭のスキルを上げる事、それゆえにPTを組むことは諦め、ソロで向かおうとした……が。
「おい、もしかしてアースじゃないか?」
え? と掛けられた声に反応して振り向くと、そこにはツヴァイとミリーがいた。
「ツヴァイさんがそれっぽい人が居たと言っていましたが、本当にアースさんだ、お久しぶりです」
「お前、何時までウィスパーとメールを拒絶モードにしてるんだよ、ぜんぜん連絡取れないだろうが!」
と、いきなりご挨拶だ。
「久しぶりだな。 そういえば拒絶にチェック入れてたのをすっかり忘れていた」
本当にきれいに忘れていた、ここでチェックをはずす。
「今外した。 いやー、すっかり忘れていたよ」
そういって笑ったのだが。
「お前、引退したプレイヤー一覧に入ってるぞ……」
ツヴァイが呆れた表情を浮かべつつこちらに言ってくる。 詳しく聞くと、ある程度名の知れたプレイヤーが長く音信不通になると引退したと判断し、名前が挙がる晒しサイトがあるのだとか。
「そんなことになっていたか。 かえって好都合ではあるけどな」
着ている外套の乱れを正す。
「そういえばそんな頭まで隠す外套なんてありました?」
ミリーの質問に、妖精国のお店で買った一品だよ、と答えておく。 買いに行こうかななどとミリーは呟いた。
「まあそれはそうと、こうして久々に出会えたんだし、狩りに行かないか?」
ツヴァイのお誘い……だが。
「う、うーん、ちょっと目的が蹴りと鞭のスキル上げを狙っているんだ。 なので、弓による攻撃行動を一切使わないのだが……いいのか?」
それはまた……とツヴァイは一瞬あっけに取られる……が、気を取り直したようだ。
「なら前衛は2人……後衛を1人足せばいけるか」
そう言ってからツヴァイはウィスパーチャットを始める。 ツヴァイが喋っている間にミリーがこっちを見て質問してくる。
「そう言えば、アースさんの頭に止まっている青いひよこさんは何なのでしょうか?」
ぴゅぴゅ? と鳴くピカーシャ。 首をかしげている姿がイメージできる。
「同行してくれてる妖精だよ、契約じゃないから命令や能力を見ることなどは一切出来ないがね」
この返答にミリーは「そんな子もいるんですかー?」と首をかしげている。 そんな話をしているとウィスパーが終わったツヴァイが顔を上げた。
「ノーラとエリザが来る。 5人ならいけるだろう」
その名前に戦慄を覚える。
「え、エリザ……!?」
過去の出来事が頭に蘇る、死者の挑戦状での出来事が。 そんな狼狽してしまった自分にミリーが大丈夫ですよ、と言って来た。
「ちょう……いえいえ、お勉強は完了しました、新しいエリザちゃんですから大丈夫です」
──そうか、人格を破壊したか……何故か気がつくと自分は何故か両手を無意識に合わせていた。
それからしばらくして……ノーラとエリザが自分たちと合流した。
「アース君おひさー! 引退しちゃったのかと思ったよ!」
「以前は申し訳ありませんでした! この通りお詫びいたします」
相変わらず元気なノーラと、気持ち悪……いやいや、しおらしくなったエリザ。 まあ、角が立たないからその方がこちらとしても助かるのだが。
「あ、ああ、久しぶりだな。今日はよろしく頼む」
そんなこんなで集まった5人でPTを組み、狩場へと向かう。 ブルーカラーの面々も元気なようで、数名がメインウェポンスキルが5段階まで到達しているそうだ。 それにしても、不気味なほどエリザが大人しい。
【エリザ、一体あの後何があったんだ?】
どうしても気になるので、ウィスパーチャットで質問をしてみる。
【聞かないでくださいまし……色々と壊されましたので……】
悲痛な声でウィスパーが帰ってきた。
【そ、そうか。なら詳しく話を聞くのは止めよう、済まなかった】
【いえ……ありがとうございます……】
本当に一体何があったんだ……主犯がミリー、サポートがノーラって所か?
狩場について戦闘が始まったのだが、実に順調に狩が進む。タンカー役が不在なのでちょっと不安があったのだが、ツヴァイがその不安を綺麗に払拭してくれた。
ツヴァイはモンスターが振り下ろしてくる腕に対して両手剣で華麗に受け流し、生まれた隙にカウンターでモンスターに一閃。 そこから更に両手剣アーツを発動し追撃を仕掛け……その上にアーツ後の硬直をキャンセルして更にアーツで追撃をするという強烈な三連続コンボをモンスターにぶち込む。
コンボを受けたマーダーベアはその影響を受けているのか、ダウンして無防備な体を晒している。すかさず自分が鞭で〈拘束〉し、攻撃能力も奪いとり、その後はみんなでフルボッコと言うパターンが完成していた。
ある意味モンスターが哀れに見えるかもしれないが、使える物は何でも使うのが冒険者の基本である。自分たちは騎士ではないのだから……まあダウンして動けないモンスターにローキックやスタンプ、マッハ○○ふみをやっている自分は外道に写るかも知れんが。
お陰で蹴りや鞭スキルがものすごい勢いで上がっていく。 鞭はLv50を迎えたので、2段回目である上級鞭術に進化させる。 今後の進化選択肢にウィップソードが出てきたら、そちらに進化させたいところだ。 残念ながら蹴りのほうは50まで届かず3段階目への進化が叶わなかったが、〈エコーラッシュ〉に〈ハイパワーフルシュート〉の蹴撃アーツを獲得した。
エコーの方は、蹴りを当てるとそのダメージが複数回繰り返されるというアーツで、格闘ゲームで言う連打技のような感じだ。 もう1つのハイパワーの方は相手をよほどの体格差が無い限り空中に打ち上げることが出来るアーツのようだ。 つまり、空中コンボに持ち込める始動技と考えてもらえばいいだろう。 これでまた面白いことが出来そうな感じだ。
1時間半ほどの狩りの時間が終わり、今後は連絡を取り合う事とツヴァイ達に念をしっかり押された後に別れる。 寝る前に早速新しいアーツの感触を試すことにして移動。 練習台はおなじみのワイルドベアさんである。 数匹と戦って、アーツの感触をしっかりと確かめた後に、いよいよ本番に入る。
まずはいつもどおりに弓矢の攻撃で1匹釣る、近寄ってくるまで矢を射る事で弱らせてから突進を回避してシールドバッシュ! 勢いを止めたところに〈ハイパワーフルシュート〉でお空の旅へご案内し、すぐさま〈大跳躍〉で飛び上がり〈フライ〉で空中制御を行なう。
空中に持ち込んだら数回チェーンウィップで滅多打ちにしてから〈エコーラッシュ〉をブチ当てて、その後に踵落としで地面に向かって叩きつけるように蹴る。 落下して行くワイルドベアに向かって空中から〈アローツイスター〉を発動し、矢を射る。 ドサッと音を立てて地面に落下したワイルドベアに矢が回転しながら突き刺さり、〈フライ〉の効果を切って落下してきた自分が、倒れているワイルドベアを遠慮なく踏みつけて止めを刺した。
(OK、問題なく動けるしコンボダメージも申し分ない、接近戦になってもこのコンボで対処できる)
実に満足する結果を得られ、ファストに戻ってログアウトする、翌日はいよいよ龍の国だ。
ツヴァイは武器攻撃特化をしていますので、その能力を使っています。
MP消費は非常に激しいですが爆発力は高いです。
スキル
風震狩弓Lv10 蹴撃Lv45 ↑23UP 遠視Lv56 製作の指先Lv78 小盾Lv14 ↑5UP
隠蔽Lv41 身体能力強化lv61 ↑2UP 義賊Lv33 上級鞭術Lv5 NEW!
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv39 上級鍛冶Lv36 薬剤Lv43 上級料理Lv15
ExP 15
所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
同行者 青のピカーシャ(アクア) 飛行可能 騎乗可能 戦闘可能 魔法所持

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