特化者の力
午前中に色々ありまして上げれませんでした。
殺人シリーズモンスターを今日もPTプレイで相手にしている、ここ数日における自分のパターンだ。 弓も風塵狩弓から、風震狩弓にレベルアップしていた。 戦闘スキルがガンガン上がっているその反面、新しい弓の製作は全くはかどらない、いろんな情報を集めても、いまいち新しい弓の完成形が見えてこないのだ。 そのうえ、ドラゴンボーン・インゴットの性質上今までの作り方ではどうやっても弓に仕立て上げることが難しい。
話をPT戦闘に戻すと、今のPT編成は、タンカー2人、両手剣のアタッカー1人、弓のアタッカー(自分)1人、魔法使い2人の6人PTだ。 タンカーが二人いるだけあってとても安定しており、何の問題もなく順調にスキル上げも進み、そのまま静かに解散までの時間を過ごせるはずだった。
ちなみに、PTで狩をするには1時間から1時間半ぐらいでいったん安全地帯まで引き上げるのが、最近の基本のようだ。 トイレとかのリアル都合もあるが、目の前にモンスターを見据えて戦うのは慣れても神経を削るものであり、1時間半以上やっていると判断ミスが目立ちだすというデータが上がってきているからだ。
まあ、それはともかく、自分は頭の上にヒヨコピカーシャを乗せて戦っていたのだが、不意にピカーシャが「ぴゅぴゅ!?」と騒ぎ出した。 「どうした?」とピカーシャに聞いてみるが、ピカーシャは静かにするどころか、一層騒がしく騒ぎ出す。 まるで危険が迫っているかのような騒ぎっぷりに、少し弓をモンスターに射るのを中止し、〈危険察知〉に集中する。 戦闘中でも〈危険察知〉のレーダー範囲の探知距離がそのままなんてことはなく、どうしても探知範囲は狭くなってしまう。
そして、〈危険察知〉をして、息を呑む。 殺人シリーズのモンスターが数匹ずつ固まってこちら側に向かってきていたのだ。 この動きは明らかにモンスターの自発的行動ではない、周りで戦っているほかのPTに向けて、自分はとっさに大声で叫んだ。
「近くにいる人に警告! MPKが3人ぐらい、殺人シリーズモンスターをこの近辺に引っ張ってきている!」
MPK。 モンスタープレイヤーキラー。 モンスターを他のプレイヤーの場所まで引っ張り込み、〈隠蔽〉などの姿を隠せるスキルでモンスターから姿を消す。 そうすると目標を見失ったモンスターは、近くにいる他のプレイヤーをターゲットに再設定して襲い掛かる。 そうして多数のモンスターの不意打ちを故意にけしかける事で他のプレイヤーを殺す手段だ。 個人的に1番嫌いな行為だ、何せ自分の手を一切汚さずに、他人を殺すのだからある意味1番のクズと言って差し支えないだろう。
この自分の声で、近くで戦っている他のPTにも焦りが生まれる。 だが他のPTはまだいい、もう少しで今戦っているモンスターを倒せそうだ。 それに比べてこちらの戦っているマーダーサイスはさっき戦い始めたばかりでまだまだ倒れそうにない。 これはかなりまずい状況だ。
「ち、ロック、全力でコイツを潰すぞ!」
自分の契約妖精に声をかけて、守りから攻めに転じたタンカーの1人。
「ならターゲットは俺が受け持つ、さっさとコイツを倒してMPKから逃げるぞ!」
もう1人のタンカーはより防御を固める。 もう1人のタンカーの横にいた契約妖精も更に防御行為を重視し始めている。 タンカー二人が素早く行動を起こした事で攻めの形が出来上がり、自分達のPTメンバーは猛ラッシュをマーダーサイスに仕掛け始める。 攻めを重視するとどうしても隙が増えるし、モンスターのコントロールも狂いやすくなる、そのためかなり危険なのだが、もたもたしてMPKの連れてきたモンスターに襲い掛かられて死ぬのは避けたいのだ。
もう自分も〈危険察知〉のレーダーを見る余裕もなく、一刻も早く倒すために矢を射る。 だが構えずに連射する矢などマーダーサイスの装甲には通用しないし、焦りながらもしっかり弓を引かねばならないという難しい事を要求されている。 だが、この自分を含むPTメンバーの努力は残念ながら報われなかった。
PTの前を何かが横切り、その横切った物体の気配が岩陰に隠れると同時に希薄になっていく。 この感覚は〈隠蔽〉だ、そうしてその何か……MPKが隠れた後現れたのは唸り声を上げつつ、こちらに突っ込んでくる2匹のマーダーベアと1匹のマーダーホーンだった。 そしてチラッとみた所、他のPTにも2匹づつ横からモンスターが襲い掛かっていくのが見えた。
「ちょっと!? これは洒落にならないわよ!?」
魔法使いの女性の一人が声を張り上げつつとっさに自分の妖精に命じて〈ファイア・ウォール〉を出現させた。 この炎の壁によって襲いかかろうとした殺人シリーズモンスター達は足をいったん止めたようだ。 ──こういう時は即断即決、迷いは死に繋がる。 自分はとっさに声を張り上げる。
「1番弱っているサイスを魔法使いのお二人が即攻で倒す! タンカーさんは、熊を抑えて! 両手剣使いの人はそのタンカーさんのサポート! サイは自分が時間を稼ぐ!」
「弓があのサイ相手の盾役なんて無謀だ!」
「言い争ってる時間はない! 何とか抑えてみせるから、そっちのモンスターを早めに始末して加勢してくれ!」
炎の壁が消える前の作戦時間とも言えない僅かな時間だが、強引に言い捨てて飛び出す準備をする。 ともかく、なんとかここを凌がなければならない。 ここまでモンスターに近寄られた状況になると、逃げるという手段は却下せざるをえない。 基本的にベアとホーンが基本的なプレイヤーより足が速いから、魔法使いの二人が間違いなく捕まる。 その後はタンカーも捕まり、逃げ出せるのは自分と両手剣の2人だけだろう。 そんな見捨てる行為はプレイヤー間の信用に大きく関る。
そうして、炎の壁が消えそうになってきた所に声が聞こえてきた。
「うーん、とっておきだから人前で使いたくなかったんだけど。 ま、死者を出すよりはましかな?」
と、もう1人居た魔法使いの少女がポツリと呟いたかと思うと、呪文を唱え始める……のだが、やけに呪文が長い。 それに呪文に火の魔法と土の魔法が混ざっているような? 妙な呪文詠唱なのだ。
「とっておきなんだから、しっかり燃えてよね~? 〈マッド・フレイム!〉」
〈マッド・フレイム〉なんて魔法はワンモアにないぞ? そう一瞬自分は疑問を持ったのだが……。
「んなっ!? 何だあの炎!?」
驚きの声を上げたのは両手剣使いのプレイヤーだ。 炎の壁が消えたところに、MPKによってつれてこられた殺人シリーズモンスターに向かって、魔法使いの少女が放った魔法は着弾して爆発を起こした後に、マグマのような感じでモンスターに襲い掛かったのだ。 どろどろに溶けたマグマを連想させるその炎はモンスターを絡めとりながら燃やしている。
「アレならモンスター達は動けないし、炎さんはしっかり捕まえたモンスターを燃やしてくれるよ~、さ、そこのサイスを今のうちにちゃちゃっと倒しちゃおうか」
魔法を放った本人は驚いて硬直しているPTメンバーにそう声をかけて、MPKに押し付けられる前に戦っていたマーダーサイスに攻撃を再開する。 唯一魔法を見ていなかったタンカー以外のPTメンバーもこの声で再起動し、サイスへの攻撃を再開した。 落ち着きを取り戻して確実にサイスを屠った後に、なお燃えながら絡め取られる事で動けなかった殺人シリーズモンスターも遠距離攻撃で排除される事になった。
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「あの魔法は一体なんなんだ?」
あの後に、他PTを襲っていた殺人シリーズモンスターも協力し合って全滅させた後に、ファストに帰り手に入れたアイテムを分配した後にポツリと両手剣使いが言葉を漏らす。
「ん~? ひ・み・つ♪」
と、質問をされた少女は『ドヤ顔』のような表情を浮かべる。 が、そこにははっきりと質問は受け付けません、の意思表示があった。
「同じ魔法使いとしては非常に気になる所なのよね……」
と、魔法使いの女性。 こちらは情報を少しでも引き出したくてうずうずしている様子だ。 コリャ長くなりそうだな、逃げよう。
「そういう情報は秘密にする物だと思うが……くどく聞くものではないだろう。 分配も終わったし、これで失礼するよ」
そういって席を立つ自分。 そういう能力は自分で見つけ出したほうが面白い、そう考える派なので少しだけ魔法使いの少女に助け舟を出してから立ち去る。 いい加減龍の国実装が近いのに弓をどうしようか……。 自分にとってはそちらのほうが問題だなぁ。
特化したプレイヤーは、特化したプレイヤー限定の能力を発動できます。
詳しい内容はまだ公言しませんけど。
それにその能力を発動できるかどうかはその人しだいでもあります。
能力を獲るチャンスは公平にありますが、それを発動できる平等さはありません。
スキル
風震狩弓Lv10 NEW! 蹴撃Lv22 遠視Lv56 ↑3UP 製作の指先Lv75 小盾Lv9
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv57 ↑2UP 義賊Lv33 ↑2UP 鞭術Lv38
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv39 上級鍛冶Lv30 薬剤Lv43 上級料理Lv15
ExP 12
所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
同行者 青のピカーシャ(アクア) 飛行可能 騎乗可能 戦闘可能 魔法所持

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