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とあるおっさんのVRMMO活動記 作者:椎名ほわほわ

製作……

 ドラゴンボーン・インゴットの数が揃ってきた翌日、いよいよ弓の形に仕立て上げる事を開始する。 最初は複雑にせず、基本的な形状を製作し、具合を確かめ、試作品として運用して問題を探す、そういう予定を当初は立てていたのだが……。

(5つ製作して、5つとも使い物にならないとは……予定外だ)

 しならないのである。 これは弓として致命的というより、弓の形をしただけのゴミとしかいいようが無い。 5張中3張がびくともせず、残り2張りはある程度はしなるのだがそのしなりの具合が満足いく具合とは言えず、結果から言えば間違いなく大失敗だろう。

(今までの考え方で製作した事が失敗に繋がってしまった、もっと用途にあわせたドラゴンボーンから作ったインゴットを、見極めることが出来るプレイヤースキルとしての目が必要だ)

 逆に言えば、製作に成功すれば間違いなく一級品になるのは間違いないはずだ。 ただ、問題は鉄弓となると、ネットを調べてもかなり情報が少なく、想像をすること自体もかなり難しいのだ。 結局手探りで自分なりの結果と、ゲームとしての特性に期待するしかないのかもしれない。

「ぴゅ」

 考え事をして黙りこくっていた自分を、ピカーシャは落ち込んでいると見たのか、一鳴きしてきた様子で、それに大丈夫だよと答えて軽く撫でる。 ふわふわで大きい時とは違ったもふもふ感がある。

「逆転の発想で、硬い部分を盾に使えばいいんだな」

 あのグリーン・ドラゴンとの戦いで己の仕事を全うし、散ったライトメタルの盾の後任も作る必要があるのだからちょうど良いだろう。 硬い3張の弓を再び溶鉱炉に入れて熱して取り出し、再びインゴットの形に整えていく最中に気がついた。

(インゴットの色が……無色透明に透き通っていく……クリスタルみたいだ)

 最初のドラゴンボーンは白い骨だったが、一度目の加工ではやや薄黒いインゴットへと変わった。 なのに再加工したら、今度は水晶のように透き通った無色のインゴットが出来上ってゆく。 こんな変化、鉱石では絶対にありえない。

(ドラゴンの骨だからなのか? 何から何まで規格外すぎる、それこのインゴット、反射ダメージが最初の黒いインゴットを製作してる時より遥かに痛い……)

 熱いうちにインゴット製作を完成させないと本当のゴミとなって完全消滅してしまうので、ポーションと、ピカーシャの治療のバックアップを受けて何とか叩ききって完成させる。 このクリスタル・ドラゴン・インゴットで盾を作ればかなり堅牢な防御力を持たせることが出来るだろう。

 痺れる手の回復をゆっくりと待ちながら、無意識に残った2張の弓に目をやる。 もしかすると、この多少はしなった部分だけを切り取って、再加工すればまたインゴットの色が変わるのではないだろうか? 十分に休憩して、自分とピカーシャの回復を待ってから、残った2張の弓の形をした物体から、しなりが良い部分だけを何とか分離して、溶鉱炉に突っ込む。

 そしてインゴットに変化させると……こちらは透明度がある黒いインゴットになった。 言い方は妙なのだが、インゴットの先に指を置いて光をあてると、ほんの僅かだが指が見えている。 本当にドラゴンの骨とやらは訳が分からない……。 こちらはインゴットにする時の反射ダメージは殆ど無かった。

 この透き通る黒いインゴットは弓を作るには量が全然足りないので、今は先にスモールシールドを作る事にした。 形は5角形のカイトシールドをベースにし、変な仕込みは一切入れないことにする。 変に突起とかつけなくても、このインゴット自体が十分な鈍器であり、このインゴットで作った盾で〈シールドバッシュ〉をすればそれで十分凶器になる……殴られる自分を想像したらスプラッターな光景が頭に浮かんでしまった。

「痛い……絶対このインゴットでのアイテム量産なんかやらんぞ……」

 加工途中でスミスハンマーを振るう手に、1回ごとに痺れと痛みを返してくるクリスタル・ドラゴン・インゴット。 ポーションをがぶ飲みし、ピカーシャに回復してもらい、完成までの経費だけで大赤字間違い無しだ。 スモールシールドでこれなのだ、このクリスタル・ドラゴン・インゴットでラージシールドを作ってくれなんて万が一言われたら、その瞬間依頼人を反射的にぶん殴ってしまいそうだ。

 いい加減腕も痛くなり、手持ちのポーションも7割消費し、ピカーシャもばてて頭の上でへたり込んだ所でようやく盾が完成した。

 ドラゴン・クリスタルシールド

 スモールシールド Def+35 左右装備可能 製作評価5

 特殊能力(シールド攻撃アーツ威力増加・強) (防御成功時、ダメージの一部を反射・中) (魔法・属性防御力増加・弱) 

 特殊能力三つと来たか……シールド攻撃アーツは〈シールドバッシュ〉系統だな……反射能力に、魔法に対する耐性もあるのは心強い話だ。 まあこれぐらいの性能が出てくれないと本当に大赤字だった所なのだが……明日は薬草を探してポーションを製作しないといけない。

 早速右腕に装備する、左腕でもいいのかもしれないが、もう今の自分は右腕に盾を装備しないとしっくり来ない体になってしまった様だ。 それにしてもこの性能で評価5か、これで評価10だったら化け物盾になるんじゃないだろうか。

 そしてその日はピカーシャにご飯をたくさん食べさせてあげてからログアウトした。 ピカーシャへの負担がかなり行ってしまっているのは問題点だ、その点も何とかしないといけない。
弓より先に盾が出来てしまいました。

スキル

風塵狩弓Lv23 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv75 ↑5UP 小盾Lv9
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv50 ↑2UP 義賊Lv28 鞭術Lv38 
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)

控えスキル

木工Lv39 上級鍛冶Lv30 ↑8UP 薬剤Lv43 上級料理Lv14 ↑1UP

ExP 13

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

同行者 青のピカーシャ(アクア) 飛行可能 騎乗可能 戦闘可能 魔法所持
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