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とあるおっさんのVRMMO活動記 作者:椎名ほわほわ

戦闘に移る前に

「がっ!?」

「ぴゅぴゅ!?」

 スミスハンマーが自分の右手からすべり落ち、地面に落下してカランと乾いた音をたてた。 ファストに帰還して二日目、〈サクリファイス・ボウ〉による弱体も収まったため、早速物は試しで鍛冶場に入り、ドラゴンボーンを加工しようとしたのだが……。

(加工に対して反射ダメージだと!? 死して骨になってもなおドラゴンは強いままなのか……)

 ドラゴンボーンに対して、記念すべき叩き初めとしてスミスハンマーを十分に熱したドラゴンボーンに振り下ろしたら、その反動がこちら側に反射されて右手にかなりのダメージを与えてきた。 HPバーを見ても1割ほど減っている。

 そう確認した時、右手にうっすらと青いオーラが展開されていた、そのオーラは痛みを治療してくれている……こんなことができるのは。

「ありがとう、ピカーシャ」

「ぴゅぴゅ♪」

 頭に乗っかっているピカーシャの水魔法か何かだろう、お陰で右手はすぐに振り回せるようになったのだが……ドラゴンボーンにこんな特性があるとは予想外だった。 やり方を間違えているのだろうか? それともドワーフの鍛冶屋さんはその腕でこの反射ダメージを無力化しているのだろうか?

「ピカーシャ、すまないが、治療をまたお願い」

「ぴゅ」

 覚悟を決めて、再びドラゴンボーンを叩き始める。 ただし最小の力でコンコンとである。 当然入る力も少ないし、加工するにも時間が掛かってしまうが、目一杯振り下ろせばまた腕を大きく痛める。 ここは根気と持久戦でこつこつ加工していくしかない。 右手にはピカーシャが展開してくれている青い治癒のオーラが纏わりついている。

 そして40分ぐらいが経過。 ようやく目の前には1つのドラゴンボーンから、ドラゴンボーン・インゴットを3つ生み出すことに成功した。 1つの骨からインゴット3つ分が生産できるようだ、だが……。

「これは、厳しいな……量産は材料の面でも、加工面でも難しいな」

「ぴゅ~……」

 ピカーシャもばてばてだ。 何せ3つのインゴットを仕上げるまでずーっと魔法を行使し続けてくれたのだ。 相当量のMPを消費したはずである。 自分は自分で、1回叩くごとに受けるダメージの不快感と戦い続けなければならなかった、これはリアルプレイヤー側の精神を削るな。

「ピカーシャ、連続でやるのはやめとこうな……続きは明日だ……」

「ぴゅぴゅ」

 そうして手をさすりつつ、鍛冶場から引き上げようとしたのだが。

「なあ、さっき叩いてたヤツの素材はなんだったんだ? かなり苦労していたようだが」

 と、目ざとい同業者から目をつけられていたらしく、質問が飛んでくる。

「悪いが秘密だ、入手したのは偶然であって、数が取れない以上情報を出すわけには行かない、鍛冶屋同士、全ての情報を言うわけには行かない、そこは分かるだろう?」

 そういえば向こうも黙るしかない。 試行錯誤でよい良い武器を作る鍛冶屋業界も常に激しい戦争状態だ。 耐久力、攻撃力、重量、特殊能力、こういったパーツの組み合わせは各個人の秘密であり、それぞれが自力で探し出す物と言う考えは以前と全く変わっていない。

「むう、面白そうな素材だと思ったんだがな」

「その点だけは答えておくよ、とんでもない難物だった」

 そう受け答えて立ち去り、鍛冶スキルを確認すると、Lvが50になっていた。 即座に進化させて上級鍛冶Lv1にする。 ExPを5消費したがここは上げないとドラゴンボーンの加工が進まないだろう、何せまだまだ山ほどあるのだから。

────────────────────────

 翌日、ログインしてまずはピカーシャに挨拶。 その後街に繰り出し、鍛冶の生産セットの上級者用を購入する。 これでスミスハンマーを始めとした生産道具が一新される、これでドラゴンボーンとの格闘がやりやすくなると良いのだが。

 ピカーシャを頭に載せてこの前の武器屋が言っていた街の東を目指す。 なるほど、確かに道が開けている、以前来た時はなかったはずだが……。 道の先に歩を進めると、PTを組んで戦っているプレイヤーがたくさん居た。 スキル上げのメッカになっているのは間違いが無い様で、さまざまなプレイヤーが剣や槍を振るい、魔法を撃ち、矢を放っていた。

 こんな中にピカーシャを本来の体躯に戻して戦うのは邪魔になるな……。 目立つのはまあいいが、邪魔になるのは非常にまずい、今日は引き上げて、後日PTに入れてもらって戦うのがよさそうだろう、今日は撤収だ、この場の雰囲気が分かっただけで十分としよう。

 そうなればやることは鍛冶しかない、今日もトンカントンカンとドラゴンボーンを叩く作業である。 反射ダメージが昨日に比べて、ずいぶんと少なくなった、中級のスミスハンマーでは相当無理をしていたらしい、大きく改善されている。 それでもちくちくとこちらのHPを削ってくる反射ダメージがあるので、やはりフルスイングでスミスハンマーを振り下ろすことは出来ない。 途中でちょくちょくポーションをのみ、ピカーシャにはMP回復ポーションを飲ませている。

「ふい~」

 なんとかまた1つのドラゴンボーンから3つのドラゴンボーン・インゴットを生産。 時間を計っていたが、かかった時間は35分、やはり道具がよくなった分時間的な意味でも改善されている。 自分の疲労もかなり少なくて済んでいるな。 上級鍛冶スキルLvの方は12まで上がっている、相当の高レベル素材を引っ叩いているということなんだろう、そうでなければこの異常な上がり方が説明できない。

 出来上がった6つのドラゴン・ボーンインゴットを並べ、頭の中でX弓の新しい設計図を描いてみる、木材でなくなったため、今度は中央の支えなど必要ないだろうから、今度は文字通りのX弓が作れるだろう……だが、その前にこのインゴットから弓を1張作ってみなければいけない。 そうなると問題は、今の自分の力量で作れるのだろうか? と言うことになる。

 木材でも金属でもないので、未知への挑戦となる。 そうなると、もう少しインゴットを量産して、スキル上げをかねて予備を作るほうがいいか……そう考えて、更に2日かけてドラゴンボーン・インゴットを量産することにした。 失敗がかさむだろうし、色々手を加えたくもなるだろう、そういったことを見越して、反射ダメージを堪えつつスミスハンマーを振り下ろし続けた。
生産の一歩手前の材料加工しか行きませんでした。

スキル

風塵狩弓Lv23 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv70 ↑UP 小盾Lv9
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv48 ↑UP 義賊Lv28 鞭術Lv38 
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)

控えスキル

木工Lv39 上級鍛冶Lv22 NEW! 薬剤Lv43 上級料理Lv13

ExP 8

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

同行者 青のピカーシャ(アクア) 飛行可能 騎乗可能 戦闘可能 魔法所持
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