対談
明けて翌日のログイン、さっさと妖精の城に行っておかねばならない。
「気が重いが、面倒なことは早めに処理しておかないと」
既に自分の行動はゲームプレイとは言えないような気がするのだが、もう1つの人生を体験すると言う意味では正しいわけで……ううむ。 それと体のほうだが、昨日に比べてかなり楽になっていた。 歩く事ぐらいなら、もう問題なく動ける。
体の具合を確かめつつ、宿屋の外に出ると……ピカーシャが外にででんと待機していた。
「ぴゅい」
せっかくなので乗せてもらう。 そろそろピカーシャも乗り納めかな……てくてくとピカーシャが歩く、ピカーシャは体が大きい分歩幅も広いので移動が早い。 妖精の城に到着するのに大して時間は必要としなかった。
「失礼、指名手配されているアースだが、女王陛下にお取次ぎを願いたい」
ピカーシャから降りつつ、門番の方にそう告げると、慌てて城の中に入っていく。 ピカーシャの毛繕いをしながら待つこと数分、クィーンの側近の1人に案内されるのでついて行く、ピカーシャとはお別れ。
「申し訳ありませんが、外での対談となります。 理由はドラゴン族の方と一緒にお話をしていただきたいので……」
と言うことで、外での話となるようだ。 まあドラゴンは妖精城の中には入れないから仕方が無いのか……それにしても何故ドラゴンと一緒に対談をしなきゃならないのだ?
案内をしてくれていた側近の方に「ここから先は、私も入ることをを許されておりません結界がございます」と説明され、一歩踏み込む。 ゾワッとした感覚が体を巡った後、その目の前にクィーンと、レッド・ドラゴンが居た、結界に入らないと見えないし声も聞こえないと言うタイプか。
「そちらから出向いていただき、ありがとうございます」
そういって頭を下げるクィーン。 その後色々詫びの言葉をかけられたのだが……その時、レッド・ドラゴンから念話が掛かった。
(ウィスパーチャットの様な物です)
【昨日ぶりだな、聞こえているか?】
わざわざ目の前にいるのにこんな会話方法をとるとは訳ありか?
【ああ、鎧はありがたく使わせて貰っている、それより目の前にいるのにわざわざ何故こんな会話方法をしなければいけないのだ?】
レッド・ドラゴンはクィーンを見ながらこちらに声をかけてくる。
【目の前にいる、フェアリー・クィーンの事でそちらの耳に入れておきたいことある。 貴公との会話の後、フェアリー・クィーンと対話しようと思ったのだが……よほど精神的なショックを受けたのか、生きるしかばねのような状態になっていた】
──む。
【我らの薬草知識と治療によって精神をある程度回復できたのだが……クィーンの精神は割れる寸前の風船、そう思ってもらいたい】
それはつまり。
【自分が変な衝撃を与えてしまうと、本当に壊れる、と?】
レッド・ドラゴンは僅かに頷く。
【なので、注意を払ってもらいたいのだ、貴公も壊したいほど怨んでいるかは判らぬが、それでも本当に壊したいとまでは思っておらぬだろう?】
精神崩壊……まあ、それぐらいダメージを受けたのであれば十分か。 後は王としての自覚をもって貰うことで今は手打ちに、後々清算させるしかないか……。
「アース様には本当に申し訳なく……よって、アース様の要求であれば、できる限り飲みます」
殆どクィーンの言葉を聞いていなかったが、まあ、反省はしているようだ、さて……。
「では1つ目、グリーン・ドラゴンに何を言われたのかを嘘偽り無くここで自分とレッド・ドラゴンの王に教えて頂きたいのですが」
クィーンは頷いた後……。
「はい、あの時はアース様を指名手配にせよ、それを断るのならば妖精族の町と、人族の町にグリーン・ドラゴン族が攻め入るぞと……過去の侵略をした妖精族と、惰弱な人族など焼き払っても他には怨まれんぞと……」
レッド・ドラゴンはため息をついた。
「全くあの馬鹿は。 何時まで過去の争いにしがみついていたのだ……妖精族と過去に争いがあったのは事実だが、そんな事を何時までも言い続けることのほうがよっぽど悪党であると判らぬのか。 過ちを繰り返さないように忘れてはいけないが、それを盾に交渉をするのは外道のすることだ。 しかも人族のほうにまで手を伸ばそうとしたのか……アース殿に屠られたのは当然のことだな」
そういう事情だったか。
「それならば、自分個人を指名手配したほうがよほど被害は少ないですね……その判断は間違っていない、怒鳴り込んだ事は詫びさせて頂きます」
変に追い詰めるほうが今は危険だ。 ある程度譲歩もやむなしだろう。 怒りはしたが、だからとてクィーンまで亡き者にするつもりは今となっては無い。
「他にはございますか?」
幾分、落ち着きを取り戻した感じがするクィーン。
「ならば、この指輪の能力をいくつか封印して貰いたいのですが」
本当ならば抜き取って欲しいところだが、それを今やるとまたクィーンの精神がおかしくなるかも知れない。 国家のトップを壊すより、借りを作っておくほうが長い目でみればプラスだろう。 正直今すぐ抜き取ってもらいたいと言いたいが……。
「1、クィーンのテレポート地点として使える能力。 2、この国の通行許可証として使える能力 3、こちらの位置をクィーンが知ることが出来る能力、これらを封印して欲しいのですが宜しいでしょうか?」
クィーンは泣きそうな顔になる。
「やはり、私の事を本当にお嫌いになりましたか……?」
そうだ、とここで言うことは簡単だが、それを言って精神を砕く行動は今の状況からは下策だ。
「そうではありません。 そろそろいい加減、今回の事で王としての自覚を深く持てと言う事です。 ほいほい王が外に遊びにでたり、必要以上に個人に対して優遇をするのは不味いでしょう」
ピカーシャに乗れたのは最高だったが、これだって本来なら逸脱している。 散々利用している自分が言える事ではないのだが、今はそのことを脇においておく。
「まして、この指輪を見せることだけで、一国の王に軽々と謁見が叶うのは力を持たせすぎていました。 それを放置すればまた新たな火種のなりかねないのです。 故に封印が必要だ、と言うことになります」
正直に言って、ここまでの大事になるとはこちらの見積もりも甘かったのは認めざるを得ない。 だが、その失敗を再び繰り返さなければい良いのだ。
「分かりました……では、指輪をこちらに……」
自分の左手を優しく握り、クィーンがなにやら呟いている。
「完了しました、これでアース様の希望された能力は封印されました。 私も、相当に浮かれすぎていたのですね……今まで多々迷惑をおかけした事、真に申し訳ありません」
一抹の寂しさもあるが、この距離を保つことは上手くやっていく故に必須な距離だ。 今までがあまりに近づきすぎていたのだろう、これは自分にも非がある。
「お互いしばらく距離を置いて、お互いが落ち着いたほうが良いでしょう、こちらも反省すべき点が多いですので……」
この自分の返事に、クィーンも「はい……」と一言だけ呟く。
「では、こちらからこたびのことについての報酬とお詫びをお出しします。 60万グローの現金、Aランクの通行許可証、指名手配の解除、アミュレット・オブ・フェアリーズ、以上をお出しします」
そうして渡される品々。 アミュレット・オブ・フェアリーズとやらを見てみるが、説明には[妖精の加護が込められたアミュレット]としか書いていない。 何らかの効果はあるのだろうが……現時点で謎か? そういえばまだ聞いてない事があった。
「申し訳ありません、その自分がされた指名手配は、どれぐらいの範囲で広めていましたか?」
クィーンは目を伏せながら……
「せめてもの抵抗で、範囲はこの城下町限定、妖精族以外見せていはいけないと限定しておりました。 なので、他の種族の方は貴方が指名手配されていることは知らなかったはずです」
せめてもの抵抗、か。 お陰でファストやネクシアに帰るのには問題がなさそうだ。
「了解しました、その抵抗に感謝致します」
後はいくつかの確認があったがそれは小さい事でしかない故に割愛する。 いよいよ、この妖精国ともお別れの時間が迫ってきていた。
後数話はさんで、妖精国ストーリーは一旦おしまいです。
16時 アースの口調が下書き時の乱暴口調だったのを修正。
スキル
風塵狩弓Lv23 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv58 小盾Lv9
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv41 義賊Lv28 鞭術Lv38
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv39 鍛冶Lv40 薬剤Lv43 上級料理Lv13
ExP 4
所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精の祝福を受けた者
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人
状態異常 〈虚弱〉〈移動速度60%ダウン〉〈パッシブスキル効果半減〉

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。