VSドラゴン、前半
「いきなり全力で戦ってはドラゴン族としての沽券にかかわる、先手は譲ってやろう」
実際本来の姿に戻ったグリーンドラゴンは、身長の高さだけでも数メートルの高さをもち圧倒的な体躯をしている。 緑色に輝く鱗も相当に堅そうだ、が、それがどうした……勝てないまでもこちらの意地を見せねば。
「ならば、試させてもらおうか……〈アローツイスター〉!」
〈アローツイスター〉で放たれた矢は一直線にドラゴンに飛んでいき、『カキィン』と音を立ててはじかれた。
「ふん、所詮そんなものか。 その安定した状態で矢を放っても通じない以上、お主に勝ち目は全くないわ」
そう宣言したグリーン・ドラゴンは突然猛スピードでこちら側に飛び掛りつつ、左の前足でこちらをなぎ払おうとしてきた。
「ぐあ!?」
とっさに俺は後ろに飛びのく事で、ドラゴンの前足による攻撃をなんとか回避したのだが、その強大な前足が振るわれる事によって発生した風圧によって、軽々と俺の体は吹き飛ばされる。 満足な受身を取ることもできず、地面にたたきつけられてHPが1割ほど吹っ飛ぶ。
「ふん、直撃だけは回避しおったか、歳を取ると動きが鈍くなるのう」
くそったれ、あの速さで全盛期じゃないということを匂わせて来やがった。 こっちの心を折ろうってことか。 適当に数発矢を放つが全てがことごとく跳ね返される。
「ちっ、さすがドラゴン、生半可な攻撃じゃ傷すらつかんか!」
機動力と防御力を伴った戦車が突っ込んでくる様なものだ。 一発でも直撃したら、こっちはつぶされてペシャンコだ。 それに対して向こうはぜんぜんダメージを受けていない。 まともにやったら絶対こちら側に勝ち目はない。
「せいぜい無様なダンスを踊れ。 楽には殺さんぞ」
またも低空飛行で襲い掛かってくるドラゴン。 何とかよけることを最優先した無様な横っ飛びでぎりぎり直撃だけは回避するが、またも風圧によって吹き飛ばされる。 その上今回は錐もみ状態にされ、どちらが上か下か方向感覚を身体能力強化があっても狂わされてしまう、当然受身なんか取ることもできない。
「がはっ……」
幸い頭からは落ちずにすんだ。 しかしそれは単なる幸運、こんな幸運は長続きしないのは言うまでもない、このままでは相手に1のダメージすら与えることができずに敗北する……。
「まるでボールじゃな、うめき声を上げる分、ふき飛ばしがいがあるがの」
グリーン・ドラゴンは余裕をこれ以上ないほどに持っている様子だ、それもそうか、まずダメージは受けない、軽くつつくだけで吹っ飛ぶ。 人間が小さいアリを相手にしているようなものだ、踏み潰せればそこでおしまい。 体躯からくる絶対量は早々覆す方法はない。
(毒も無駄だな)
一瞬窒息草から作れる猛毒を使おうと思ったが、その考えは却下する。 むしろ風をあおってこっちに毒ごと風をぶつけられたら自爆するだけだ。 100歩譲って倒される結末ならまだしも、自爆は悔いが残りすぎる。
──つまり、手持ちで瞬間的に大火力を出せる強化オイルを使うしかないのだが、体にぶつけてもあの鱗を貫けるとは思えない。 結局本当のぎりぎりまで粘るしかないのか……悪手に悪手が重なるなら、悪手を極端に突き抜けさせるしかない。
「ならば、〈ツインファングアロー〉!」
貫けないのなら叩くのみ。 重僕の矢に切り替えて、グリーン・ドラゴンの顔面に向けて矢を放つが……『ゴン、ゴイン』と鈍い音を立てただけであっさりと跳ね返される。 コレもダメなのか……まずいな、コレでほぼ打てる手段が消えたぞ。
「ふん、貫けないなら打撃か。 その切り替えのよさだけは認めてやるが、その程度よな。 龍の鱗を舐めるでないわ!」
そういうが早いか、三度突進してくる。 まずい、今回の突進速度はかなり早い! あの巨躯を避け切れない! 直撃をもらった時点で間違いなく俺は終わる!
「〈シールドパリィ〉!」
スモールメタルシールドを前に出し、相手の攻撃を短時間だが強力に弾いてくれるアーツ、〈シールドパリィ〉を発動する。 コレができる範囲での精一杯の抵抗である。 が、それをあざ笑うようにグリーン・ドラゴンの突進によって思いっきり空中に吹き飛ばされ……
「~~~~!!!!」
声がでない。 思いっきり地面に叩きつけられた。 ぐらぐらする世界で必死にHPの残りを確認するとHPの赤い色がほぼ見えなかった。
「ほう、ぎりぎりで踏み留まったか。 盾の最後の意地ということにしておこう。」
グリーン・ドラゴンの声で盾を見てみると、砕け散り、光となって消えてゆくスモールメタルシールド。 ここに、姿を変えて長い間、共に戦ってくれた相棒の一人は完全に死んだのだ。
──ならば立たないと。 ここで立ち上がらないと。 まだ負けていない。 終わっていない。
「まだ立ち上がるか。 盾は砕け、体もぼろぼろになって無様な姿を晒しながら、なぜ立ち上がる。 そのまま寝ていれば、楽にトドメをさしてやるというのに」
嘲笑を含ませつつ話しかけてくるグリーン・ドラゴン、だが。
「──無様でいい」
例え負け惜しみと取られても。
「なに?」
グリーン・ドラゴンの目がこちらをにらんでくる。 レア・ポーションを自分の体に振り掛けつつ話を続ける。
「──無様でいい。
──情けなくていい。
──格好の良さなんか最初から求めちゃあいない」
ぐらつく体を必死で支えつつ、それでもグリーン・ドラゴンを睨み返す。
「それでも……それでも最後の最後まで立ち上がる、それが人間だ!」
ゲームでも現実でも、最後まで諦めてしまってはダメなんだ。 それだけは間違いなく共通している。 諦めるということは、その後わずかに開くかもしれない逆転の可能性を捨てるということなのだから。 諦めなかったおかげで逆転したなんて事実は、実際よく現実でも転がっている話だ。
「よく吠えた、人族! ならばせめてもの手向けに我がブレスによって逝く資格をくれてやるわ!」
待っていた、それを待っていた。 戦車だってそうだ。 装甲を外から打ち抜くにはそれなりの火力がいる。 その火力がないのなら、内側に何かしらの攻撃を届かせるしかないのだ。 懐から強化オイルを取り出し、〈ウィンドブースター〉も発動して、グリーン・ドラゴンとの距離をつめる。
「ふん、華々しく最後を飾ろうということか、よかろう、至近距離で我がブレスを食らうがよいわ!」
グリーン・ドラゴンがブレスのために口をあけたその瞬間、反射的に4本の強化オイルを全力投球でグリーン・ドラゴンの口の中にブン投げていた。 その結果、グリーン・ドラゴンの口の中で、ブレスのエネルギーと強化オイルの火力が混ざり合い、大爆発を引き起こした。
チュウドオオオオオオオオオオオンン!!
耳がキーンとなり、聴覚を一時的に失った。 また近距離にいたためダメージを受けており、HPはまた残り10%ほどまで落ちていた。 あそこでレア・ポーションを体に振りかけておいたおかげで耐えれたようだ。 そして肝心のグリーン・ドラゴンはどうなった!?
「----!!-----!?」
聴覚が一時的に死んでいるので何を言っているのかは分からないが、かなりもだえ苦しんでいる様子なのは、口を押さえてばたばたと暴れている行動で嫌でも分かる。 一矢を報いるにはここが唯一の機会!
「〈7つの落星〉!」
耳が聞こえないので言えているかどうかが分からないが、宣言をしてから矢を放った瞬間、エフェクトが発生しながらグリーン・ドラゴンへと向かっていくので、発動には成功していると分かった。 今のグリーン・ドラゴンは爆発によるダメージで暴れているだけであり、矢を当てることは実にたやすい。
〈7つの落星〉発動中による矢は突き刺さらなくても、命中さえさせれば、そこに矢が残り続ける。 3本、4本と矢を当てていく中で、ようやくグリーン・ドラゴンも口の痛みが治まりつつあるのか、暴れるのを止めだした、5本目の矢も命中。
「何だこの矢は……我が鱗に刺さるだと!?」
何かを言っているのだろうが、まだ耳が聞こえない。 6本目も命中、後1本だ。 だがそこでグリーン・ドラゴンも異常に気がつき、空に浮かび上がって回避する体勢を取り出した。 だが、迷っている暇はない! 全力をこめて最後の7本目の矢をを放つ。
「グッ!?」
グリーン・ドラゴンも素早く反応したのだが……7本目は辛うじてだが翼を貫いた。 その瞬間、7本の突き刺さった矢から光が伸び、グリーン・ドラゴンを串刺しにして動きを封じる。 当然動けなくなったグリーン・ドラゴンは地面に墜落する。 その墜落して動けない状態のグリーン・ドラゴンに、空から星が降ってくる、その数は合計7つ。
「この技は妖精の! なぜ人族であるきさまがコレを!?」
ようやく機能を取り戻しつつある耳がグリーンドラゴンの声を拾う。 だが自分は急いで距離をとり、耳を手でふさぐ。 グリーン・ドラゴンは落ちてきた星の直撃を受けていった……。
これで、完全に盾として今まで頑張り続けたライトメタルが散りました。
そして、アースに言わせたかった台詞の1つをようやく書くことが出来ました。
スキル
風塵狩弓Lv20 ↑2UP 蹴撃Lv22 遠視Lv53 製作の指先Lv58 小盾Lv9 ↑3UP
隠蔽Lv41 身体能力強化Lv39 ↑3UP 義賊Lv28 鞭術Lv37
妖精言語Lv99(強制習得)(控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
木工Lv39 鍛冶Lv40 薬剤Lv43 上級料理Lv13
ExP 4
所持称号 妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 指名手配(妖精国)
二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

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